農林水産政策大綱(改訂)
1.基本的考え方
○わが国の農林水産業は、国民生活に必要不可欠な食料を安定的に供給するという極めて重要な役割を担っており、食料安全保障の基盤をなすものです。また、農林水産業は、その生産活動を通じて、国土・自然環境の保全、集落の維持・発展、地域文化の伝承等、多面にわたる機能を発揮しています。こうした重要な役割を担っている農林水産業の経営の持続的かつ安定的発展を通じ、食料安全保障の強化と多面的機能の発揮を図ることを基本として諸施策を展開します。
○食料自給率が4割を下回っている現状にあって、食料安全保障の確立は、喫緊の課題です。食料安全保障の確立には、その基盤となる農業者の健全かつ安定的な経営が大前提であり、安定した経営による多様な農業が広く展開されることが必要です。これを通じて全国民が享受する多面的機能が発揮されます。
このため、かつて実施された農業者戸別所得補償制度を礎(いしずえ)に、消費者・国民へ農産物を安定的に供給する基礎となる農地を維持するため、農地に着目した新たな直接支払制度を創設するとともに、主食用米の再生産を確保するスキームを整備すること等を通じ、わが国農業の中心である家族経営や集落営農、雇用就農の受け皿ともなる農業法人を積極的に支えます。併せて、鳥獣被害対策、二地域居住・農的関係人口の増加、地域資源の活用、地域の伝統的な食品産業の活性化、有機農業の振興、再生可能エネルギー資源の活用、貴重な農業人材である障がい者の活躍の促進等の施策を講ずることにより、農山村を再生・振興します。
○国民に対する食料の安定供給を確保するためには、農地の維持とともに、農業人材の確保が必要不可欠です。そのため、次の時代を担う農業者を幅広く育成・確保するため、「農業をやりたい」という人に就農準備から経営発展に至る各段階に応じたきめ細かな支援を強化・拡充します。
○現政権が講じてきた「新自由主義的な政策」から転換して、「農林水産業の競争力強化」への偏重を改め、農業経営の安定対策の構築・強化を図ります。農林水産業固有の特性やわが国の農山漁村社会の歴史に根ざした地域政策を経営安定対策と一体的に推進します。農協・漁協や自治体の振興を通じたコミュニティづくりや環境負荷低減を図る持続可能な農林水産業を推進します。
○わが国農業は、大規模専業農業から農外収入を得ながら小面積を耕作する小規模兼業農業まで、規模や農法、作物等、多種多様な農業が存在しています。多様な農業が複層的に存在することは、わが国農業に極めて重要で、規模拡大を進める農業者も、小規模兼業で経営する農業者も、ともに、わが国の農業を支える存在として重視します。このため、各種支援策において、一律に「規模拡大」を要件とすることは盛り込みません。規模拡大を進める農業者、小規模兼業農家など、多様な農業者の経営ニーズに即したきめ細かな支援策を講じていきます。
○農業生産に欠くことのできない重要な生産資材である種子を守ります。国民全体の財産である国産の種子の開発・普及を進め、安価で安定的に農業者に供給できる環境を整備します。
○肥料・飼料・燃油など生産資材の高騰対策の強化と、供給体制の整備・安定を図ります。
○規制改革推進会議や国家戦略特別区域諮問会議の活用に偏重してきた官邸主導の農政から脱却し、多種多様な農業者が共生する多様な農業のあり方を支援します。
○農業従事者の人権への適切な配慮等雇用環境の整備を図るとともに、農産物等の輸入に際して、農業従事者等の人権が尊重されるよう輸入相手国に求めます。
○2024(令和 6)年の食料・農業・農村基本法改正において、年次報告(食料・農業・農村白書)のうち、講じようとする施策を明らかにした文書の作成と国会提出が廃止されましたが、これを復活させます。
○この「農林水産政策大綱」を実効あるものとするため、従来の枠組みにとらわれず、必要かつ十分な予算額を確保します。