立憲民主党は6月16日、社会民主党、国民民主党と共同で「公務員制度改革関連5法案」(国家公務員制度改革3法案、地方公務員制度改革2法案)を衆院に提出しました。
「公務員制度改革関連5法案」は、国家公務員制度改革基本法に基づき、自律的労使関係制度を導入することにより、労使が職員の勤務条件について真摯に向き合い、当事者意識を高め、自律的に勤務条件を決定し得る仕組みに変革するものです。過去、民主党政権時代の内閣提出法案を含め、国家公務員関係は5回、地方公務員関係は3回提出してきました。今回、公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)からの要請も踏まえ、立憲民主党公務員制度改革PT(座長:大島敦衆議院銀議員、事務局長:岸真紀子参議院議員)において検討作業を進め、社会民主党、国民民主党の賛同を得て共同提出に至りました。
自律的労使関係制度を導入するための国家公務員制度改革3法案(「国家公務員法等の一部を改正する法律案」、「国家公務員の労働関係に関する法律案」、「公務員庁設置法案」)の提出会派・提出者は、立憲民主党・無所属が大島敦議員(筆頭提出者)、中川正春議員、阿部知子議員、階猛議員、逢坂誠二議員、後藤祐一議員、吉川元議員、青柳陽一郎議員、落合貴之議員、源馬謙太郎議員、森田俊和議員、新垣邦男議員、荒井優議員、藤岡隆雄議員、国民民主党・無所属クラブが古川元久議員、浅野哲議員、西岡秀子議員です。
自律的労使関係制度を導入するための地方公務員制度改革2法案(「地方公務員法等の一部を改正する法律案」、「地方公務員の労働関係に関する法律案」)の提出会派・提出者は、立憲民主党・無所属が大島敦議員(筆頭提出者)、原口一博議員、福田昭夫議員、階猛議員、逢坂誠二議員、奥野総一郎議員、後藤祐一議員、吉川元議員、岡本あき子議員、神谷裕議員、道下大樹議員、新垣邦男議員、堤かなめ議員、藤岡隆雄議員、国民民主党・無所属クラブが古川元久議員、浅野哲議員、西岡秀子議員です。
法案のポイントは以下の通りです。
1.国家公務員法等の一部を改正する法律案
自律的労使関係制度の措置に伴う人事院勧告制度の廃止、人事行政の公正の確保を図るための人事公正委員会の設置等の所要の措置を講ずる。
※刑事施設職員の団結権の制限を撤廃し、他の職員と同様の扱いとする(協約締結権も付与)。【今回変更】
2.国家公務員の労働関係に関する法律案
国家公務員に協約締結権を付与し、これに伴い、団体交渉の対象事項、当事者及び手続、団体協約の効力、不当労働行為事件の審査、あっせん、調停及び仲裁等について定める。
3.公務員庁設置法案
国家公務員の任免、勤務条件等に関する制度並びに団体交渉及び団体協約に関する事務その他の国家公務員の人事行政に関する事務等を担う公務員庁を設置する。
4.地方公務員法等の一部を改正する法律案
自律的労使関係制度の措置に伴う勤務条件等に係る人事委員会勧告制度の廃止等の所要の措置を講ずる。
※消防職員については、団結権の制限を撤廃するとともに、他の職員と同様の扱いとする(協約締結権も付与)。【今回変更】
5.地方公務員の労働関係に関する法律案
地方公務員の自律的労使関係制度を措置するため、地方公務員に協約締結権を付与し、これに伴い、団体交渉の対象事項、当事者及び手続、団体協約の効力、不当労働行為事件の審査、あっせん、調停及び仲裁等について定める。
今回の法案では、関係団体(全消協、全農林)の意見、ILO創設100周年の国会決議、「日本が批准する第87号条約第9条を遵守していないのではないか」などという国際労働機関(ILO)からの指摘等を踏まえ、刑事施設職員について、新たに団結権及び協約締結権を有する団体交渉権を措置するとともに、消防職員について、民主党政権時の閣法やこれまでの議員立法で措置していた団結権に加え、協約締結権を措置することにしています。
嫌がらせやパワハラを防ぎ適切かつ的確な業務を遂行するためには、刑務官の労働環境を改善することが必要です。また、消防でもハラスメント事例が相次いでいます。加えて、コロナ禍における救急出動件数や搬送人員、救急搬送困難事案の増加等の救急業務の実情を踏まえ、現場の状況と実情を熟知している労使の協議の具体的措置が不可欠であることが明らかとなりました。消防職員の団結権を回復させ、民主的で働きやすい職場づくりが進むことによって、様々な課題を解決し、国民・住民の命と暮らしを守る消防・救急業務の確立とその質の向上をはかることができます。韓国では2021年7月に消防公務員の労働基本権のうち団結権および団体交渉権が回復し、労働組合への加入が合法となっています。世界の主要先進国で消防職員に団結権を認めていないのは、もはや日本のみです。
法案提出後の会見で、筆頭提出者の大島敦議員は、「3党は『働くこと』という共通のワードで一致しており、3党で提出した意義は大きい」と述べました。そして「人事院勧告が廃止され、人事院と内閣人事局があわさった公務員庁という強力な使用者機関と労働組合が交渉して賃金や労働条件を決めることによって、共通認識を持ちながら仕事ができる」などと、「身を切る改革」とは次元の違う改革である意義を強調しました。
公務公共サービス労働組合協議会(公務労協)の森永栄事務局長はコメントを発表し、「議員立法『公務員制度改革関連5法案』が、立憲民主党、国民民主党、社会民主党の3党の共同により提出されたことに心より感謝申し上げるとともに、関係議員そして党職員のご尽力に敬意を表します。公務労協は、公務公共サービスに従事する労働組合としての社会的責任と役割を果たすため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という社会的な危機を契機として、質と量の拡充をはじめとする良質な公務公共サービスを実現し、国民の命と暮らしを守るためにも必要な公務員制度の改革を提起しているこの議員立法の早期成立に向け、3党とともに全力をあげていきます」と3党への感謝と法案成立への決意を表明しています。
日本における公務員の労働基本権は、1948年以来制約が続き、国際的に見ても異例な状況です。この間、ILO結社の自由委員会からは、日本政府に対してILO条約の遵守を求める勧告が繰り返されています。より質の高い公共サービスを実現するうえで、すべての働く者に保障されるべき権利としての公務員の労働基本権回復と自律的労使関係制度の確立による、民主的で透明な公務員制度改革を推進することは不可欠です。立憲民主党は、基本政策の「公務員の労働基本権を回復し、労働条件を交渉で決める仕組みを構築するとともに、内閣人事局を改革し公正な公務員人事を行います」の実現を図るとともに、時代の変化に対応して、国民のニーズに合致した、効率的で質の高い行政サービスを実現し、公務員がやりがいを持って存分に能力を発揮できる環境をつくるため、今後も取り組みを強化していきます。