衆院本会議で日本学術会議法案に対して、会派を代表して山としひろ衆院議員が反対討論を行いました。予定原稿は以下の通りです。
日本学術会議法案に対する反対討論
立憲民主党・無所属
山としひろ
立憲民主党の山としひろです。
会派を代表して、日本学術会議法案に反対の立場から討論を行います。
まず、会員任命拒否問題についてです。
事の発端は2020年10月、当時の菅義偉首相が、合理的な説明を行わないまま、学術会議の会員候補者6名の任命を拒否したことにあります。この問題は、日本学術会議の独立性とそれを担保する人事の自律性を侵害するものであり、その独立性と自律性を基礎づけている学問の自由を脅かし、また国民主権に由来する行政の公正・透明性の原則及び説明責任の原則に反する点で非常に大きな問題でした。にもかかわらず、今回の本法案の審議においても、政府からはなぜ任命を拒否したのか本会議や委員会で明確な答弁がなかったことは非常に遺憾です。
任命拒否の人事介入が行われるまでは、30年以上にわたり、学術会議が選考した候補者がそのまま会員として任命されてきました。学術会議の真の発展を目指した議論をするのであれば、任命拒否した6名を速やかに任命し、学術会議との信頼関係を再構築すべきです。
次に、日本学術会議の独立性についてです。
現行の日本学術会議法を廃止して新法を制定する理由について、「法人化することにより学術会議の独立性が高まる」という説明がされてきました。
しかし、任命拒否問題で学術会議の独立性を毀損した政府自身が、独立性を定める現行法に問題があるとして廃止を主張することは滑稽です。形式的に国の機関から切り離して法人化させたからといって、独立性が高まることはありません。
本法案によって内閣総理大臣の関与が強化されています。新法によって設立される法人は、内閣総理大臣が会員以外の者から任命する「監事」が業務一般を監視・監査し,内閣総理大臣に意見を提出する強大な権限を有し、監事の再任の妨げもありません。
また、評価委員会の委員も、内閣総理大臣が任命することとされ、中期的な活動計画について意見を述べるなど、政府が間接的にせよ運営全般に介入しうる仕組みとなっています。
会員選考については、現在の会員自身が次の会員の選考を行う「コ・オプテーション方式」が否定され、新会員の選考にあたっては特別な選考方法が採用されます。
学術会議会長が選考委員を任命する時は、内閣総理大臣が指定する有識者と協議しなければなりません。また、現在の会員の半数が継続して会員となり得るものの、3年後の改選で再任されることはありません。
すなわち、会員選考における継続性が遮断され、また、任命の過程で政府が排除したい学者についてフィルタリングが行われ、「任命拒否」と同じことが行われるおそれがあることを指摘しなければなりません。
参考人質疑で梶田隆章元学術会議会長からも、「活動面については、幾重にも監視、管理あるいは助言という形で意見を聞きながらの活動を求められるので、独立した活動ができるのか。また、会員選考については、新法人となる時に特別な選考方式を求めている点、かつ通常時も会員選定委員会が選考方針のみならず会員選考にまで意見を述べることができる点に懸念を持つ」と述べられました。
このように政府が「介入しようと思えばできる」仕組みがいくつも組み込まれており、介入したくてもできない」仕組みであるべきです。
次に、財政民主主義についてです。
政府は本法案の正当化のためにたびたび「財政民主主義」を答弁で持ち出していました。
財政民主主義とは、財政は国会の意思に基づいて行使しなければならないというのが一般的な理解ですが、「国がカネを出しているのだから、口を出すのは当然」と言わんばかりに、財政民主主義を振りかざすことがあってはなりません。また、中期的な活動計画や年度計画の策定を通じて、国費による予算措置が学術会議の活動を方向付ける手段になることが危惧されます。
最後に、本法案の提出に至るプロセスをみると、政府は学術会議に対する配慮が欠如していたことを厳しく指摘しなければなりません。
学術会議の会長経験者からは「75年あまりにわたって培われてきた学術に基づいて社会と政府に発信するという機能を弱体化させ、ひいては日本の学術の終わりの始まりとすることになりかねない」旨の声明が出され、学術会議や学問の自由を脅かしかねないと警鐘が鳴らされています。
学術会議のあり方を法律で定めるにあたっては、学問の自由に由来する独立性・自律性が保障されることが大前提であり、本法案はそれを満たしていないことを厳しく指摘し、反対の討論と致します。
20250513「日本学術会議法案」反対討論 山登志浩議員.pdf

