日本学術会議法案の衆院内閣委通過に関して声明
20025年5月9日
立憲民主党
政務調査会長 重徳和彦
「国の特別の機関」である日本学術会議の組織を改編し、「特殊法人」へ移行させることを柱とする新しい日本学術会議法案が本日午後の衆議院内閣委員会において採決され、立憲民主党は反対したが、賛成多数で可決された。
この法案には憲法が保障する「学問の自由」を毀損し、「学者の国会」として何より重要な「独立性」を阻害させる恐れなど極めて重大な懸念が幾つもあるうえ、審議の過程においても担当大臣の訂正に始まり、政府側が答弁を重ねる度に新たな疑問が生じるなど、本法案への疑念は膨らむ一方であった。このため我々が慎重審議を求めてきたにもかかわらず、当事者の懸念が払しょくされないまま採決に至ったことは甚だ遺憾と言わざるを得ない。
そもそも、今回の法改正の発端は、2020年に当時の菅義偉首相が会員候補6人の任命を拒否したことにある。それ以降、政府は「人事の秘密」を盾に任命拒否の理由を一切拒んだまま、学術会議の組織のあり方に問題をすり替えた。
その後、紆余曲折を経て提出された本法案は、日本学術会議が2021年に示したナショナル・アカデミーとしての5要件(①学術的に国を代表する機関としての地位、②そのための公的資格の付与、③国家財政支出による安定した財政基盤、④活動面での政府からの独立、⑤会員選考における自主性・独立性)全てを充足していない極めて不十分なものであった。
さらに、本法案には、学術会議の業務を監査し、活動計画に意見を述べる監事と評価委員会の新設が盛り込まれたが、いずれも首相が会員の学者以外から任命するほか、会員の選考にあたる組織も似た名称のものが複数存在するなど、屋上屋を架した複雑な仕組みで人事や会の運営に政府が関与する余地が幾重にも盛り込まれたものとなっている。
こうしたことから、当の学術会議はもとより、様々な学会や法曹界、さらには言論表現に関わる諸団体や、市民団体などが法案修正や撤回を求める声明を出しているにもかからず一顧だにされなかった。
本法案に対して日本学術会議は先月、法案が上記のナショナル・アカデミー5要件をすべて充足し、会長声明で示された5項目の懸念をすべて払拭したものとなるよう求める決議を採択した。この決議の内容がまったく反映されない本法案に我々は反対し、今後の国会審議においては、学術会議の独立性を確保するための抜本的な修正提案を行うことを含め、あらゆる取り組みを追求していきたい。
最後に、我々は先の大戦での反省と教訓に立って憲法に明記された「学問の自由」を守り、真に国民の福祉と科学の発展に資する日本学術会議となるよう、立法府として出来うる限りの努力を続けて行く所存であることを申し添える。
以上