参院本会議で5月30日、「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」について代表質問が行われ、横沢たかのり参院議員が登壇しました。予定原稿は以下のとおりです。
「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」質疑(全文)
立憲民主・社民・無所属 横沢 高徳
立憲民主・社民・無所属の横沢高徳です。
ただいま議題となりました「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」について、会派を代表して、質問いたします。
「食べることは生きること」食料は人間の生命の維持に欠くことができないものであり、体をつくる栄養と共に、心の栄養にもなり、私たちの健康で充実した生活の基礎となる、「生きるチカラの源」です。
全ての国民が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できるようにすることは、政治の重要な役割です。
世界的な人口増加等による食料需要の増大、気候変動による生産減少など、国 内外で食料の安定供給が人類の課題となっております。
我が国、日本においては、ここ四半世紀で農業の担い手は 234 万人→116 万 人と半分に減り、農地面積は 487 万ヘクタール→430 万ヘクタールと、57 万ヘクタール減少、三重県一県分の面積の農地が消滅、国内生産基盤の弱体化に歯止めがかかりません。
「令和の米騒動」と言われる今、食料の安定供給に対する国民の不安と関心は さらに高まっています。
【昨今のコメ対策について】
まずは、国民の皆さまが特に関心を寄せている「政治とコメ」について、小泉 農林水産大臣に伺います。
今、メディアはこぞって備蓄米に注目していますが、そもそも日本の主食である「お米」、不作でもないのに備蓄米を無制限で放出しなければならなくなっている、この事実を真摯に受け止めるべきです。
これまでの「日本の農政のあり方」そのものが問われています。
小泉大臣は、お米の生産量は足りていると考えているのか、備蓄米を無制限で放出し終わった後、国民の皆さまへのお米の安定供給可能な生産量が確保できるのか、今後今回のような騒動は起きないと言えるのか、大臣に伺います。
家庭では、「お米が高くてなかなか手が出ない」「育ち盛りの子どもにお腹いっぱいお米を食べさせたいけど、高くてね」飲食店では、「お米が値上がりしたからと言って価格に転嫁できる状況ではないんだよ」生産者は、「米は高いけど、米をつくっている我々の収入はそこまで上がってない」
「どこが儲かっているのだか」
これが、国民の生活の現場の生の声です。
そんな中、江藤前大臣は「米は買ったことがない」「売るほどある」との発言で辞任されました。「5kg 2000 円」備蓄米を無制限で放出すると小泉大臣は公言されました。
昨年、改正された食料・農業・農村基本法 2 条5項に「食料システムの関係 者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない」とありますが、今回の「5kg 2000 円」は小泉大臣の独断で決まったようなものです。
今回のように、大臣の独断で価格が決められるのであれば、本法案の審議の前提が崩れているとも言えます。
小泉大臣の「5kg 2000 円」の独自価格決定と、本法律案の合理的な価格形成の整合性について大臣の分かりやすい答弁を求めます。
また、小泉大臣は、資材、肥料、燃料、機械代の高騰の中、生産費、流通コストを考慮した、合理的なお米の店頭価格は5kg いくらと考えているのか数字でお答え下さい。
【改正案提出の背景】
食料安全保障の確保では、国民への食料の安定的な供給が重要であり、食料の安定的な供給のためには、安定した生産が必要、安定した生産のためには、生産者の安定した所得の確保が必要です。
我が国の食料自給率は 38%、先進国では最下位、食料生産の持続可能性を確 保することは、最重要課題であります。
しかしながら、原材料価格の高止まりや円安、あらゆる物が高騰する中、コス トが価格に反映されず、生産者を取り巻く現状は厳しさを増しております。
改正案は、コストの負担を生産者に偏らせることなく、食料の安定供給を目指すべきとの声に応えて、提出に至ったものと理解しています。
そこで、あらためて改正案提出の背景は何であったのか確認させてください。
また、適正な価格形成の実現という目標に対して、食品等流通法の改正により対応することとした理由も併せて小泉大臣に伺います。
【価格形成】
次いで、再生産可能な価格形成について伺います。
昨年の基本法質疑の際、再生産可能な価格形成について考慮すべきではないかと、この場で質問したところ、当時の坂本農林水産大臣は、再生産可能な価格形成は生産者だけに着目したものであり、食料システム全体の関係者が納得する仕組みづくりが重要との認識を示されました。
食料の持続的な生産を確保するため、再生産可能な価格形成の必要性について、小泉大臣の見解を伺います。
消費者は、安心安全で安価な食料を求めています。
生産者は、安心安全な食料生産と高収益を求めています。
この相反する望みを叶えることは、今回の法改正により実現可能と考えているのか併せて小泉大臣に伺います。
【事業者の努力義務】
次いで、事業者の努力義務について伺います。
改正案では、飲食料品等事業者等に対し、二つの努力義務を課すこととしています。一つ目は、コストや価格などの取引条件を示して協議の申出があった場合に、誠実に協議に応ずるというものです。今回、法律に明記することで、協議の拒否や一方的な取引条件の変更などを防ぐとともに、決定過程の透明性向上につながるものと評価いたします。
ただし、改正案は、誠実に協議に応ずることを努力義務としているのであり、あくまでも取引条件は、取引当事者間で決定されます。
協議の内容によっては、これまでのように立場の弱い生産者側に、負担のしわ寄せがいく可能性も考えられます。
コスト割れの供給を阻止するための具体策をどのようにするか、小泉大臣の見解を伺います。
【商慣習の見直し】
二つ目の努力義務は、取引の相手方から、商慣習の見直しなどの提案がされた場合には、必要な検討及び協力を行うことです。
衆議院では、賞味期限の3分の1を経過した商品の納入を受け付けないという、いわゆる3分の1ルールのほか、発注から納入までの時間の緩和、納入負担の削減などが想定されるとの答弁がありました。
また、リードタイムの問題に関して、製パン業に対し一部の小売店から納品の前日に発注がされることで、見込みでパンを製造することもあり、商品が売れない場合には、余剰となるばかりか、丹精込めて作った製品を自らの手で廃棄しなければならず、心理的な負担、労力の負担は大きく、また食品ロスにもつながる、こうした商慣習は改める必要があります。
そこで、商慣習の見直しに係る判断基準を定める際の基本的な方針について、確認させていただきます。また、農林水産大臣は、ルールを守らない行動に対して指導・助言等を厳格に行うべきと考えますが、見解を伺います。
【判断基準】
衆議院では、事業者が努力義務を果たしているのか否か、判断基準について、議論がありました。
省令で定める判断基準については、事業者の講じる措置がどのような場合に著しく不十分と認められるのか、といったものだけでなく、取引における事業者の望ましい行為も併せて定めることが、法律の実効性確保につながるものと考えます。
江藤前大臣は、衆議院での質疑で、上限と下限を定めた取引の事例をすばらしいと評価されていましたが、どのように判断基準を定めようと考えているか、小泉 大臣、丁寧に答弁願います。
【指標作成団体】
改正案では、取引において、持続的な供給に要する費用について認識しにくい飲食料品等を農林水産大臣が省令で指定することとしており、具体的には「コメ」「野菜」「飲用牛乳」「豆腐・納豆」が候補とされています。この指定品目について、農林水産大臣が認定したコスト指標作成団体がコスト指標を作成することとしています。
そこで、指標作成団体の認定に至る手続とその際の留意事項について、政府の考えを伺います。また、農林水産大臣は、指標作成団体に対し必要な指導及び助言を行うものとされていますが、それらの具体的内容について併せて伺います。
【安定取引関係確立事業活動等】
改正案は、食品等事業者による事業活動の促進のための措置として、四つの事業活動計画の認定制度を設けようとしています。
一つ目は、産地の近くに一時加工施設等を整備し農林漁業者との安定的な取引を確立する活動、二つ目は、物流施設でパレット上に荷物を自動で積む機械を導入するなど流通の合理化を図る活動、三つ目は、飲食店等に油の酸化防止装置を導入して省エネや油の消費量を減らすなど環境負荷を低減する活動、四つ目は、有機栽培などの取組を表示する電子POPモニターを売り場に整備し、消費者選択に資する情報を発信する活動と、衆議院で説明がありました。
安定取引関係確立事業活動等については、農林漁業者の所得の向上につながることが重要と考えますが、どのように推進するのか伺います。また、その成果指標についても、所得の向上につながるように設定すべきと考えますが、併せて小泉大臣に見解を伺います。
(おわりに)
改正案は、いかにして消費者の理解を得て、関係者が納得する形で持続性のある価格形成につなげられるかが、最大のポイントと考えます。
理解はするけれど価格が高騰して購入を躊躇してしまっては意味がありません 。改正案は、取引の適正化と食品等事業者の事業活動の促進を図ることを目的としていますが、それらによって再生産可能な価格が実現できるのか、農業関係者の 多くは期待するとともに、懐疑的でもあります。
消費者は、「安心安全で安価な食料を入手したい」生産者は、「安心安全な食料生産と再生産可能な所得を確保したい 」この望みを叶えることが、政治に求められております。
価格は市場で、所得は政策での考えのもと、立憲民主党は、食料安全保障の視 点から、令和版「直接支払制度」を創設すること、すなわち消費者・国民へ食料を安定的に供給するための基礎となる農地の維持、安心して安定した生産が続けられるよう、新たな「食料確保・農地維持支払制度」を提案しています。
政府は、直接支払いを含む農業者への支援のあり方については、令和9年度に向けた新たな水田政策の在り方を検討していく中で、現場の実情を調査、検証し、議論を深めていくとしておりますので、委員会質疑で大いに議論されることを期待し、質問を終わります。
