衆院内閣委で6月9日、LGBTなどの人たちへの「理解増進」をめぐり、立憲民主党などが提出した法案(以下、立憲案)、自民・公明案、国民・維新案の計3案、ならびに同日朝に自民・公明・国民・維新が合意した「修正案」が審議されました。

 立憲案の提出者を代表し西村智奈美衆院議員が趣旨説明と答弁を行い、山岸一生衆院議員も答弁を行いました。また計3案に対し吉田はるみ衆院議員が質疑を行い、4党の「修正案」に対しては西村衆院議員が質疑を行いました。

 東京オリパラ大会を控えた2021年当時、立憲民主党は会派で提出していた「差別解消法案」と比較して課題は残るものの、自民も含めた超党派の議員連盟で合意された法案(議連合意案)が成立すれば、性的指向・性自認について定める初めての法律となること等の理由から、賛成することを決定していました。しかしその後、自民党内で「差別は許されない」との法案の文言に反発の声が上がるという「差別的対応」により、「議連合意案」の国会提出は実現しませんでした。

 今国会で提出した立憲案は、その「議連合意案」と同じ内容の法案です。趣旨説明を行った西村衆院議員は、「性的指向および性自認の多様性につきまして、国民の理解が進んでいるとは必ずしも言えず、それがいじめや差別などの原因となっている」として法案の意義を強調しました。

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 計3案への質疑に立った吉田衆院議員は、自公案が「性自認」ではなく「性同一性」という文言にしていることを疑問視。職場において、「性自認」を尊重する取り組みをしている事業者もあり、文言を変えることで「混乱が生じるのではないか」と質問。また、G7広島サミットの首脳宣言でも「性自認」との訳語を用いているとも指摘しました。答弁に立った山岸衆院議員は、地方自治体の条例や当事者の声を踏まえれば「性自認を用いるのが適切」と応じました。

 計3案への質疑後、自民・公明・国民・維新が合意した「修正案」が提出されたため、西村衆院議員が質疑を行い冒頭、「修正案が出てきたのが今朝」だとして「本来であれば、しっかり中身を議論して、その上で採決にかけるべきだ」と苦言を呈しました。

 その上で、4党の修正案が、「性自認」ではなく、「ジェンダーアイデンティティ」という文言を用いていることについて、最高裁判決や行政文書でも「性自認」を使用しており、「用語の一貫性が必要だ」と指摘しました。

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 質疑後の反対討論に立った中谷一馬衆院議員は、立憲案は「自民党を含む超党派議連で、全党が合意した法案」だと強調。さらに、4党の修正案は、「当事者の意見を聞いた形跡もなく、当事者に寄り添うという本来の趣旨をないがしろにする法案に変え、まさしく趣旨を後退させた法案そのものだ」と断じました。その上で、「多様性が人権を守り、イノベーションを創出する」と訴え、立憲民主党は「誰もが尊重される社会の早期実現を目指して取り組む」との決意を述べ、反対討論を終えました。