参院本会議において3月31日、「令和7年度総予算案」について討論・採決が行われ、立憲民主党からは勝部賢志参院議員が反対の立場で討論を行いました。また、「所得税法改正案」についても討論・採決が行われ、立憲民主党からは柴愼一参院議員が反対の立場で討論を行いました。予定原稿は以下の通りです。
■「令和7年度総予算案」 勝部賢志議員が反対討論
「令和七年度予算3案」反対討論
立憲民主・社民・無所属 勝部賢志
立憲民主・社民・無所属の勝部賢志です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました「令和7年度予算3案」に反対の立場から討論いたします。

まずは、28日、ミャンマーで大地震が発生し、多くの方が被災されました。
お亡くなりになられた方には心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
政府におかれましては、我が国関係者の被災状況の把握に努めていただくとともに、一刻も早い救出と、安全確保に万全を期していただきたいと思います。また、被災をされた国々に対しましても物心両面での支援が必要になってくると思いますのでその対応にも遺漏なきようお願いいたします。
はじめに、現行憲法下で初となる参議院での本予算の修正について述べます。
令和7年度予算3案は、衆議院での多数派形成のための自、公、維の3党合意と、「高額療養費の自己負担額の引き上げ」の一部修正のため、29年ぶりに衆議院での修正を経て、参議院に送られてきました。
しかし、「高額療養費の自己負担額の引き上げ」については、参議院予算審議の初日から、わが党トップバッター田名部議員の質疑において、当事者である参考人からの直談判を受けたことが決定打となり、二日後に患者団体の方々との面会後、総理はその日のうちに凍結することを表明しました。
まさに「熟議の府・再考の府」である参議院の本領発揮、その役割がしっかりと機能した一幕でした。これは、衆議院から積み上げてきた厳しい追及の上に、更なる議論を重ねた野党は勿論のこと、与党にも慎重論が出るなど、「万機公論に決すべし」をまさに参議院の場で実践したものです。決してあきらめず、最後まで当事者の方々の思いに寄り添った参議院予算委員会の憲政史上に残る大きな成果です。
このようにして、現行憲法下初となる予算の参議院修正がなされました。
しかし、それに比べ、なぜ、生煮えの法案を小手先だけ修正して参議院に送ってきたのか、総理の判断が厳しく問われます。総理には判断の甘さと、決断の遅さが当事者や関係者の方々に無用な不安を抱かせたことについても、猛省を促すとともに、今後の検討に当たっては、決して期限を切るようなことはせず、当事者や関係者のみなさんの納得が得られる形で進めるべきことを強く求めます。
さて、しかしそのような中、石破総理はいったい何をしているのか?
3月13日には石破総理が新人衆議院議員との懇親会で商品券を配布したことが露見しました。
私は、懇親会の日取りが3月3日だったという事を聞いて愕然としました。これじゃあ誰が見ても、少数与党の衆議院での出口も無事に決まったし、あとは与党が多数の参議院なので予算は成立したのも同然だから、まずは皆さんご苦労さんと宴席を設けられたのだと思われても仕方のない日程設定です。
しかも、こともあろうに、そこで10万円の商品券配布のおまけ付きだったという、まさに、官邸の緊張感の無さがいまだに信じられません。当然、この問題でも参議院は振り回され、多くの時間を費やし、「商品券配布問題」は、歴代総理にまで波及し、未だに疑義が晴れません。
そして一度ならず二度までも。
3月25日、石破総理と公明党斉藤代表との会談の中で、総理が予算成立後に「強力な物価高対策」が必要との発言があったと報じられました。まさに参議院での真剣な予算審議の最中に、この予算案はそもそも「無力」で「不十分」だと自ら認めたようなもので、その審議自体、意味を成すのかという疑念も生じてしまいます。
「国会軽視・参議院軽視も甚だしい!」と言わざるを得ません。
このことで、「高額療養費の自己負担額の引き上げ」、「商品券配布問題」に引き続き、3度目の予算委員会での「異例の陳謝」と相成りました。
そもそも、年度内自然成立が不可能な状態で参議院に送付され、ただでさえ日程が厳しい中で、与野党が互いに知恵を出し尽くしながら、7回の集中審議、76時間の議論、熟議の府・再考の府としての中身の濃い議論を続けてきたのです。しかしながら、参議院での充実審議に波を立て、妨げてきたのは、予算審議をお願いしている当の石破総理なのであります。
総理のこのような国会運営の姿勢そのものに対して疑義を持たざるを得ないことが、何よりこの場で反対討論を申し上げなければならない、まずは、一つの大きな理由です。
次に、令和7年度予算案に反対する具体的な理由を述べます。
本予算案に賛成できない第一の理由は、「国民の命を軽視する予算案」だからです。
高額療養費問題を典型に、崩壊寸前の危機的状況にある介護・障害・福祉現場で働く方々の処遇改善や、訪問介護事業者に対する緊急支援などに全くとり組もうとしていません。
第二の理由は、「物価高に苦しむ国民生活を顧みない予算案」だからです。
値上げが予想される食料品は、年間では二万品目に達するといわれています。実質賃金は3年連続マイナス。地元北海道では、春はまだ遠く、ガソリン・灯油価格の高騰に苦しむ声を聞かない日はありません。そのように国民生活に寄り添ったものとは全くなっていないのです。
第三の理由は、「税金の無駄遣い予算案」だからです。
立憲民主党は基金全体について、政府自らが決めた3年ルールを逸脱し8兆円規模の積み過ぎが放置されていることを明らかにしました。基金や予備費の無駄に十分に切り込めていないのです。
以上の反対理由に加えて、強く糾弾せざるを得ないのが、この期に及んでも自らが引き起こした「自民党裏金事件」に端を発した「政治とカネ」の問題を反省していない自民党の姿と、この問題をめぐる石破総理・総裁のリーダーシップの欠如です。
旧安倍派元会計責任者の参考人招致で、旧安倍派幹部の発言との大きな矛盾が明確になりましたが、石破総理・総裁は、キックバックの再開の経緯などについて再調査すらしないと、問題究明に極めて後ろ向きです。
先週末、参議院予算審議の大詰めを迎え、審議時間は当初の目安である80時間には届かないが、内外諸課題山積のこの状況で、更に国民生活や経済に影響を与えてはならないとの、参議院与野党幹部の高い次元からのご判断により、年度を跨いでの追加審議と参考人招致という2点の合意をもって、本日、本会議での採決となりました。
「政治とカネ」の問題は、言うまでもなく、まさに積年に渡り持ち越されてきた課題であり、立法府にその自浄能力が問われている問題です。私たちは引き続き、この問題に全力で取り組んでいく決意を表明すると共に、与党の皆様には、元参議院議員である世耕衆議院議員の参考人招致を予算委員会全会一致で議決した事の重みを改めてご確認いただき、更なる審議の実現に向けて、一層真摯なご努力をいただくことを強く求めます。
そして、企業団体献金の禁止、選択的夫婦別姓制度の実現、旧統一教会問題、就職氷河期対策など残された課題にしっかりとした答えを出していく国会にしていかなければなりません。
私たちは、引き続き、国民の皆様が願う「命とくらしを守り、若者と子供たちの未来が明るいものになるように」全力を尽くして頑張ることをここに誓います。
なお、「自由民主党・公明党提出、令和7年度予算修正案」につきましては、「高額療養費の自己負担額の引き上げ」凍結という参議院審議の成果に基づく修正であり、賛成です。
以上申し上げ、「令和7年度予算3案」反対討論といたします。
ご清聴ありがとうございました。
■「所得税法改正案」 柴愼一議員が反対討論
所得税法等の一部を改正する法律案に対する反対討論
立憲民主・社民・無所属 柴 愼一
立憲民主・社民・無所属の柴愼一です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論いたします。

反対する第一の理由は、所得税の「年収の壁」対策に関わる一連の改正内容です。
まず政府原案で基礎控除と給与所得控除の最低保障額を10万円ずつ引き上げた点について、政府はその理由を「物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題に対応するもの」としています。これは、最低限度の生活費には課税しないとの基礎控除の趣旨に基づき「物価高による最低限度の生活費の上昇」に対応したものと言及しない、論点をずらしていると言えるものです。
実質的な税負担の増加を理由としているにも関わらず、引上げ額の根拠を、実質的な税負担額の増加分ではなく、消費者物価指数などの動向としており、引上げ額設定の論理が破綻しています。
さらに与党修正案は、昨年12月の自民党、公明党、国民民主党の三党合意に基づく協議において、課税最低限を178万円に近づけるために基礎控除に年収に応じた4区分を設け、かつ時限措置とするなど、複雑極まる制度となりました。
「最低限度の生活費に対しては課税しない」という基礎控除の趣旨からすれば、そこに年収に応じた細かい区分、しかも時限でそれを設けることは、基礎控除の趣旨を蔑ろにするものであるとともに、各企業の給与会計実務に携わる方々の事務負担やシステム改修などのコストが増大する観点からも、大きな問題が生じる懸念があります。
加えて、与党修正案では、年収200万円を超えるラインを境に新たな「壁」が生じます。高所得層の減税額が大きくならないよう、概ね2万円の減税額とするために複雑な制度設計となり、これなら2万円の定額減税とすればよかったと言えます。
今般の103万円の「年収の壁」議論の論点の一つであった、大学生の働き控えの問題は、特定親族特別控除の創設より対応が図られたことから、基礎控除の見直し議論は、基礎控除とはどうあるべきか、何を基準とすべきか、などの本質論であるべきでしたが、予算成立に向けた政党間協議をまとめるための妥協案、苦肉の策となりました。このことで、税制の基本原則である「公平・中立・簡素」が、大きく歪められた結果である本改正案を容認することはできません。
与党の修正により追加された附則第81条では、所得税の抜本的な改革に係る措置「我が国の経済社会の構造変化を踏まえ、各種所得の課税の在り方及び人的控除をはじめとする各種控除の在り方の見直しを含む所得税の抜本的な改革について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるもの」とされています。今後、このことに基づき抜本的な改革についての検討が行われることとなりますが、政府・与党内の議論にとどまらず、熟議と公開のもと、国会での開かれた議論が行われることを強く求めます。
反対する第二の理由は、物価高に苦しむ国民生活に対して税制による支援が不十分な点です。
これまで政府はガソリンに対する補助金を段階的に縮小してきています。未だに高値のまま推移するガソリン価格は生活を直撃し、国民は価格低減に直結する暫定税率廃止を強く求めています。
三党合意によって「いわゆるガソリンの暫定税率は廃止する」ことが確認されているにもかかわらず、今日までの衆参における委員会質疑で、その具体策が示されることは一切ありませんでした。ガソリン高を事実上放置する政府与党の姿勢は容認できるものではありません。
そんな委員会での議論を積み重ねてきたにも関わらず、石破総理が予算成立後に燃料費高騰対策の検討について触れたとする報道は、委員会での真剣な審議を蔑ろにするものであり、厳しく指摘したいと思います。
反対する第三の理由は、法人課税の見直しが不十分な点です。
巨額の租税特別措置が、明確な効果が見られないまま惰性で続けられています。我が党が衆議院で提出した修正案の内容に基づき、租特の適用企業名を公表して、その有効性を早急に確認すべきです。
また今次春闘交渉における大手の満額回答が相次ぐ中で、大企業に恩恵が偏る賃上げ促進税制は廃止し、それにより生み出された財源で、価格転嫁が進まず経営に苦しむ中小企業の賃上げに、今こそ実効ある支援策を講じるべきです。
価格転嫁や適正取引を促す措置をより一層推進する施策や、赤字企業などへの補助金政策の導入に関する検討も含めて、政府の対応には中小企業を支援する観点が弱すぎます。
反対する第4の理由は、規模ありき43兆円の防衛費確保のための税制措置は到底認められないからです。取りやすいところから取るという「たばこ増税」を含め、防衛増税は撤回するべきです。
石破総理は、今国会冒頭の施政方針演説において、「かつて国家が主導した『強い日本』、企業が主導した『豊かな日本』、加えてこれからは一人ひとりが主導する『楽しい日本』を目指していきたい」と述べられました。楽しい日本と言う言葉の選択はどうかと思う面もありますが、国家や企業など視点から、一人ひとりの存在・生活に着目して政策を講じていくことには、強く共感するものです。
政府が掲げる「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に向けた好循環を実現できるかの転換点である今年こそ、税制の抜本改革が必要であった筈です。
しかし、本税制改正案には、そんな楽しい日本を実現するための具体策がなんら示されていません。税制には社会構造を変える大きな力があります。失われた30年に終止符を打ち、アベノミクスによって積みあがった巨額の内部留保や金融資産などの果実を、働く者や中小企業に還元させる税制を創設することこそが、政治に求められています。
政治とカネ、自民党とカネの問題、裏金問題で政治に対する信頼が大きく揺らぎ、信頼回復に向けた様々な取り組みが進められています。昨年に引き続き今国会でも政治の信頼回復が大きなテーマであるはずです。
そのような中、石破総理による10万円の商品券配付問題が発覚しました。石破総理は、法的な問題はないと強弁しますが、石破総理の言い訳一つひとつが政治資金規正法の実効性を失わせるものであり、極めて重大な問題です。
鈴木法務大臣が法務省職員の労をねぎらうために月餅を配った問題で、石破総理は鈴木大臣を厳重注意しましたが、総理自身や国会議員は特別との意識があったのでしょうか。
派閥裏金問題では、裏金を受け取った議員に対し、納税を求めない税務当局に対して厳しい批判が沸き起こりました。国民は1円たりとも徴税逃れ、申告漏れを許されません。加えて多くの国民が食料品・ガソリン等の物価高に苦しみ、政府による支援も不十分であるさなかに、与党政治家の国民との金銭感覚の大きなギャップが明らかになりました。
そうした政府与党が税制を担い、国民に税の負担をお願いする資格はないと言わざるを得ません。
以上から、本改正案は物価高に苦しむ国民生活を支援する措置が不十分であり、大きな時代の転換点にあたる税制改正の内容としても不十分であることをもって、明確に反対することを表明し、私の討論とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。