野田佳彦代表は11月7日、日本外国特派員協会主催の記者会見で講演しました。全文は以下のとおりです。

 みなさん、おはようございます。今日はこのような機会を頂戴し、心から感謝を申し上げます。9月23日に立憲民主党の代表に就任しました野田佳彦と申します。かつて、2011年から2012年にかけて、1年4カ月内閣総理大臣を務めました。

 今年は選挙イヤーであって、昨日はアメリカの新しい大統領が選ばれました。日本も選挙がありました。結果はご案内のとおりですが、選挙の総括的な話とまもなく始まる特別国会にどのように臨むのか、これからの参院選にどう臨むのか、そういう話を中心にしていきたいと思います。

 10月1日に臨時国会が開催されて、石破総理が誕生いたしました。
 この臨時国会では1月と9月に大きな災害が発生した能登半島の復旧復興のための議論をするということと、1月から6月に行われた通常国会で裏金の問題について解明もされていないし、けじめもついていないし、これからどうするかという法改正も不十分でしたので、その議論をもう1回きちんとやるんだろうと予想していました。
 ところが、10月1日に臨時国会が始まり、9日に衆議院を解散するということで、戦後総理が就任してから最短の期間で解散総選挙になってしまいました。

 そこで私は今回の解散は「裏金隠し解散」と命名しました。
 なぜこの問題を争点化したかと言いますと、単なる政治資金規正法という法律違反を85名の衆参の国会議員が行ったというだけにとどまらず、立法府国会は法律を作るところですから、大きな問題です。
 それ以上に政治資金として使ったと説明ができないならば、雑所得として計算されて、所得税法違反の可能性が出てきます。
 国民から税金を集めて、税金の使い道を決める国会で、脱税の疑いのある人たちが85人以上いることを国民が許してはいけないし、忘れてはいけないと思ったからであります。

 この争点化が功を奏して、石破総理、そして自民党には対応にあせりがでて、次々と敵失があったと思います。
 その一つは裏金に関わった議員については非公認とするいう人たちを何人か選んだ、でもその基準があいまいだったこと。非公認とされた人たちにも事実上の公認料として2000万円が支給されていたことなど、説明のつかない、ミスジャッジのようなことが続いたことが、総選挙の結果に大きく影響を及ぼしたと思います。

 衆議院の定数は465人ですので、過半数は233です。

 私どもは自民党の過半数割れは実現できるだろうと思っていましたが、選挙が始まると、自民党と公明党あわせた与党が過半数割れしていくという可能性が出てきたことを実感として持つようになりました。
 結果的には敵失が大きかったと思いますが、政治とカネの問題をめぐって、自公政権に国民はノーという意思表示をつきつけて、自公あわせて215議席となりました。
 過半数割れに追い込んだということは、選挙の目標にしていたので、それを達成できたということは大きな前進だと思います。

 一方で、もう一つの目標は比較第1党になるということでした。
 われわれは50議席増やすことはできましたが、結果的には自民党が191議席、立憲民主党が148議席と、第2党でありましたので、過半数割れに追い込むという必要条件は満たしましたが、必要十分条件までは残念ながら満たすことはできなかったというのが総括であります。

 11月11日から特別国会が始まります。特別国会については、できれば会期をとってもらって、審議の時間も充実させてもらいながら、国民の意思が、政治とカネの問題についてノーという意思表示をしたわけですから、その解明を引き続きやっていくことと、こうした不祥事を起こさないためにどのような処方箋を描くのかというところまでの議論を、本来はすべきだと思います。

 その特別国会の冒頭に首班指名選挙、総理大臣を選ぶ選挙が行われます。一回目の投票はそれぞれの政党の党首を書くだろうと思います。
 そうすると、一番多いのは衆議院では自民党の石破さん、2番目には立憲民主党の私になる可能性があります。過半数に達しない場合はもう1回投票ということになって、2回目の投票は2人のうちどちらかを選ぶ決戦投票となります。
 決戦投票で、野田佳彦と名前を書いていただける可能性もありますので、まだ政権交代の可能性はあるということだけは申し上げておきたいと思います。
 可能性がある限り、追及していきたいと思います。

 いまどういうことをやっているかというと、各野党の党首と会談をして、今日も社民党の党首とお会いします。
 これまで維新、共産、国民、社民党と特別国会のもち方もありますが、大事なのは来年の参議院選挙で野党連携ができうるならば、参院選で自民党に引導を渡すことが十分できると思います。
 特に1人区、32ある1人区で協力しあえれば、劇的な変化が起こせますので、そのキックオフという意味において、野党間の党首会談を精力的に行っているところであります。

 参議院選挙に入っていく前の重要なプロセスとして、今回の衆議院選挙では政治とカネの問題に対して、国民はノーという意思表示を突きつけたわけですので、そのためにどうやったらこうした不祥事が起こらないかという、政治資金規正法の抜本的な改正案を野党としてまとめて、それを自民党公明党にのむように迫る構図にもっていきたいと思います。

 内外ともに大きな課題がある時ですので、それらを解決するための政策を推進していくためには、前提条件として、政治に対する信頼が不可欠となります。
 その信頼を取り戻すために、不祥事を起こさないための法改正、これを年内に決着をつけていきたいと思います。
 中身としては、企業団体献金を廃止して、個人献金を助長していくような流れをつくっていくこと、それから不正の温床になっていた政治資金パーティについては、企業団体からのパーティ券の購入は求めないようにすること、政策活動費は廃止すること、第三者機関をつくって、政治資金の流れをチェックすること、日本の場合は独特ですが、世襲が多いので、政治資金を通じて制限をすることなどを柱として、野党への呼びかけをしていきたいと思います。

 その前に具体的に政治の風景として、変わってくるところがあると思います。
 今回の特別国会から、これは自民党はまだ十分意識してないと思います。野党の方が数が多いということは、国会運営、国会人事について、野党が主導権を握るということです。
 たとえば、各委員会の委員長、議長や副議長を含めて、多数決で決めれば、野党がとれるようになるということを、このへんの意識が自民党には十分ないようですので、現実をまず突きつけていきたいと思います。

 たとえば、30年前に1993年、私が衆議院議員の一年生になった年であります。政権交代が起こって、議長が比較第1党の自民党ではなく、比較第2党の社会党の土井たかこさんが議長になりました。
 そこまで議長をとるところまでいくかは別にして、衆議院の17の常任委員会の配分をドント方式で決めようと提案しています。

 その時に本会議をセットする議運委員長や予算委員長を野党がとれば、どういうことになるかです。特定の政党と先立って補正予算の中味の議論をつめてきても、予算委員長が差配をするなかで、野党と向き合っていかないと、予算が通らなくなります。

 恐らく自民党は国会の動きについて、危機感が足りないように思います。
 すなわち特定の政党と政策協議をして過半数をとれるようにということしか考えていない。国会の舞台回しをどうするのかについて、念頭になかったように思いますので、その危機感を持ってもらわなければいけないと思います。ここからが大事です。

 私は国会の審議を停滞させて、分断をさせることを目的とはしていません。分断は世界にとっても大きな問題ですが、日本も分断の政治ではいけないと思っています。
 与野党が議論をして、一致点を見出していくための国会改革を進めていくチャンスと受け止めていきたいと思います。与党が事前に審査した法律だけを出してきて、後は機械的に物事が決まっていく国会ではなくて、与野党が大事なテーマに向き合って、議論して、場合によっては議員立法を議論、修正して、国民の意見が反映される、そういう法律や予算をつくっていけるような契機にしていきたいと思います。

 物事が見えないところで、大事なことが裏で決まる日本の政治を変えて、国会という表舞台でしっかり議論をして、物事が決まっていく、裏から表へと、熟議と公開の政治に変えていく
 そういうチャンスにぜひしていきたいと考えています。

 時間になりましたので、終わります。

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