衆院憲法審査会が3月23日に開かれ、党憲法調査会長の中川正春議員が国民投票法改正、緊急事態条項について発言しました。また、階猛議員、篠原孝議員は他党からの質問に答えました。
国民投票法改正
国民投票に関して中川議員は、国民1人ひとりが憲法の持つ価値や政策について、投票によって直接判断を下す重要な機会であるため、「特別の配慮が必要だ」と指摘しました。そして法改正として検討すべき4つの論点を示しました。
第1に、安全対策・個人情報の十分な保護を前提としたインターネット投票の解禁、障がい者や海外居住者への配慮など、国民投票への参加を広く促す投票環境の整備が必要だと説きました。
第2に、国民が憲法改正案に賛成か反対かの意思表示を成し得るに足る十分な判断材料を提供する必要性を訴えました。国民投票広報協議会が(1)憲法改正案に関する説明会を開催すること、(2)インターネット等を利用する方法によって改正案に関する広報を行うこと――以上を現行法に盛り込むことを提案しました。
第3に、憲法改正を扱う放送分野に関して、番組の公正性、コマーシャルの公平性という2つの視点を重視するべきと訴えました。最近明らかになった放送法4条の「政治的公平」に関する解釈が2015年、高市総務大臣期に変更された問題に触れ、「今般指摘されているような政府による番組介入は、あってはならない」と力を込めました。
第4に、インターネット規制に関して、番組やコンテンツの公正性、広告の公平性の確保について議論を深めるべきと訴えました。特にフェイクニュースなど、世論を偏った方向に向かわせる行為に対して、民間のファクトチェック団体と国民投票広報協議会の連携など、何らかの措置の必要性を説きました。
また、立憲民主党が提案している改正案で、意見表明CMについて政党のみを禁止する提案に対して、国民に対する情報提供の観点から問題ではないかと他党から指摘を受けました。階議員は、「政党は国民投票広報協議会を通じて、国民に対する情報提供の機会が公正かつ公平に与えられているため、そうした問題はない」と答弁しました。さらに立憲民主党が国民投票広報協議会が説明会を開催したり、意見表明を可能とするウエブサイトを設けるという改正案を提案していると表明しました。
緊急事態条項
憲法審査会で一部の党派が「議員任期の延長」に集中して議論していることに対して中川議員は、緊急事態をめぐる「問題の本質はそこにあるとは思っていない」と指摘しました。むしろ議論すべきは、「緊急事態におけるもう一方の重要な観点、権力を集中することで、権力の悪用と暴走を許す可能性がないかという視点から再点検することの方が重要だ」と訴えました。
一部の党が主張している改憲の目的が「戦争や国内騒乱、大規模な自然災害、パンデミックなどに国が直面した時、一定の範囲で権力を集中させ、危機対応を即応的に行うことを憲法に明記すること」だとすれば、「改正は必要ない」と明言しました。その理由に関して「日本の法体系では、自衛隊法、国民保護法、災害対策基本法、新型インフル特措法など一連の法制で体系化し、緊急政令などの権限も付与しながら、後に国会の承認をとって民主的な権力の統制もしていく体制がすでに整えられている」からだと説明しました。
緊急事態への対応をめぐって、参議院の緊急集会の活用を提案している立憲民主党に対して、本予算の処理は緊急集会にはなじまないとする指摘を他党から受けました。これに対して篠原孝議員は、「憲法制定者が衆議院が欠けることを想定して参議院の緊急集会という手立てを用意してくれたのだから、まずは緊急事態には衆議院の解散の時だけに限らず緊急集会を活用することを考えるべき」「憲法の精神に大きく反しない限り、まずは緊急集会に委ねてもよい」というのが真意だと説明しました。