「次の内閣」第35回閣議で6月15日、立憲民主党公文書管理プロジェクトチーム(PT座長:逢坂誠二、事務局長:奥野総一郎)が取りまとめた「国民共有の知的資源である公文書の管理に関する提言」が了承されました。
公文書管理PTは、公文書が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の資源であるものの、わが国の公文書の取り扱いに関する制度は米国等と比較して極めて脆弱なものとなっていることから、公文書に関する制度と運用の両面から、公文書の適切な管理のあり方(文書の作成・取得、管理、移管、所管、権限、運用等)について検討を行うため、2023年3月16日に設置され、10回にわたり、内閣府や国立公文書館、国立国会図書館、有識者からヒアリングを行い、議論を進めてきました。
2011年4月に施行された公文書管理法は、公文書について「国民共有の知的資源」であり「国民が主体的に利用し得るもの」と規定し、意思決定に至る過程などを「検証することができる」文書の作成を義務づけるなど、日本の公文書管理が大きく進展すると期待されました。しかし、森友学園をめぐる公文書の改ざん、加計学園の「総理のご意向」文書、桜を見る会の招待者名簿の廃棄、スーダン派遣PKOやイラク派遣自衛隊の日報をめぐる問題、毎月勤労統計不適切調査、国土交通省統計書き換え問題など、法施行後も公文書をめぐる多くの不祥事が頻発し、日本の民主主義の危機ともいえる事態となっています。今国会では、放送法の解釈を巡る総務省文書も明らかとなりましたが、行政文書ファイル管理簿に記載していませんでした。
行政等の諸活動を適切に記録した公文書を確実に管理することは民主主義必須の要件ですが、行政等の諸活動をどのように記録するかについての継続した考察が不十分である上に、現用文書に関する専門家が圧倒的に不足しています。また公文書の電子化が進んでいますが、目視では探せないことや長期保存に向かないこと等、電子化の負の側面に対する対策も十分とは言えず、大きな課題となっています。
こうした問題意識で日本の公文書が民主主義の根幹を確実に支える国民共有の知的資源となるよう今回の提言をまとめました。
「行政等の意思決定過程などを後に検証できる公文書作成のために」では、アメリカでは記録に重きを置いていることから、行政等の諸活動の記録のあり方の検証・改善を打ち出しました。また、いわゆる「組織共用」性によって公文書の範囲が狭まりかねないことから、「組織的に用いる」との規定にとらわれず後世に検証可能な公文書とするという観点から公文書の定義、あり方を見直すことや、大臣日程など「保存期間1年未満の公文書」が行政側に都合良く多用され国民の目に触れず後の検証を難しくしていることから、保存期間1年未満文書のあり方についての検討を求めています。これらは、1回やればいいわけでなく不断の検討と継続した見直しとしています。さらに、改竄や違法な廃棄を防止するため、公文書管理法自体にも重大な犯罪として罰則規定を設けるようにしています。
「公務員が適切な公文書管理行うための体制整備のために」では、日本は移管までの現用文書の扱いが十分でないため、公文書の作成・取得から廃棄・移管までを専門的な見地から監督、指導できる、政府から独立性の強い組織を設置するとともに、現用文書に関する専門家の育成と各府省への配置を提案しています。
公文書の電子化に当たっては、紙と違って目視で探せない、長期保存した例はないなど、電子化の負の側面も踏まえた公文書管理にしなければなりません。アメリカではマイクロフィルム化しています。そこで「適切な電子公文書の実現のために」では、法の目的や公文書管理の基本原則を十分に認識した上で、現用文書に関する専門家の知見も踏まえつつ公文書の電子化を行うこと、負の側面を十分に認識した上で電子化の取り組みを進めることを求めています。
逢坂座長は「公文書は行政等の公正な執行証明であり、確実な記録を残すことが行政等に携わる者の正当性を担保する手段にもなりうるものであり、公文書に対する認識の転換を含め、適切な公文書管理のためには粘り強い取り組みが必要だ。息の長い取り組みを継続していきたい」と強調しました。今後、岡田直樹公文書管理担当大臣に提言について要請することになっています。