立憲民主党は、4月18日午前、森林・林業・山村振興WT(座長・近藤和也衆院議員)・農林水産部門(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)・合同会議を国会内で開催、国有林野事業職員関連2法案の法案審査を行いました。次いで、合同会議を農林水産部門会議に切り替え、公的新品種育成促進法案、ローカルフード法案、食料供給困難事態対策法改正案の法案審査を行いました。(司会:渡辺創農林水産副部門長・森林・林業・山村振興WT事務局長・衆院議員)

 冒頭、野間WT副座長から、「先日、森林経営管理法の改正が終わった。国有林野事業職員関連2法案について、食料システム法案と並行して審議を求めていきたい。2法案の提出に向けて、審査をお願いしたい」とのあいさつがありました。

 次いで、金子部門長より「こちらからもいろんな提案をする、与野党でいろいろな議論をし、私たちが上げたい法案を訴え、与野党一体となって成立させることができる法案は、その方向を見出せるように現場の議員にご努力をいただいている。この場では粛々と手続きを進める。ぜひご意見をいただければと思っている」との挨拶がありました。

■国有林野事業職員関連2法案の審査

 合同会議において、国有林野事業で働く職員の労働関係を円滑に調整するための2法案について、説明を聴取した後、審査を行いました。2法案は「国有林野事業に従事する職員の労働関係を円滑に調整するための行政執行法人の労働関係に関する法律の一部を改正する法律案」(行労法の改正案)及び「国有林野事業に従事する職員の給与等に関する特例法案」(給特法の復活法案)です。

 まず、神谷裕副部門長から、林野労組と野党系の議員による林政懇の事務局長の立場で、林野2法案の経緯についての説明がありました。

 次に、林野労組より、「この法案によってわれわれの労働条件を担保していくことが組合員から求められている。ぜひともよろしくお願いする」との発言がありました。

 続いて、衆議院法制局より、2法案の経緯と内容について説明がありました。

 国有林野職員は、かねてから自律的な労使関係の下で労働関係の調整が行われていました。2012(平成24)年、民主党政権において、非現業の国家公務員に広く協約締結権を付与する国家公務員制度改革4法案が成立することを前提に、国有林野職員について同法案による自律的労使関係制度への移行を想定した関係法律の改正が行われました。しかし衆議院の解散で国家公務員制度改革4法案が廃案となったことで、国有林野職員はこれまであった協約締結権が認められない状況となり、国家公務員制度改革が目指していた意図とは異なることとなりました。

 2法案は、こうした状況を踏まえ、国有林野職員について、自律的な労使関係の下で労働関係の調整が行われてきたことに鑑み、引き続き労使関係を円滑に調整するため、国家公務員制度改革による自律的労使関係制度が措置されるまでの間、暫定的に、労使関係に関する従前の法律関係を確保するための措置を講ずるものです。これまで2法案を、2013(平成25)年、2015(平成27)年、2018(平成30)年、2022(令和3)年に提出してきましたが、いずれも、衆議院解散により廃案となりました。

 今回、3年ぶり5回目の提出に向け、法案審査を行おうとするものです。

 説明を受けた後、野間WT副座長より「過去何度も提出している悲願の法案である。衆議院では、与野党逆転の状況になったので、成立に向けて頑張りたい」との発言があり、審査の結果、2法案は賛成となり、次回のネクストキャビネットの法案審査にかけることとなりました。

■公的新品種育成促進法案、ローカルフード法案、食料供給困難事態対策法改正案の法案審査

 続いて、合同会議を農林水産部門会議に切り替え、公的新品種育成促進法案、ローカルフード法案、食料供給困難事態対策法改正案の審査を行いました。これら3法案は、2月28日の農林水産部門会議において法案登録が行われたものです。

 まず、農業用植物の優良な品種を確保するための公的新品種育成の促進に関する法律案(公的新品種育成促進法案)について、衆議院法制局より、経緯と概要について説明がありました。

 同法案は、徳永エリ参院議員が中心となってとりまとめられ、2024(令和6)年6月、第213回国会に立憲民主党と国民民主党の共同で、参議院に提出され、衆議院解散に伴い、未了のまま廃案となったものです。

 今回、全く同じ内容の法案を衆議院に提出しようとするものです。

 同法案は、地域における農業の基盤である農業用植物の優良な品種を確保する上で農業用植物の新品種の育成が継続的かつ安定的に行われることが重要であることから、公的新品種育成(公的試験研究機関における農業用植物の新品種の育成)の促進、公的育成品種(公的試験研究機関において育成された農業用植物の品種)の有効かつ適正な利用の確保に関し、基本方針、施策を定め、地域における農業の持続的な発展を図り、国民政策の安定向上に寄与することを目的としています。施策として、公的新品種育成の促進に必要な財政上の措置等を講ずるものとするほか、公的育成品種の有効かつ適正な利用の確保、公的育成品種の種苗の生産に係る技術を有する人材の育成に係る措置を講ずるよう努めるものとしています。

 この法案の中心となる施策は、公的新品種育成の促進に必要な財政上の措置等を講ずるものです。現在、種子法が廃止され、都道府県において種子の業務に関しては種子条例を制定しており、この種子条例に基づく都道府県の取り組みについての交付税措置を法律をもって担保しようというものです。

 次に、地域在来品種等の種苗の保存及び利用等の促進に関する法律案(ローカルフード法案)について、衆議院法制局より、経緯と概要について説明がありました。

 同法案は、川田龍平参院議員が中心となって取りまとめられたもので、公的新品種育成促進法案と同様、2024(令和6)年6月、第213回国会に立憲民主党と国民民主党の共同で、参議院に提出され、衆議院解散に伴い、未了のまま廃案となったものです。

 今回、全く同じ内容の法案を衆議院に提出することを検討しているものです。

 同法案の目的は、地域在来品種等の種苗の保存及び利用等が、農業用植物の品種の多様性の確保及び地域の農業の振興を図る上で重要であることから、地域在来品種等の種苗の保存・利用、地域在来農産物・その加工品の利用の促進に関し、必要な事項を定め、施策を総合的・効果的に推進し、農業の持続的かつ健全な発展・農村その他の地域の活性化に資するとともに、食料の安定供給の確保・国民の豊かな食生活の実現に寄与するというものです。

 同法案は、基本理念を定め、農林水産大臣は基本方針を定め、都道府県・市町村は、計画を定めることができるとし、施策として、地域在来品種等の種苗の収集及び保存並びに提供等、技術の開発・普及、人材の育成・確保、連携の強化、農業者等に対する支援、国民の理解の関心の増進について規定し、農業者の意見を反映させるための措置を講ずることとしています。

 次に、食料供給困難事態対策法改正案について、衆議院法制局から説明がありました。

 同法案は、昨年の通常国会において、内閣が提出した食料供給困難事態対策法案の審議中に、食料供給困難事態において大臣の指示に従わなかった場合、刑事罰が設けられていることがクローズアップされ、立憲民主党及び有志の会の共同で、修正案を提出された経緯があります。修正案は成立しませんでしたが、今回、修正案と同じ内容の改正法案を提出しようというものです。

 内容としては、(1)食料供給困難事態において、主務大臣の指示に違反して、出荷販売業者、輸入業者、農林水産物生産業者等又は加工品等製造業者が計画を届け出なかったとき等の罰則は、刑事罰として20万円以下の罰金とされているところ、行政罰の20万円以下の過料に改めるもの、(2)備蓄に関する制度について法施行後3年を目途として検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする検討条項を追加するものです。

 以上、3法案説明後に一括して質疑が行われました。

 参加議員から「廃止された主要農作物種子法と今回の法案との違いは何か」(山田勝彦衆院議員)との質問があり、法制局から、「主要農作物種子法が廃止され、都道府県において必要があれば種子条例を作っているという状況。行政の運用は、2021(令和3)年に野党の働きかけによるものと思われるが、事務次官通知が改訂され、通知の中でこれまで実施されてきた都道府県の種子に関する業務については、引き続き、交付税措置の対象とすることが掲げられた。法律上の位置付けが十分か、ということで、今般、交付税措置を公的新品種育成法の中で担保しようというもの」との説明がありました。

 「各地域でシードバンクに取り組みたくても財源がない中、この法案が成立した場合、国から支援が行われることになるのか」(山田勝彦衆院議員)との質問があり、衆議院法制局から「公的新品種育成法案の対象となるものについては、同法案の交付税措置の対象となり、ローカルフード法案の対象となるものについては、同法案で支援をしていくこととなる」との説明がありました。

 また、食料供給困難事態対策法改正案について、「農家にとっては刑事罰も行政罰も同じ。困ったときに農家の皆さんに協力金でお願いするという法案とすべきであったと思うが、経緯をお伺いしたい」(山田勝彦衆院議員)との質問がありました。

 これに対し、金子部門長より「先ほど説明があったとおり、食料供給困難事態対策法案に対し、現場の皆さんの了承をいただき提出した修正案と全く同じ内容のものを改正案としたものである。部門会議でも了承いただき、同内容で登録させていただいたが、その後、刑事罰から行政罰に移行するだけでなく、全ての罰則をなくすべき、協力金を生産者にお支払いする仕組みを入れてほしいとのご意見があり、役員会で議論させていただいた。生産者と出荷販売業者、加工品製造業者との差別化が明確でない、生産者を支援し、犯罪者にしたくないという強い思いはありながら、食料システムの中での課題が顕在化している中、せめて行政罰として残していかなければならないのではないかという基本に戻らせていただいた。現場の先生方のご意見を聴いて、食料システム法案の審議が始まる中、修正案と同様の内容であれば、前進するのではないか、これが成立すれば、次の段階に進むことができるとの議論もあった。こうしたことから、この内容で提出させていただきたいという結論となった」との説明がありました。また、神谷裕副部門長より、各党との調整状況についての報告がありました。

 ローカルフード法案について、「ここまでくるのに5年かかった。地方のシードバンクがどんどんなくなっている状況。農研機構の事業が法律に位置付けられていない中、良い法案だとの評価もある。日に日に品種が減っている中、種を保存し活用していくため、一日も早い成立に向けてよろしくお願いしたい」(川田龍平参院議員)との発言がありました。

 3法案について、審査を行い、特段の異論がなく、「次の内閣」の審査にかけることとしました。