参院本会議で6月4日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が審議入りし、森本真治議員が会派を代表して質問立ちました。予定原稿は以下の通りです。

「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」本会議質問

立憲民主・社民・無所属 森本 真治

 立憲民主・社民・無所属の森本真治です。会派を代表して、年金制度改正法案について質問致します。
 冒頭、法案に関連し、 障害年金の不支給判定の事案についてお尋ねします。
 障害年金の支給判定について、2024年度から日本年金機構の障害年金センターが恣意的な判定を行い始め、不支給決定の割合がそれまでと比べて倍増していると報じられました。
 その要因として、異動で就任した担当部署幹部の厳しい方針が影響したと関係者が証言しているとされています。
 障害年金を必要とする方にとって、支給が認定されるかどうかは、その生活に直結する重要事項であり、 判定が恣意的に行われているのであれば、看過できない事態です。
 まずは厚生労働大臣に、担当部署幹部が認定にあたり厳しい方針を指示したことが事実であるのか 、また指示が影響していると考えるのか お伺いします。
 既に厚生労働大臣は、 調査を指示していると伺っています 。 問題があったとすれば、なぜ 問題が生じるに至ったのか、その理由・経緯も含めて明らかにしていく必要がありますので、速やかに調査を終えて結果を公表していただきたい。
 しかしその調査は、全数調査でなくサンプルを抽出しての調査とのことです。抽出調査ではなく、全数調査を行うべきです。
 委員会での本法案の審議にも当然関わりますので、速やかな公表を求めます。本件についての見解、全数調査の必要性、そして調査の公表時期の見通しについて、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 それでは、法案の質疑に入ります。
 衆議院に提出された政府案は 、目玉となる年金底上げ策が抜け落ちており、「あんこのないアンパン」であると指摘され 、立憲民主党は、抜け落ちた 「あんこ」である年金底上げ策を入れる修正を提案してきました。
 そして、衆議院において、立憲民主党の提案が受け入れられ、修正が行われた上で、参議院に本法案が送付されました。
 後ほど述べるように、本法案については 様々な異例の対応があったところですが 、まずは 、衆議院で政府案の修正が行われたことについて 、総理の受け止めをお伺いします。

 今回の改正は、5年ごとに公的年金制度の財政見通しを確認する財政検証が昨年7月に行われその結果をベースとした内容が盛り込まれています。
 令和6年財政検証では、このまま何もしなければ、2057年度までに、基礎年金の給付水準が3割目減りしてしまうという結果が示されました。
 これに対して、財政検証と併せて行われたオプション試算では、「被用者保険の適用拡大被用者保険の適用拡大」や、「マクロ経済スライドの調整期間の一致」などを実施することにより、給付水準の目減りを抑えられることが示され、この二つが今回改正の目玉であると報じられていました。
 しかし、政府が提出した法案では、「被用者保険の適用拡大被用者保険の適用拡大」」などが盛り込まれた一方、目玉の一つである「マクロ経済スライドの調整期間の一致」は盛り込まれず、その結果、基礎年金の目減り幅は、3割礎年金の目減り幅は、3割からから2割5分に抑えられるにとどまる程度でした。
 今回の修正は、次の財政検証の結果において、なお基礎年金の目減りが大きい見通しである場合に、政府案に盛り込まれなかった「マクロ経済スライドの調整期間の一致」いわゆる年金底上げ策を実施するというということを明記したものです。
 今回の修正は、基礎年金の目減りの抑制に大きな効果があると考えておりますが、その効果について政府はどのように認識しているのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 政府におかれましても、当初は今回の改正で年金底上げ策の実施を盛り込むの実施を盛り込むことも検討していたようですが、審議会の最終的な取りまとめ文書では、昨年12月に出された自民党の提言と同じ文言を用いて、年金底上げ策は、「今後の経済が好調に推移しない場合に発動されうる備えとして位置付けられるものもの」とされました。
 審議会の取りまとめ文書に特定の政党の文言をそのまま盛り込むのはいかがなものかと思いますが、重要なことは、自民党自民党がこの提言を出した時点では、経済状況によるとしながらも、年金底上げ策について必要性を認めていたという事実です。
 なお、公明党も、昨年、昨年12月に出した提言の中で、年金底上げ策年に「取り組むこと」を明記しています。
 それにもかかわらず、審議会取りまとめ後、与党審査が難航して、国会への法案提出期限を過ぎても重要広範議案が提出されないという異常事態となり、期限から2か月遅れで法案が提出されたかと思ったら、今度は年金底上げ策がが法案から外されているという状況でしたした。なぜ、このような事態となったのか、その経緯と見解について総理に答弁を求めます。
 この間、総理は、法案の早期提出に向けて自民党に指示を出した、厚生労働省に調整を進めさせている旨の答弁を繰り返していました。
 昨年12月の自民党の提言、あるいは政府の当初案で一定の必要性を認めておきながら、今回改正の目玉とも言われていた年金底上げ策について、どのような経緯や理由があって法案から外すに至ったのか、総理総理から、明確で具体的な答弁を求めます。
 このように、通常ではあり得ないような経緯があり、本来、政府・与党にもっと厳しい態度で臨むべきである、との意見もとの意見もあろうかと思います。
 しかし、立憲民主党は、当初から、国民生活に直結する年金制度改正案を政争の具にす法案を政争の具にすべきではない、と主張してきました。
 政府の法案提出が遅れ、国会の会期末までもう1か月ほどしか残っていませんでしたが、なんとしても年金底上げ策を今回の改正に盛り込むべく、立憲民主党は修正案を作成し、与党に提示しました。
 それに対して、最終的に、与党が修正に応じたことは、率直に評価したいと思いますし、同時に、「政争の具にしない」という我々の強い思いがもたらした結果であると言えると思います。

 このような思いの詰まった今回の修正の中身は、多くの方々の年金を底上げしようとするものでる。
 しかし、残念ながら、そのことが国民のみなさんにうまく伝わっておっておらず、一部の報道やSNSなどによって、あるいは制度の複雑さなどによって、十分に国民の皆さんにご理解いただけていないとも認識しています。
 年金制度を正しく理解してもらうための周知・広報は、一義的には政府の責任ですが、我々国会議員も、多くの方々に理解してもらうために尽力すべきであると考えます。

 例えば、年金底上げ策は、「厚生年金の積立金を国民年金に流用するものだ」との誤解がとの誤解があります。
 年金底上げ策は、厚生年金の積立金を、厚生年金の方にも国民年金だけの方にも給付される「基礎年金」の給付に活用するものですが、実は現行制度でも、厚生年金の積立金から「基基礎年金礎年金」」への活用は行われています。
 さらに、今後今後100年間で見ると、基礎年金の受給者の9割以上は厚生年金の方や、今後の適用拡大で厚生年金に加入する見込みの方であり、自営業の方や無職の方といったた国民年金だけの方は1割以下となる見込みです。
 このように、活用される積立金のほとんどは厚生年金の方に使われることになるので、年金底上げ策金は「厚生年金の積立金の流用」には全く当たらないということを、国民のみなさんに理解していただくことが重要です。
 当初年金底上げ策を検討していた政府の立場からも、「厚生年金の積立金の流用」には当たらないのだという認識でよろしいですか、またその理由を明確に説明していただきたいと思いますが、総理の答弁を求めます。

 また、「年金底上げ策で、恩恵を受けるのは氷河期世代だけで、それ以外の世代にはマイナスになるのではないか」という心配をされる方もいらっしゃるようです。しかし、実際に試算してみると、年金底上げ策によって、就職氷河期世代やそれより若い世代の方々に加え、60代の方々の一部も含めた幅広い世代において、年金受給額が増えるとの結果が出ています。
 年金底上げ策を実施することによって、どのような世代の人たちに年金受給額が増加の影響があるのか、政府の認識について、厚生労働大臣にお伺いします。

 年金底上げ策を実施すると、新たに国庫負担が増えてしまう、との指摘もあります。しかし、厚生労働省の試算によると、2024年度の基礎年金給付に係る国庫負担は13.5兆兆円、追加負担が2兆円規模に達すると言われている2052年度の国庫負担は13.4兆円、2024年度とほぼ同額です。
 つまり、本当は、「国庫負担が増える」のではなく、年金底上げ策年により「現状の国庫負担水準を維持して」給付水準を確保するということなのです。
  報道では、年金底上げ策により2兆円もの国庫負担が追加で生じる、という論調で報じられてきましたが、丁寧に説明すれば、そうではないことが分かるはずです。
 国民のみなさんに正しく理解してもらうため、政府には、この国庫負担について正確に明してもらわなくてはなりません。
 年金底上げ策を実施した場合の2052年度の基礎年金給付に係る国庫負担の見込額は、2024年度の国庫負担額と同程度であり、追加の負担が生じることはないと認識しますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 一方、年金底上げ策により、一部の方々については、年金受給額が下がってしまうのも事実です。これに対しては、衆議院での修正によって、年金額が下がる影響を緩和するために必要な措置を講ずることが明記されています。
 実際に、年金底上げ策の実施を確定させるのは、5年後の次期改正とのタイミングとなりますが、年金底上げ策実施の際には、そうした緩和措置についても併せて実施することとなります。
  政府においては、修正で盛り込まれた規定に基づき、年金底上げ策を実施する場合の緩和措置の内容について、誠実に議論し、十分な措置を確実に実施することを約束していただきたいと思いますが、総理からの答弁を求めます。

 以上、衆議院での修正で盛り込まれた年金底上げ策について述べてきましたが、そもそも、年金の給付水準は、社会経済状況によって変動するものです。
  したがって、将来の年金財政の見通しを示す財政検証では、出生率、賃金上昇率などの将来推計を行って年金給付水準を計算していますが、その前提とする数値が楽観的すぎるのではないか、ということが指摘されています。
 例えば、合計特殊出生率について、令和6年財政検証では、将来的に1.36となる前提ですが、、2023年の実績は過去最低の1.20でありで、2024年については民間シンクタンクの試算では更に下回る1.15となる見込みとされています。
また、実質賃金上昇率については、令和6年財政検証0.5%となる前提ですが、賃上げ傾向にあると言われている近年でさえ、物価高の影響もあり、上昇どころか、3年連続マイナスが続いている状況です。
 前提となる社会経済状況データの推計と実績の乖離について、厚生労働大臣の見解を伺います。

 年金制度については、今回は改正に至らず、引き続き検討が求められる大きな課題も残されています。
 例えば、法案に検討規定が置かれているように、事業所への被用者保険の適用拡大の進め方、現在60歳までとなっている基礎年金の拠出期間を延長することの是非、あるいは、第3号被保険者の在り方の問題など、いずれも重要な課題です。
 このような課題 を含め、年金制度は不断の改革が必要です。5年後の改正が近づいてから検討を始めるのではなく、速やかに与野党を超えた議論をスタートすべきです。超党派の協議体の設置を提案したいと思います。年金制度の残された課題に対しての今後の取組方針と超党派での協議体の設置について、総理の答弁を求めます。

 年金制度について、国民の信頼が揺らいでいるのではないか、私自身も認識しています。今回の改正は改革の一里塚。立憲民主党は公的年金制度が国民生活を守るための制度であり続けるために、あらゆる努力を惜しまないことをお誓い申し上げて、私の質疑を終わりま質疑を終わります。

【参院本会議】年金制度改正法案質問原稿 森本真治議員.pdf

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