政府の「こども未来戦略方針」発表にあたって(談話)
立憲民主党政務調査会長 長妻昭
本日、政府は少子化対策として「こども未来戦略方針」を発表しました。
今回政府が示した対策はあまりに遅すぎて、不十分です。具体的には、児童手当の所得制限の撤廃、支給期間の延長は、立憲民主党がかねてから訴えてきたものです。しかし、自民党は、民主党政権時に所得制限のない子ども手当をバラマキだと批判してきました。さらに昨年の秋には、児童手当の特例給付の一部を廃止し、約61万人の子どもたちを支給対象から外し、子ども子育て支援策を後退させてきました。また、児童手当の拡充が不十分なまま扶養控除を廃止するのであれば、手取り額が減る世帯がうまれ、「子育て罰の厳罰化」につながります。
立憲民主党は、公立小中学校の給食の無償化を進めるべきと訴えていますが、政府案では検討するにとどまり、まったくやる気がみえません。また、高校授業料無償化の所得制限撤廃、国公立大学の授業料無償化等、教育の無償化は進めるべきですが、政府案では「授業料後払い制度の創設」、年収約600万円までの多子世帯や理工農系の学生への授業料減免等の拡大にとどまり、対象者が少なく、不十分で、安心して学べる環境には到底つながりません。
また、政府の対策には、上がらない賃金や不安定な雇用など、未婚率増加の背景にある構造的な問題への解決策が決定的に欠けています。30代前半の男性非正規雇用者の有配偶率は約2割、正規雇用者の有配偶率は約5割と大きな差があります。50歳時点の未婚率である「生涯未婚率」は、男性非正規社員で約6割に達しています。
仕事や生活の不安定さ、将来が見通せないことが、結婚や子どもを望む人が希望を叶えられない社会になっている原因の一つであるにもかかわらず、大胆で具体的な対策はないままです。
さらに、予算や財源にも問題があります。3年間の集中取り組み期間とする「加速化プラン」の予算として、当初は年額3兆円程度を確保するとされていましたが、岸田総理の鶴の一声で6月1日の素案発表の直前に、5000億円が増額されたと言われています。本来であれば、大切な予算の使い道は何を優先させるのか十分に中身を精査し、積み上げていくべきです。選挙対策の思い付きであれば、到底許されるものではありません。
そして、この3兆5000億円も、財源確保策の結論は年末に持ち越されました。財源の一つとされている「支援金制度」の詳細は不明ですが、医療保険料に定額を上乗せする案が浮上しています。保険の本来の機能が失われかねないばかりか、現役世代の手取り額が減り、企業側の事業主負担が重くなるため賃上げ意欲がそがれ、正規雇用をいっそう控えることにもつながる可能性があります。社会保険の仕組みを使えば現役世代の負担が重くなり、子ども・子育て支援策や少子化対策と逆行してしまいます。さらに、つなぎ国債として「こども特例公債」を発行するとしていますが、償還財源が確保できなれば、単なる赤字国債となりかねず、その場合は将来世代に負担を先送りすることにつながります。安定的な財源が確保できなければ、実際の支援がいつから始まるのか、恩恵はいつから生じるのか、子育て世帯や若者の不安が募るばかりです。
立憲民主党は、子ども・子育て政策の財源を、現役世代を直撃する社会保険料の引き上げに求めることはしません。私たちは、使途が不明瞭な膨大な基金、委託業者による中抜き、腐敗の温床となる天下りなどを徹底的に改革した上で、税制の所得再分配機能が先進7カ国で最も低い現状に鑑み、所得税の累進性強化、「1億円の壁」を解消する金融所得課税改革など、格差を是正する税制改革を実行することで財源を捻出すべきであると考えています。
昨年の出生数は約77万人と、統計開始から初めて80万人を割り込み、合計特殊出生率も過去最低の1.26と発表される等、少子化は政府の想定を上回るペースで進んでいます。これは、政府の対策があまりに遅すぎて、不十分だった結果ではないでしょうか。まさに、「失われた10年」と言わざるを得ません。
そのうえ、岸田総理は、「骨太の方針」までに、財源も含めて検討を深め、子ども予算倍増に向けた大枠を示すと繰り返し答弁してきましたが、具体的な財源確保策の決定は年末まで先送りされました。これでは、「骨太」ではなく「骨抜き」と断じざるを得ません。
立憲民主党は、それぞれの多様な生き方や人権を尊重するとともに、結婚したい人や子どもをもちたい人の希望を叶える社会をつくるべきだと考えています。そのための具体的な提案を、もっと良い「子ども・子育てビジョン」にまとめました。私たちは、子ども子育て予算を増やし、結婚・出産・子育て・育ちや学びを阻む壁を取り除きます。
20230613 「こども未来戦略方針」 談話.pdf