【農林水産部門会議】食料・農業・農村基本計画及び農林水産物・食品分野に係る米国の関税措置対策についてヒアリング
立憲民主党は、4月11日午後、農林水産部門(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を開催、同日午前に閣議決定した食料・農業・農村基本計画及び米国の関税措置による農林水産物・食品分野の輸出への影響・政府の対応について、農林水産省から説明を聴取しました。(司会:野間健農林水産部門長代理・衆院議員)
■食料・農業・農村基本計画についてヒアリング
4月11日、昨年の通常国会において改正された食料・農業・農村基本法に基づく食料・農業・農村基本計画が閣議決定されました。食料・農業・農村基本計画について、農林水産部門(部門長:金子恵美衆院議員)および食料・農業・農村政策WT(座長:田名部匡代参院議員)は、農林水産省、有識者からのヒアリングと党内協議を経て33項目にわたる「食料・農業・農村基本計画に盛り込むべき事項」を取りまとめ、2月28日午後、江藤拓農林水産大臣に申し入れたところです。 この申し入れを基本として、立憲民主党が各党との協議を主導的に行った結果、3月25日、衆参両院の農林水産委員会において、それぞれ、新たな食料・農業・農村基本計画に基づく施策の推進に関する委員会決議が行われました。こうした経緯を経て、今般、閣議決定された食料・農業・農村基本計画について、農林水産省より説明を聴取し、質疑応答を行いました。
参加議員から「目標年次は、以前は10年後であったが、新たな基本計画では5年後となっている。前回の5年間、10年前の基本計画の目標の到達点、つながりというものは新たな基本計画の中に示されているのか」(近藤和也議員)との質問がありました。 農林水産省から「過去の基本計画の目標についての記述はない。基本計画は改訂し、新たな基本計画ができたものである。目標については、前回の基本計画では食料自給率しかなかった。食料自給率目標は45%であり、目標年度は新たな基本計画と同じ5年後で、目標値、目標年度とも変わっていない」との回答がありました。これに対し、「中間地点としての状態については書いていないのか」(近藤和也衆院議員)との質問があり、農林水産省から「現状38%であるが、品目ごとにどういう生産の状況かということは、国内の食料供給に係る項目の中で記載している」との回答がありました。また、「食料自給率目標達成に必要となる農地面積についてはどう書かれているのか」(近藤和也衆院議員)との質問に対し、農林水産省から「農地面積については現状の427万haを412万haとしており、品目ごとの作付面積も記載している」との回答がありました。
以上を踏まえ、「5年前の基本計画については目標年度が同じであるとしても、10年前の基本計画の目標についての記述はないのか。目標達成状況の分析、評価をきちんとやるべきではないか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。これに対し、農林水産省から「かつての基本計画においては検証が不十分であったとのご指摘と受け止めた。今回の基本計画においては、毎年、食料自給率の目標について、PDCAサイクルにより、食料・農業・農村政策審議会での知見も賜りながら、しっかりと検証していく」との回答がありました。
また、参加議員から「米の輸出額については、136億円を922億円にするという目標が掲げられている。これにより、米の作付けに対する考え方はどう変わっていくのか。基本計画上どう位置付けられているのか」(逢坂誠二衆院議員)との質問がありました。農林水産省から「2024年の米の輸出量は前年比22%増、原料米換算4.6万tとなっており、目標はさらに拡大し、35.3万tと設定している。国内消費仕向量は、2023年で824万tであるが、人口減少と米自体の需要減少で、やむを得ず2030年は777万tとしている。一方、生産量ではプラスの目標を掲げている。国内消費が縮小する分を輸出で確保することで、輸出量4.4万tのところ、39.6万tという目標を掲げている。先ほどの原料米換算の数値との違いは、玄米換算していることと、米菓の輸出を米に換算して取り込んでいるため。単収については、それぞれニーズに合った生産をし、低コストで単収を伸ばさなければならないため、米全体では535kgを570kgとし、海外向けを含む新市場開拓用については628kgという高い目標を掲げている」との回答がありました。
これに関し、参加議員から「輸出はいいことだと思うが、今の話では作付面積に変化はないということか」(逢坂誠二衆院議員)との質問があり、農林水産省から「なるべく減らさないことで、148万haを144万haとしている」との回答がありました。「農家の皆さんの中には、米の輸出が拡大すれば、もっと自由に作れるのではないかと考える人もいるが、必ずしもそうではないということか」(逢坂誠二衆院議員)との確認があり、農林水産省からは「どうしても国内需要が減るが、そこを輸出で、作付面積の減りを少なくし、144万haに留めたいと考えている」との回答がありました。
「生産調整的政策は変わらないのか」(逢坂誠二衆院議員)との質問に対しては、農林水産省から「需要に応じた生産を行っていくという方針は変わらない」との回答がありました。
参加議員から「肥料と飼料の輸入・確保については、どのように考え、基本計画上どう位置付けられているのか」(逢坂誠二衆院議員)との質問がありました。 農林水産省から、肥料については、「肥料原料は海外からの輸入に依存しており、調達リスクがある。まずは、化学肥料の使用量低減、国内資源の肥料利用拡大、化学肥料の原料備蓄を掲げている。また、リンの国内資源利用割合を25%から40%にするとのKPIを掲げている。肥料は、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資に指定され、同制度に基づき、リン安と塩化加里について年間需要量の3か月分の備蓄を目標としている」との回答がありました。
飼料については、「飼料自給率を2023年度27%から28%に引き上げようとしている。飼料作物の生産量については336万tから409万tとし、作付面積については現状88万haから101万haにしていこうとしている。具体的には、労働力不足や農地の確保が難しい中、地域計画で飼料生産をしっかりと位置付け、飼料作物の生産を拡大し、コントラクターやTMRセンター等の農業支援組織の運営基盤を強化していこうとしている。一方、濃厚飼料については一定程度輸入に依存しなければならないので、備蓄への支援、多様な輸入調達先の確保を図ることとしている」との回答がありました。
「新規就農に対する考え方は、基本計画でどう位置付けられているのか」(逢坂誠二衆院議員)との質問に対しては、農林水産省から「担い手への円滑な経営継承に取り組むとともに、農業教育の充実等を通じた農業内外からの幅広い新規就農者の育成・確保に向けた総合的な支援等を推進することとしている。KPIの関係では、農業分野における生産年齢人口のうち49歳以下のシェアを全産業並みに引き上げていくこととしている」との回答がありました。
参加議員から、「農地面積、農業者は減り、自給率が低下していく中で、今回の基本法改正、新たな基本計画で、どのようにして反転攻勢をかけるのかが命題であったと思う。新たな基本計画のKPIをみてみると、農家戸数は減るが生産そのものは維持ないし若干下がるという絵を描いているように見える。これがわが国農業にとっていいのか。できることを最大限やったらこうなる、これでも意欲的な目標であると言わざるを得ないのは、残念だが仕方がないことだと理解している。反転攻勢をかけるため、この目標にとどまらず、ぜひ皆さんには考えていただきたい。最低限の目標がこれであるということをお互いに共有したいと思う」(神谷裕衆院議員)との発言がありました。
これに対し、農林水産省から「生産量については各品目とも増やす目標を立てている。人が減っていく中で担い手の農地を集積・集約化して、コストダウンを図って生産性を向上し、農業経営の収益力を高め、農業者の所得を向上させていくという大きな方向性は、議員からも日々ご指摘いただいている。基本計画をしっかり実行に移していくことが大事だと思う。いただいたご意見を踏まえ、取り組んでいきたい」との発言がありました。
■米国の関税措置による農林水産物・食品分野の輸出への影響・政府の対応についてヒアリング
4月3日未明、トランプ米大統領が世界の貿易相手国に対し相互関税を課すと発表したことを対処し、立憲民主党は、党内に日米通商問題対策本部を設置し、鋭意ヒアリングを実施しています。農林水産部門会議においても、農林水産物・食品分野の輸出への影響・政府の対応について、農林水産省よりヒアリングを実施しました。
農林水産省からは、農林水産物・食品の輸出額のうち、米国への輸出は、全体の2割を占め、米国のシェアが比較的高い品目は、ぶり、緑茶等といった現状とともに、品目ごとの米国向け輸出への影響について、情報の収集、分析を行うこととしていること、関係省庁と連携し、金融機関に対し、関税措置により事業者の資金繰りに支障が出ないよう、償還猶予等を要請したほか、農林水産物・食品の特別相談窓口を設置、業種横断的に支援を行う経済産業省等の関係省庁と連携し、政府一体となって、必要な対策に万全を期すこととしているとの説明を聴取し、質疑応答を行いました。
参加議員から「直接の対米輸出は多くないので、その部分の影響は限定的に見た方がよいのではないか。むしろ、米国の関税が上がったため、第三国が輸出仕向け先を日本に変え、国内の農林水産物の価格が下がることの懸念が大きいのではないか。本来米国に輸出されているメキシコの畜養マグロやEUの乳製品が仕向け地を日本に変え、わが国の農林水産物の市場の飽和が起こり、価格が低下して、農業者、水産業者、漁業者に影響が出てくることを懸念している。これについてどう考えるか」(神谷裕衆院議員)との質問がありました。
農林水産省から「現時点では、情報をしっかり収集することとしたい。情報をよく分析したい」との回答がありました。
これに対し、参加議員から「まだ、緒に就いたばかりであるが、こうした懸念があることも含め考えていただきたい。日米間の輸出入の流れだけではなく、第三国を含め、世界の動きを十分注意してみていただきたい」(神谷裕衆院議員)との指摘がありました。
「関税が10%上がっている中、日本は豚や牛には手を付けていない。手を付けると報復だと言われかねない。業界から声は上がっていないのか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農林水産省から「まずは、情報収集。関税24%が10%になったことが決していいわけではなく、10%についてもやめてほしいということはしっかり言っていくことが必要」との回答がありました。
「貿易協定の枠内であれば、同様に関税を引き上げても対抗措置にはならないのではないか。そうした内部的な検討はないのか」(近藤和也衆院議員)との質問に対しては、農林水産省から「貿易協定のルールをしっかり守っていきたいし、相手国にも守ってほしいということを訴えて続ける必要がある」との回答がありました。
「牛肉の関税は段階的に削減していくこととされ、この4月に下がったばかり。来年も状況が変わらなかった場合、関税削減を一次凍結することはできるのか」(近藤和也衆院議員)との質問に対して、農林水産省から「国際的な約束として履行しているものを破るのはいいのかどうかは、簡単に判断できる話ではない」との回答がありました。
「ホタテは中国経由で輸出していた。ホタテ以外で日本から中国などを介して米国に輸出して、影響を受けそうな産品があるのか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農林水産省から「現在、ホタテは中国に輸出できない。今までは中国に殻付きのホタテを輸出し、中国で殻を剥く作業をし、剝き身のホタテを米国に輸出していた。中国に輸出できなくなったため、殻を剥く作業を日本で行っている。また、ベトナムに殻付きの貝を送って米国に輸出することもやっている」「米国は原産地主義を取っているので、加工の程度が大きく変わらなければ、適用される税率は日本の税率となる。製品のよって取り扱いが異なる。ホタテを含め、中国向けの水産物輸出が止まっている状況にあるので、中国の関税が高いということで影響を受ける水産物はない。ホタテは、東南アジアへ加工拠点を移しており、加工の程度によっては日本の税率ではなく、より高い税率が適用される可能性がある。他の水産物についてはヒアリング中であるが、委託加工して米国へという商流は、ホタテのように大きい金額のものについては聞いていない」との回答がありました。
参加議員から「相談窓口について、農水省は何か所設けているのか。これまでどのような相談が何件きているのか」(羽田次郎参院議員)との質問に対しては、農林水産省から「本省と地方農政局の10か所。ジェトロにも業種横断的な相談窓口を設けている。現時点では相談件数等の集計ができていない」との回答がありました。
「まだトランプ大統領が切っていないカードは金融ではないかと思う。WTOルールも無視しているので、なんでもありではないか。頭の体操だが、交渉がこじれて、とうもろこし、大豆、小麦の日本への輸出をやめるということがブラフとしてありうるのか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農林水産省から「予断をもって、ありうるのかどうかを判断することは難しい。輸出をやめるということは普通ないことだと思うが、専門の立場でないので言いにくい。ただ、米国はこれまで市場を獲得してきたので、輸出を止めるということは彼らにとってかなりのリスクになるとは思う」との回答がありました。
「象徴的な問題の一つは、米の関税700%との主張。米について再協議が米国から提案される可能性があるのではないか。仮にそうした話があったときにどうした打ち返しをするのか、頭の体操くらいはやっているのか」(神谷裕衆院議員)との質問に対して、農林水産省から「今のスタンスは、米国に対して措置の撤回を求めるということ」との回答がありました。
さらに、「米価が高騰し、外国産米が入っている状況を考えたときに、彼らが言うディールの中に米がターゲットとして入ってくる可能性があるのではないか。頭の体操はやっているのか」(神谷裕衆院議員)との質問に対して、農林水産省から「仮定の話には答えにくい」との回答がありました。
「赤沢大臣の訪米に際しての農水省からの同行の有無」(野間健議員)については「未定」、「医薬品の米国への輸出は対象外ということだが、医薬品の原料となる農産品の対米輸出はあるのか」(近藤和也衆院議員)との質問に対しては「承知していない」との回答がありました。
最後に、金子部門長より「基本計画の説明においても輸出が強調されていた。対米輸出が一定のシェアを占めている中、影響がないわけはない。大臣も影響あると明確に言っている。交渉事でもあり、細かいことは言えないことはわかる。ただ、危機感を持ち、同じ思いで守るべきものを一緒に守っていきたいということはここで共有させていただきたい」との発言がありました。
