衆院本会議で3月9日、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(GX推進法案)について趣旨説明・質疑が行われ、立憲民主・無所属を代表して山岡達丸議員が質疑に立ちました。
本法案は、世界規模でカーボン・ニュートラルの実現に向けた大規模な投資競争が激化する中、わが国でも2050年カーボンニュートラル等の国際公約と産業競争力強化を通じた経済成長を同時に達成するグリーン・トランスフォーメーション(GX)を実現するため、官民で連携し、今後10年間で150兆円を超えるGX投資を実現する必要があり、今後10年間で20兆円規模の大胆な先行投資支援を行い、炭素排出に値付けを行う成長志向型カーボンプライシングを将来導入する方針をあらかじめ示すことにより、事業者の先行投資を促進する仕組みを措置する必要があるとして取りまとめた「GX実現に向けた基本方針」に基づき所要の措置を講じるためのものです。
山岡議員は質問の冒頭、経済安全保障担当大臣としてGX推進法案にもかかわる高市大臣が、「その政策の遂行の信用にもかかわる問題が生じている」として、「放送法における政治公平」についてただしました。
山岡議員は、「『人』を大切にするGXの推進」という観点から質問。政府の「GX実行会議」で構成委員から再三にわたり「失業なき労働移動」を念頭に「公正な移行」という考え方を具体的に盛り込むよう意見が述べられ基本方針に盛り込まれたものの、今回、具体化された法律案には「公正な移行」という言葉が含まれまていないと指摘。岸田政権が「働く者」「労働者」の立場を軽視していることの表れではないかと述べ、また「失業なき労働移動」について、政府が真剣に向き合うことは極めて重要だとして西村経済産業大臣の見解をただしました。
西村大臣は、「方針に沿い、多排出産業などでのGXに資する革新的技術開発などの投資を促進し、雇用を確保の観点をしっかり踏まえるとともに、リスキリング等の人材育成の取り組みとグリーン分野を含む成長分野への円滑な労働移動を同時に進めます」「公正な移行や雇用の確保の重要性を重く受け止めた規定」「本法案成立後に法案に基づき策定するGX推進戦略についても、この考え方を反映したものとする」と述べましたものの、表面的な説明にとどまりました。
山岡議員は、「GXの推進と地方の期待」という観点から質問。国内大手8社が出資する次世代半導体の開発・生産を目指すラピダス社が、最初の工場を建設する場所に北海道千歳市を選んだことを発表したことを取り上げ、ラピダス社の小池社長が「水、電力等のインフラに加えて、自然環境との調和においても、半導体の生産に最適だ」と選定理由を説明した語りました。
世界的なカーボン・ニュートラルの潮流の中で、こうした理由が立地の選定につながったことは、地方都市にとって非常に勇気づけられるものであると述べました。また、地方都市には、豊かな自然のみならず、近隣大学や専門学校などもあり多くの人材もいると述べ、「地元の機関との連携が非常に重要であり、政府としても大きなかかわりをもって推進すべきと」と指摘。大臣の見解をただしました。
西村大臣は、北海道の事例は、「地域の特色を生かして脱炭素化により工場立地を呼び込んだ事例であり、他の地域の良いモデルケースになる」「このような事例を日本各地で増やし、全国において経済・社会・産業の前向きな大変革を実現したい」と述べました。
その他、山岡議員は(1)脱炭素への取り組みと目下の産業競争力(2)脱炭素におけるコストの負担のあり方(3)脱炭素における国際的ルールづくり(4)中小企業への支援(5)GXへの投資規模について(6)GX推進機構――といった観点から質問しました。