参院予算委員会で5月22日、「政治とカネ」をテーマとする参院予算委員会の集中審議が行われ、立憲民主・社民の辻元清美、小沼巧両議員が質疑に立ちました。

■辻元清美議員

 辻元議員は、(1)定額減税分の給与明細記載(2)抜け穴を塞ぐ気がない自民党の政治資金規正法改正案と政策活動費の実態――等について岸田総理に質問しました。

(1)定額減税分の給与明細記載

 辻元議員は6月から始まる政府による定額減税について取り上げました。政府が、民間企業などに対して給与明細に所得税の減税額を明記するよう求めている点を「義務か?」と質問。岸田総理は「昨年末の税制改正大綱で決定した」「経済的な効果と経済政策との整合性を周知させるもの」などと述べました。

 辻元議員は「今回医療保険料に上乗せする子育て支援金についても、上乗せ分の給与明細への明記を義務付けるのか」を確認したのに対し、岸田総理は「医療保険と合わせて聴取する際に明細等が書かれることになると考える」と答弁。辻元議員は医療保険への上乗せ分も明記して国民に伝えるべきだと指摘し、「国民に減税をアピール、増税・負担増はステルス、隠すということがはっきりした」と主張しました。また、「たった一度の減税のために煩雑な事務作業システムの改修が必要になると悲鳴が上がっている」「国の減税をアピールのために社員も会社も振り回されている感が半端ない」「こうした何の価値も生み出さない事務負担が日本の民間の競争力を損なっていることに気づいていないのか」といった声がネット上などにあることを紹介しましたが、岸田総理は「経済の好循環を実感していただく、物価高騰に負けない所得を実感していただくといった観点が、消費や次の投資に向けて大変重要だ」などと答弁。辻元議員は「恩恵を知らしめて、わざわざ住民税を6月にゼロにして、6月に選挙(衆院選)の照準を当てて組み立てた選挙対策だとも言われている。下心がありありだ」と、問題視しました。

(2)自民党の政治資金規正法改正案と政策活動費の実態

 辻元議員は自民党の政治資金規正法改正案について「完全に抜け穴を防ぐというのではなく、抜け穴をちょっとだけ小さくするから、しっかり抜け穴を残しといてというのが自民党案だ」と指摘しました。領収書提出の必要性がない政策活動費に関して、自民党の一昨年分と昨年分を質問したのに対して、岸田総理は収支報告書で公開されている一昨年度分だけ14億1630万円であると答弁。辻元議員は「14億1630万円、領収書のいらないお金を自民党は使っているということ」と指摘しました。政治活動費を適正に使ったというのであれば領収書をすべて提出して証明すべきだと迫りました。岸田総理は「政党の内規に基づいてルールを定めている。使用について説明できるよう徹底するを党として確認しているところ」などと述べるに留まりました。

 安倍派幹部で裏金2728万円とされる萩生田議員、党から50億円もの政策活動費を受け取っていたとされる二階・元自民党幹事長、茂木方式という脱税の手法があったとされる茂木幹事長らをはじめ裏金議員全員が政治倫理審査会(政倫審)への出席を拒んでいることに関して、裏金議員全員を出させる弁明させるべきと迫ったが、岸田総理は「政倫審の出席は議員個人の判断というのが国会のルール」との旨を繰り返すだけでした。

 辻元議員は政治改革の議論においては自民党は反省し、実効性のある野党案に基づく協議に従うべきと指摘。そのうえで「立憲は政策活動費はやめた」として、斉藤国土交通大臣に「斉藤さんも与党。与党として公明党、政策活動費、領収書の要らないお金がなかったら、何か仕事に差し支えることがありますか」と質問。斉藤大臣は、「私自身、公明党の幹事長も務めましたが、政策活動費の支給を受けておりません。そして、活動に支障を感じたことはございません」と答弁しました。一方で岸田総理は、政策活動費について「一概に禁止するというのではなく、透明性を高めていくことが重要」と強調し、透明性ある政治改革に後ろ向きな姿勢を浮き彫りにしました。

240522_01.jpeg

■小沼巧議員

 小沼議員は、まず、政治資金規正法改正について、「自民党案が可決成立すれば問題事象が発生しないといった命題は正しいのか」と岸田総理に問いました。総理は、「諸外国の事例や他の制度との均衡など現実的な対応が用意できたと考えている。再発防止に向けて実効的な案」だとしました。「問題事象が発生しない」ことを明言しない岸田総理に小沼議員は「どうしても抜け穴を維持したいのではないかと感じる」と指摘しました。

 また、小沼議員は17日の参院政治倫理委員会(政倫審)での申し立てにおいて、32名中29名の自民党議員が審議拒否したことに言及。総理がこれを許す答弁を行っていることに対し、「身内での弁明は行うが、全国民を代表する議員が集う国会では説明をしないという態度を許すのはいかがなものか」と総理の姿勢を問題視しました。

 さらに、小沼議員は、自民党が企業団体献金について改正案を示していない理由として「鈴木議員が発言した『自民党の力を削ぎたいという政局的な話』だから抵抗しているのか」、「官房機密費を国政選挙に使用したのか」について岸田総理に質問しました。岸田総理は政局の話で抵抗しているのではないと否定し、官房機密費については「使徒を明らかにすることが適当ではない。個別具体的な使用に関するお尋ねは一切控える」と明言を避けました。小沼議員は企業団体献金について、献金が多い業種や超巨大企業ほど税制優遇が手厚いことや税制優遇は企業団体献金のキックバックだとの声もあり、悪しき利権政治の典型例だと指摘しました。その上で、「献金して政策を買う」と言われても仕方ないとして、総理が繰り返し「1企業によって政策を歪めることはない」と因果関係を否定していることについて、「相関関係は認められるのでは」と岸田総理をただしました。これに岸田総理は相関関係ではなく因果関係の説明をし、答弁をすり替えました。

 小沼議員は政策活動費についても言及し、制度的に温存していくままでは「政策活動費をめぐる闇」が一切解消されないとして、岸田総理に問いました。国会では、政策活動費に関して過去を遡っても熱心な議論が行われていることを取り上げ、「脱税の温床になっている」「選挙時に配っているとしたら選挙運動制限超過で違反になる」「そもそも不記載にする形がある」とした3つの法令違反が議論されており、小沼議員は「政策活動費を思い切って禁止なり、領収書を取り徹底的な透明化を行うことは考えていないのか」と総理に問いました。岸田総理は、「政治活動の自由との関係において認められているお金で法体系になっていると承知している。廃止をするかという議論においては、まずは透明性を高める取り組みを進めるべき。それが自民党の考え」と答えました。小沼議員は、自民党が野党時代、政策活動費の透明性を求めた議論を熱心に行っていたことに触れ、「また10年前と同じ議論を繰り返して、時の与党は言い訳し、時の野党は不満を口にする。もうこんな不毛な議論をやめるために、お互い政策活動費はやめないか」とあらためて岸田総理に迫りました。「特別委員会で議論を深めたい」と答弁するにとどめた岸田総理に、小沼議員は「自民党は結局変わらない。在野精神を思い出してもらうには、野に下がってもらうしかない」と述べ、質問を締めくくりました。

240522_02.jpeg