脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案への対応について(コメント)


立憲民主党 政務調査会長
  長妻 昭




 立憲民主党は、政府提出の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(本法案)について、以下の観点から反対の方針を決定いたしました。

 まず、立憲民主党は、日本でも2050年カーボンニュートラルの実現と産業競争力強化・経済成長とを図るため、GXへの投資は極めて重要であると考えます。そして昨年取りまとめた政策「立憲民主党エネルギー転換戦略」でも、2030年までに、財政支出50兆円、総額200兆円に及ぶ官民投資を行い、雇用の公正な移行を進めつつ、産業の変革を強力に支援し、日本経済の持続可能な発展の実現を提案しています。

 昨年12月に政府が決定した「GX実現に向けた基本方針」(基本方針)では、今後10年間で20兆円規模の政府支援を含めた150兆円を超えるGX投資を想定しており、世界が取り組む脱炭素化への政府主導の投資促進策に、ようやく我が国も一歩踏み出すものとして、一定の評価をします。ただ、その一方で、取り組みの中に、「原子力の活用」として「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」と示されている点について、立憲民主党の基本政策である「原子力発電所の新設・増設は行わず」とは相容れません。

 本法案は、この基本方針に基づき、GX推進戦略の策定、GX経済移行債の発行、成長志向型カーボンプライシングの導入、等を規定しています。政労使が脱炭素化に加速度的に取り組むための公的資金面も含めた支援の主旨は十分に理解できます。他方で、基本方針で示された次世代革新炉の「今後の道行き」が経済産業省から公表されており、「2030年代に革新軽水炉の建設・運転」との工程表が示され、高温ガス炉・高速炉の実証炉の開発・建設・運転等に今後10年間で1兆円規模のGX投資が想定されています。また西村経済産業大臣はGX経済移行債の対象について、「排出削減と経済成長、競争力強化の両方を満たしていくものについては支援対象になり得るということで、原子力の分野を排除するものではない」と答弁しています。これらを踏まえれば、GX経済移行債により調達される政府資金が原子力発電所の新増設に関わる投資に向かうことは明らかであり、立憲民主党の基本政策である「原子力発電所の新設・増設は行わず」に抵触します。その他にも、GX推進戦略やGX経済移行債への国会関与のあり方など、さまざまな課題があることから、この法案には賛成はできないとの結論に至りました。

 脱炭素社会への移行は、日本の産業と社会の大きな構造変革を伴います。立憲民主党は、この機を大きなチャンスととらえ、民間部門の挑戦を、現政権以上に政府がしっかりと資金面を含めて強力に支援することを目指します。省エネと再生可能エネルギーの加速度的な推進などにより、将来的には化石燃料にも原子力発電にも依存しないエネルギー供給体制を実現し、安心の自然エネルギー社会を創ることで、脱炭素社会実現への取り組みを目指します。

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