参院本会議で6月6日、「環境影響評価法の一部を改正する法律案」が審議入りし、川田龍平議員が会派を代表して質問立ちました。予定原稿は以下の通りです。
立憲民主・社民・無所属の川田龍平です。
ただいま議題となりました「環境影響評価法の一部を改正する法律案」について、会派を代表し、質問いたします。
【米軍横田基地におけるPFAS汚染水漏出】
冒頭、在日米軍横田基地で発生したPFAS汚染水の漏出について、防衛大臣及び環境大臣に伺います。
1.本件について、米軍は本年4月30日に報告書を公表しましたが、報道によれば、米側は当初非公表とする意向であり、日本政府もそれに従ったとあります。これが事実だとすると由々しき事態です。昨年6月には日本政府も当然事案について把握していたと思われますが、政府は国民に対して、漏出事故があった旨を伝える活動等は行ったのでしょうか。事故発生から今日までの経緯について、事案を把握した時期、政府がとってきた対応も含めて、防衛大臣、環境大臣に説明を求めます。
2.今回の在日米軍基地からの漏出事故に限らず、政府のPFAS対応については、情報公開と予防原則がないがしろにされており、不信感が募ります。PFASの食品健康影響評価についても、非公開会合において大事な議論が進められました。石破総理は本年3月28日の参議院予算委員会において、私の「PFASの水質基準はもう一度厳格に、公開の場で議論するべきだ」という質問に対し「公開ということが大事であって、包み隠すことなくいろんな議論を公開していく、科学的見地に基づいて厳正に判断されるために政府として努力する」旨答弁しています。PFASに係る水質基準を決める議論や、漏出等の事故については、国民に分かりやすいように公開の場で情報発信していくべきであると考えますが、環境大臣に認識を伺います。
3.加えて、同報告書では在日米軍のPCBを含む変圧器が、米側で定められていた手続きによらず処分されていた件についても言及されていたとの報道もあります。PFAS・PCB等の問題は水質と土壌汚染に関わるものであり、規定違反の処理が行われていたというのは、環境省としても看過できないものと考えますが、環境大臣の認識を伺います。
【アセス法改正案導入】
環境影響評価制度(環境アセス制度)について伺います。環境アセスは、開発と環境保全の二項対立から脱却し、持続可能で環境に調和した社会へ移行するための、事業者と社会とのコミュニケーションツールとして有効であると考えます。しかし、普天間飛行場代替施設建設事業、リニア中央新幹線事業、神宮外苑再開発事業等における住民との対立、さらには、近年各地で発生している再エネ・トラブル等の状況を見ていると、制度が十分に機能しているとは言えず、多くの課題を抱えています。
(環境アセス制度に対する環境大臣の認識)
4.人類が気候変動、生物多様性の損失、汚染という3つの危機に直面し、その克服が最重要課題となっている中、それぞれの危機への対策においては、トレードオフを回避・最小化し、シナジーをもたらすことが求められています。こうした時代の要請を背景に、環境アセス制度の重要性がより一層高まるとともに、制度の在り方を時代に即したものとしていくべきと考えますが、環境アセス制度の意義について環境大臣の認識を伺います。
【法律案関連】
本法律案については、制度改善の第一歩として一定程度評価いたしますが、制度運用に懸念や課題があるため、以下質問いたします。
(手続が簡略化される事業種の範囲)
5.手続が簡略化される建替事業の事業種について、環境大臣に伺います。
本法律案は、既存工作物と位置や規模が大きく変わらない建替事業について、配慮書の記載事項を一部簡略化するものでありますが、中央環境審議会では、手続件数が増加傾向にあり、今後更なる導入拡大が期待される陸上風力発電を主眼に、制度検討が行われていました。
しかし、提出された法律案では、対象となる事業種を、法アセスの対象となる事業種のうち、公有水面の埋立て及び干拓を除く全ての事業種としているため、風力発電以外にも対象が拡大されることに対し、原子力発電所や火力発電所の建替手続を簡略化するものではないかと懸念する声も上がっています。
対象事業種を拡大した理由及び、風力発電以外の事業における手続の簡略化について十分な検討はなされたのか、環境配慮を確保する上での問題は生じないのか伺います。
(建替事業において求められる環境配慮の内容)
6.次に、建替事業において求められる環境配慮の内容について、環境大臣に伺います。
建替事業においては、環境アセス手続の効率化と同時に、環境保全の観点から事業特性を踏まえた適正な環境配慮の確保が不可欠です。本法律案では、配慮書の記載事項について、事業実施想定区域の周囲の概況等の記載を不要とする代わりに、建替事業に係る環境配慮の内容を記載することとしていますが、具体的に「環境配慮の内容」として何を求めていくのか伺います。
7.その際、既存事業が実施されている現状からの改善、非悪化のみをもって環境配慮とするのでは不十分です。あくまで既存事業を実施する前の環境を基準に、事業者は環境影響の回避、低減に努めるべきであり、それを担保するためには、既存事業による影響をどのように捉え、建替事業による影響をどのように評価すべきかを国が整理し、事業者に対し明確に示していくことが、環境配慮の確保及び手続の円滑化の両面から必要と考えます。今後の対応について伺います。
(環境アセスを実施していない建替事業における環境配慮の確保)
8.環境アセスを実施していない建替事業における環境配慮の確保について、環境大臣に伺います。
本法律案では、過去に環境アセスを実施しているかどうかにかかわらず、位置や規模が大きく変わらない建替事業を手続見直しの対象とし、事業実施想定区域の選定に係る周囲の概況調査等を不要としています。
しかし、法アセスの対象となる前に設置された風力や太陽光発電事業等、環境アセスが実施されていない事業においては、周囲の概況や既存事業による環境影響の状況が確実に把握されているとは限りません。
こうした建替事業については、周囲の概況調査や環境アセス手続における「事後調査」に相当する調査を求めるなど、手続を実施した事業とは区別して、必要となる環境配慮の内容を示していくことが必要であると考えますが、環境配慮の確保に向けた方策を伺います。
(アセス図書の継続公開の義務化に向けた検討)
9.次に、アセス図書の継続公開の義務化について、文部科学大臣及び環境大臣に伺います。
本法律案では、アセス図書の継続公開に事業者の同意を必要としています。これは、アセス図書が著作権法の著作物に該当するためと承知しています。
しかし、アセス図書が公的手続を経て作成された公共性の高い文書であって、科学的視点に立脚し作成された成果物でもあることに鑑みると、国民的情報資産として公開を義務化することの国民的利益は大きいと考えます。本法律案成立後、その施行状況を検証し、場合によってはアセス図書を著作権法の適用除外とすることの検討も必要と考えます。
まず、なぜアセス図書を著作権法の適用除外とすることが難しいのかについて、文部科学大臣に伺います。
10.また、アセス図書の継続公開の義務化について、環境大臣の見解を伺います。
【戦略的環境影響評価の導入】
11.次に、戦略的環境影響評価の導入について、環境大臣に伺います。
個別事業の計画・実施に枠組みを与える上位の計画や政策の検討段階を対象とした「戦略的環境影響評価(SEA)」の制度化は、日本において長年の課題となっており、環境影響評価法制定時の附帯決議、前回改正時の衆議院の附帯決議において政府に対し検討を要請しています。
しかし、SEAは法制化されておらず、本格的な検討も長年実施されていません。衆議院環境委員会の参考人質疑では、4人中3人の参考人がSEAの必要性について言及しています。
日本においても、戦略的環境影響評価を制度化すべきであり、導入に向けた本格的な議論を早急に開始する必要があると考えますが、見解を伺います。
【早期の制度見直しの必要性】
12.次に、環境アセス制度の早期見直しの必要性について、環境大臣に伺います。
本法律案の附則では、環境アセス手続には5年から6年を要すことから、改正後の規定に関する検討時期を法施行後10年としています。しかし、中央環境審議会における議論では、見直し期間が10年では、変化の早い社会状況に制度が付いていけなくなると指摘されています。また、衆議院環境委員会の参考人質疑でも、3年又は5年程度での見直しが適当と述べられました。
次回の制度見直しが2035年になってしまうと、ネット・ゼロ実現に向け、地域の資源を生かした再エネ中心の地域循環型社会環境への転換が求められる中、アセスメント制度が現行のままでは、気候変動や生物多様性関連の目標達成の足かせとなることも懸念されます。
中央環境審議会で整理された論点について、早急に検討を開始し、必要な法改正は10年を待たずに行うべきです。時代に即した制度としていくには、不断の見直しが必要です。見直し期間を5年とすることについて答弁を求めます。
【オーフス条約】
13.次に、オーフス条約について、外務大臣及び環境大臣に伺います。
「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、及び司法へのアクセスに関する条約」、いわゆる「オーフス条約」は、1998年に採択され、2001年に発効していますが、日本はいまだに批准していません。私は同条約を批准できていないことが、環境アセス制度が十分に機能していない問題の根底にあると考えます。
環境問題がより適切に解決されるためには、市民の積極的な参加が不可欠です。地域の理解を得られなければ、再エネの導入拡大は進みません。このままでは、気候危機や生物多様性の損失を将来世代に押し付けることになります。オーフス条約を早期に批准し、環境影響評価法を始めとする必要な国内法の整備を進める必要があると考えます。
なぜいまだに日本は同条約を批准していないのか、外務大臣、その理由をお答えください。
14.また、環境大臣に、オーフス条約に対する認識、さらに、内閣における環境行政の責任者である環境大臣として条約の批准に向けて、政府内の議論を牽引していくおつもりはないのか伺います。
15.オーフス条約に関連して、環境政策に係る多様な市民参画プロセスの担保について、環境大臣に伺います。
政府が、パブリックコメントの「大量投稿」を問題視し、投稿の制限などの対策を検討していることが報じられています。AIを使った機械的な投稿への対応は必要ですが、ナショナルミニマムとしてのパブリックコメントの投稿規制を検討するのではなく、意味のある市民参加の機会及びその結果の政策への反映こそ検討すべきであります。今後のパブリックコメントへの対応及び多様な市民参画の担保について、環境大臣の見解を伺います。
【結び】
立憲民主党は、省エネ・再エネによる地域分散型の自然エネルギー社会へ、エネルギー転換で地方から日本を元気にするとともに、未来世代に責任を持つ政治、未来世代に負担を先送りしない環境政策を実現することをお約束します。その第一歩として、環境アセス制度がきちんと機能するよう、仕組みや運用を改善していくことを強く求め、私の質問を終わります。
