参院本会議で3月26日、「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」が審議入りし、水野素子議員が会派を代表して質問に立ちました。予定原稿は以下のとおりです。

「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」

立憲民主・社民・無所属 水野素子

 立憲民主・社民・無所属の水野素子です。ただいま議題となりました「大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、会派を代表して質問致します。
 教育、人への投資は、国の未来への投資です。
海外では欧州を中心に大学までの学費が無料の国が何十年も前から複数あります。一方でアメリカなどでは、返還しなくてよい給付型の奨学金が発達しています。私は約25年前にオランダのライデン大学に留学しました。国際法のオリジンであることが選択した理由ですが、留学先の選定においてはやはり学費も大きな考慮要因でした。アメリカは学費がとても高く、多額の返済を負うリスクがある。フランスの大学はフランス語の理解が必要ですが、外国人留学生であっても学費が無料でした。このように、海外では国民の学費負担の軽減はもちろん、世界中から優秀な学生を集める手段としても学費の無償化に戦略的に取組んでいます。
 一方で我が日本は、学費負担軽減制度が遅れており、いわば「悪いところどり」です。海外に比べて高い学費を国民が負担し、奨学金も利子を付けて返済するローンが中心。いわゆる氷河期世代の多くの方が今も奨学金の返済に苦しみ、所得が低いために結婚を諦めています。高い学費負担が少子化の大きな原因なのは明らかです。しかし国は長らく放置し、深刻な少子化を招きました。本改正により、まずは多子世帯の修学支援を拡充することは歓迎しつつも、世界と比べてまだまだ学費支援や国による教育への投資そのものが不十分です。さらなる拡充が必要との思いをもとに、質問いたします。

1.法律の対象【文部科学大臣】
 今回の改正では修学支援法の対象を大学授業料等免除だけに絞り、給付型奨学金は修学支援法の対象外とする理由は何ですか。令和6年度も中間層の理工農系学生支援については大学授業料等減免の拡充を行いましたが、法の対象は変更しませんでした。今回はなぜ法の対象を変更するか、文部科学大臣にお尋ねします。

2.教育の受益と教育コストの負担【文部科学大臣】
(1)修学支援についての政府の基本理念を確認します。教育のコストを究極的に は誰が負担すべきでしょうか。ベーシックサービスとして社会全体で負担すべきか、直接の受益者である学生個人が本来負担すべきか。折衷策という考え方もあるかもしれませんが、教育費用の負担の基本理念を文部科学大臣、ご説明下さい。
(2)北欧などでは教育をベーシックサービスとして社会全体でコストを負担するとの思想から、学費自体の無償化を推進する国が多いです。米国などでは学生個人が教育費用を負担する思想で、頑張って学業成果を出せば返さなくてよい公的及び民間の社会貢献としての給付型奨学金が発達しています。日本では収入要件などの認定の基準を「家庭」とする理由と合理性は何か。修学支援制度の本来の受益者は学生なのに、そのコストを負担するのは家庭・親が想定されています。すなわち、受益者とコストの負担者がズレた制度設計となっているのは何故ですか。勉学に取り組む意欲にもマイナスの影響が出るとの声もあります。文部科学大臣にお尋ねします。
(3)国が運営する日本学生支援機構の奨学金の収入要件の認定において、学部生は生計維持者(親)を含む家庭を基準とし、大学院生は本人を基準とするのはなぜですか。成人年齢は18歳であり、学部生から本人の経済状況を基準として、学生の学ぶ権利を平等に扱うべきでないですか。文部科学大臣にお尋ねします。
(4)日本では先進諸外国と比べて給付型奨学金の割合が低いのはなぜですか。民間でも学生のために利子を優遇する教育ローンが複数存在します。政府や 公的な奨学金は給付型奨学金を中心として給付型奨学金の対象をもっと広げ、民間による奨学金を税制優遇などで促進すべきではないですか。文部科学大臣にお尋ねします。

3.「3人以上から」の合理性【文部科学大臣】
(1)少子化対策として、また、国民全体のニーズからも、支援の対象を3人以上の多子世帯とする合理性は低いと考えます。なぜ1人目からとしないのですか。文部科学大臣にお尋ねします。
(2)「3人以上の多子世帯」の背景として、文部科学省の「高等教育の修学支援新制度の在り方検討会議」が「調査対象を結婚持続15~19年の夫婦」とするデータを論拠として用いたのは不適切ではないですか。2023年調査で全世帯のうち児童なしが8割を超え、児童1人が約9%、児童2人が約7%、児童3人以上は2.1%にすぎず、本来は1人目から支援とすることが理想ではないですか。客観的なデータで何があるべき姿かを論ずるのではなく、財源不足などを背景とする「結論ありき」のデータ活用であり、政府が推進するEBPM、客観的なデータに基づく政策判断に反するのではないですか。文部科学大臣にお尋ね します。
(3)今回の法案ではまず3人以上からでも、少なくとも近い将来、段階的にでも、 2人目、1人目へと支援を広げる計画ですか。文部科学大臣にお尋ねします。

4.財源【文部科学大臣及び財務大臣】
 人づくりは国づくり、教育は国の未来への投資です。修学支援の財源は消費税に限定せず広げるべきでないですか。財源が消費税のみでは修学支援の拡充が難しい。国が修学支援を消費税増税の正当化として利用することはないか。文部科学大臣及び財務大臣にお尋ねします。

5.教育予算の増加【(1)文部科学大臣及び財務大臣、(2)文部科学大臣、(3)防衛大臣及び財務大臣】
(1)2024年のOECDの調査によれば、日本の公的な支出の中で教育が占める割合は7.1%と、OECDに加盟する37か国で3番目に低くなっています。日本は教育関係予算が大して増えず、一方で近年防衛費が急増。米国からはさらに防衛比GDP比3%との声も聞こえます。米国の一方的な要請に呼応・忖度して防衛予算をさらに増やし、一方で教育予算が伸び悩むなら、国家予算のバランスがさらに悪化し、国民のニーズに合わないと感じます。教育は未来への投資です。学費負担が少子化の原因であり、教育の現場も限界で労働環境改善が急務です。国は教育関係予算をもっと増やすべきでないでしょうか。文部科学大臣及び財務大臣にお尋ねします。
(2)多子世帯以外の授業料等減免の対象要件である「授業料等の負担を求めることが極めて困難な状況」が、世帯年収380万円(私立理工農系のみ600万円)では低すぎます。再検討が必要ではないですか。文部科学大臣にお尋ねします。
(3)米国の求めに応じて近い将来我が国の防衛費をGDP2%よりも増やす可能性はありますか。そのような政策をとる場合、財源は何ですか。高い教育費に加えて昨今の物価高。国民生活は逼迫しています。防衛費のさらなる増加のための増税は絶対に行わないと言えますか。防衛大臣及び財務大臣にお尋ねします。明確にお答えください。

6.機関要件【文部科学大臣】
(1)大学等の定員充足を修学支援の要件とすることは廃止すべきでないですか。大学等の経営状況は学生の修学支援とは別の問題です。学生の希望に沿った修学の機会を奪う恐れもあります。人口減に悩む地方の大学等の起死回生(再チャレンジ)のためにも見直しが必要ではないですか。文部科学大臣にお尋ね します。
(2)大学等の定員割による取消しを猶予する要件について、令和7年度からの制度改正案として「同一道府県内に同種・同学位分野の代替進学先がない場合(首都圏大都市部を除く)」とする理由は何ですか。都道府県を単位とする合理性もないのではないでしょうか。曖昧な要件であり、誰がどのような手順で判定を行うのか。文部科学大臣にお尋ねします。
(3)人口減少・学生数の減少により、定員割となる大学等が増えています。大臣所信の「国公私立を問わず、高等教育の全体の規模の適正化に向け、再編なども視野に入れて必要な対応行う」とは具体的に何をするのでしょうか。学ぶ権利や地方創生・雇用維持などを踏まえて、どのような方針と手段で取組むのか。文部科学大臣にお尋ねします。
(4)経営が悪化した私学の公立化の動きがあります。公的資金で支えるのにも限界があります。人材不足に悩む地域の企業・産業と連携して、地域社会全体で教育・人材育成を行う環境を迅速に実現するよう、税制優遇などのインセンティブも含めて促進すべきでないか。文部科学大臣にお尋ねします。

7.大学の基盤的経費の拡充【文部科学大臣】
(1) 大学の学費値上げが相次いでいる。先日、私の事務所に学生団体が来訪し、 約150億円あれば近年行われた、及び、来年度行われる学費値上げを撤回できるとの試算を示し、窮状を訴えました。学費値上げ撤回・回避のための予算を至急確保すべきではないですか。文部科学大臣にお尋ねします。
(2) 全国大学高専教職員組合によると、法人化以降、国立大学の運営費交付金は 13.1%(約1,630億円)、国立高専の運営費交付金は11%(約77億6000万円)も減少しています。大学等の運営に不可欠な運営費交付金、特に人件費や光熱水費、日常の教育研究費などの「基幹経費」を大幅に増額すべきでないですか。文部科学大臣に見解を求めます。

8.奨学金返還免除【文部科学大臣】
 これから支払う学費の免除だけでなく、現在奨学金を返還している方への救済策も検討が必要ではないですか。氷河期世代への救済策としても重要です。地元の駅などで演説をしていると、通学中の学生からも「大学まで無償化を是非」とよく声をかけられます。先週の朝も通学中の大学生から、数百万円の借金があるから是非無償化を実現してほしいとの悲痛な声、切実です。中央労福協の調査によれば、奨学金利用率は45.2%。借り入れ総額平均は338万円。多くの方が返済に不安を感じ、生活を圧迫している。結婚を諦めるなど、少子化の原因ともなっています。返還免除制度の拡充について国はどのような検討を行って いますか。少なくとも返済中の有利子奨学金の利子分の免除や貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象とすることは早急に措置すべきではないですか。文部科学大臣の見解を求めます。

結語
 結びに一言申し上げます。人づくりは国づくり。教育は未来への投資です。政府与党に教育への投資意欲が低く教育予算が増えないのは、未来に向けて国を発展させる長期ビジョンや未来世代への責任感が欠如している証左です。
 この問題は若者とお年寄りのどちらを優先するかという世代間の競争や分断を招くものであってはなりません。国民の暮らし全体を守る国の決意と実行が求められています。深刻な物価高への対策が進まないこともしかり、政府与党、自民党に国民生活を守る決意がないのです。私が子どもの頃から少子高齢化が叫ばれていたのに、自民党を中心とした政府は無策であり、深刻な少子高齢化時代を迎えました。そして今でも国民の大半が子育て支援環境や高い教育費、不登校増加や教員不足をはじめとする教育の現場の改善、年金・介護・医療に悩んでいる。
 一方で国民の不安をいたずらにあおって防衛費を急増させ、大事な国家予算を海外の企業にどんどんばらまいていく。平和はお金では買えません。腹の座った平和外交が大事です。もし米国新政権に忖度してまたも防衛費をGDP3%などに増加させ、増税も含めてさらに国民生活を圧迫するのであれば、国民を搾取し平和をも危うくする亡国政府とのそしりを逃れられません。国民生活を守るために精一杯誠実に働く政治に転換する。

20250326_102440 .JPG

250326「大学等に おける修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案」趣旨説明質疑 水野素子議員.pdf