立憲民主党は8月19日、農林水産部門会議(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を国会内で開催。米国の関税措置に係る日米交渉状況について農水省及び関係省庁より、豪雨・渇水・高温被害対策等について農水省よりヒアリングを行いました。また、米価高騰の要因と対応の検証及び今後の方向性について農水省よりヒアリングを行いました。(司会:野間健農林水産部門長代理・衆院議員)
冒頭、金子部門長は「私たちに休みはないが、お盆の間、議員会館の中にほとんど人がいないという状況であった。お盆が明け、皆さんが大切な会議に参集いただき、大切な課題についてしっかりと議論するという強い思いを持っていただいていることに心からお礼を申し上げたい。農水省、内閣官房、外務省の皆さん、ありがとうございます。日米交渉の話、報道等でみていると率直にいらつくこともある。われわれはしっかりとできる限りの情報を得ていきたい。また、前回、8月1日の部門会議では渇水・高温障害について議論したが、その後、豪雨災害に見舞われ、大変な状況である。これらをトータルした形で、気候変動にどのように対応していくか、ヒアリングをさせていただく。米価高騰の要因と対応の検証について、しっかりと議論していきたい」とあいさつしました。
■米国の関税措置に係る日米交渉状況についてヒアリング
米国の関税措置に係る日米交渉状況について、農水省より説明を聴取しました。農水省の説明は、概略、以下のとおりです。
「相互関税について、追加関税25%と言われていたところ、15%で合意がなされた。7日に、現地で赤澤大臣が米国側と協議した結果、大統領令はそのような形になっていないが、MFN税率が15%以上の品目には追加関税は課されず、15%未満の品目については15%となるという整理で米国側と調整がとれた。7日以降に徴収された相互関税のうち、日米合意を上回る部分については、7日に遡って払い戻すということについても合意がなされていると理解している。
前回の部門会議で階猛議員より資料のご依頼があったので、『対米輸出上位の農林水産物・食品品目の関税動向』について用意した。米国向け輸出額の大きい品目の多くで対米輸出関税が低関税から15%に増加する。日本酒を含むアルコール飲料については、既存の輸入関税率は3セント/ℓであったところ4月2日以降、3セント/ℓに10%の関税が加えられていた。これが、今回の合意を受けて15%になる。重量税の取扱いについては、米国大統領令におけるEUの記載によれば、各貨物の単位当たりの価額から重量税を従価税換算した上で15%以上か未満かを判断されることとなる見込み。牛肉の枠内税率は4.4セント/㎏のところ、15%になるのではないか。牛肉の枠外税率は26.4%のままと理解している。
これらのことについて、影響を受ける事業者があるので、丁寧に影響を分析した上で説明をしっかりしていきたい。大臣からもアナウンスがあったが、22日に全国説明会を農水省の講堂で開催し、経産省、内閣官房とも合同で全国各地に出かけて行き、説明したい」
<日本酒の関税率増加は輸出に大打撃>
参加議員から「日本酒の関税について、これまでは価額が1ℓ当たり10ドルの日本酒であれば従価税換算で0.3%であったところ、15%になるということは、ものすごく上がることになる。輸出に大打撃がある、という考えでよいか」(階衆院議員)との質問がありました。
これに対し、農水省より「ご理解のとおり。従価税換算で計算すると15%より低い税率が課されているが、一律で15%に上がる。輸出への影響は一定程度あるのではないかと思っている。まずは、その影響を含め、しっかりと情報収集、分析をして、何が我々としてできるのか、必要な対応に万全を期してまいりたい」との回答がありました。
<大統領令の訂正により関税率が改善された農林水産物・食品品目>
参加議員から「大統領令が最初、間違っていたということだが、訂正したことで、よりましになった品目は『ソース混合調味料』くらいと思う。そうした理解でよいか」(階猛議員)との質問がありました。
農林水産省より「牛肉について、26.4%がプラス15%になったとすれば41.4%であったところ、15%を超えているため、26.4%と関税率が変わらないこととなった。牛肉の枠外税率について、大統領令が直されることによる影響は大きいと思っている」との回答がありました。
<関税率訂正の遡及効の内容 機会損失への対応>
「関税率15%が本来正しい姿で、遡及されて戻されるという話であったが、誰から誰に戻されるのか。関税率15%であるものが、今、20数%であるため消費者が敬遠して買わなかったということであれば、機会損失に何か手当てするということは全く別次元。このことについてもう少し詳しく説明されたい」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「遡及効の取扱いについては、大統領令が出され、どういう形で払い戻しがあるのかについて、しっかりと把握していく。具体の払い戻しの方法を把握しないといけないが、基本的には関税を払った者に対して、多く払っていた分が払い戻されることと思う。それがアメリカ側の輸入業者なのか、日本側の輸出業者なのか、関税を払った者に還付される。機会損失については、輸出事業者も輸出のタイミングを待っているのではないか。できるだけ早く大統領令によって15%に戻され、機会損失が減るように。そういうところも含め、細かく影響を分析して、輸出を滞らないよう、しっかりやっていきたい」との説明がありました。
<影響を受ける輸出業者への対応>
「もともと無茶苦茶な話。どこまでちゃんとやってくれるのか。おそらく日本の輸出業者にとっては、マイナスでしかないと思う。石破総理が影響を受ける産業に対して、何等か必要だと言っている。具体的な絵姿はどうなっているのか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農水省より「具体の詳細等について、形として説明できるものはないが、今、15%よりも高い関税が課せられているためどういう影響があるのか、これから輸出していくに当たって15%の関税がどういう影響を及ぼすのかということをしっかりと聞き取り、分析し、今後の支援に役立てていきたい」との回答がありました。
これを受け、参加議員から「そもそも低かった関税が15%になってしまったところと15%よりもさらに高くなってしまった部分の二段階の支援をお願いしたい」(近藤和也衆院議員)との要望がありました。
<遡及の時期 対米関税交渉に係る基本方針>
参加議員から「(1)8月7日に遡及するとの説明であったが、8月1日でない理由は何か。(2)関税について、日本外交としてどういう主張をアメリカにしていくのか、対米交渉の方針は、どこで、どういう形で議論されているのか。甘んじて受け入れるということで終わりなのか」(西村智奈美衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「(1)遡及効については米国時間8月7日深夜からプラス15%になっているため」との回答がありました。
外務省から「(2)対米外交でどう主張していくのかというやり方と政策的な考え方の問題意識からご質問いただいたと理解している。アメリカにたしてどういうふうにアプローチしていくのかということについて、大統領令の修正も踏まえ、言わなければならないことはしっかりと言っていくということは、ずっとやってきている。むやみやたらなチャネルで拡大していくよりは、今まで交渉してきた相手がいるので、そこにしっかり打ち込んでいくことが大事。そこは、赤澤大臣以下、繰り返し強く求めてきている。関税の問題を超えた対米外交となると、戦後培ってきた日米の安全保障面を含めた同盟関係は事実としてかつてなく強くなってきているということは、ここ数年間、日本政府から発信している。2月の石破総理の訪米は他国と比べても早いタイミング。日米同盟としてのしっかりとしてメッセージを出せたと考えている。今後は、首脳レベル、総理以下でとしか申し上げられないかなと思うが、ご指摘の点は外務省に持ち帰って、報告し、対応したい」との回答がありました。
これに対し、参加議員から「報告するまでもなく、政府の中で、甘んじてこの税率を受け入れ、今後もこのままやるということなのか、それとも、これ以上押し込まれないため、主張をしていこうということとか、そうした方針は、今、あってしかるべきと思う。それはない、ということだ。方針を検討するのは、外務省か、内閣官房か」(西村智奈美衆院議員)との質問がありました。
外務省から「最初のご指摘について、もっと広く、対米外交をどうするのかということかと思って回答したところ。他の品目も含め、さらに関税措置を打たれる可能性は、現実としてある。例えば、半導体や医薬品など、できるだけ、日本に対する追加関税を課されないように働きかけをすることはもちろんのこと。相互関税15%がさらに上げられることがありうるのかについて、トランプ政権がやることについて、100%こうだと申し上げることは難しいが、現在、さらに上に行くとは考えていない」との回答がありました。
これに対し、参加議員からは「見通しを聞いているのではなく、日本政府として今後どういう主張をしていくのかについて聞きたかった。『ない』ということで、残念である」(西村衆院議員)との指摘がありました。
<日米合意の内容が明示的に確定する時期 合意をめぐる経緯の総括 米国との関税交渉に臨む基本姿勢>
参加議員から「農水省の説明の語尾は『ではないか』とか『と理解している』というもの。予算委員会では総理は『情報は出せないのは当たり前』みたいな話もしておきながら、客観的にみていると、しっかりと詰め切れていないから、改めてアメリカに行って確認をしてきて、こういう状態になったというのが経緯であると、普通の国民には見える。(1)まず確認したいのは、『ではないか』『理解している』という説明が、いつ、『そうなります』という言い方に変わるのか。大統領令が出るまで、日本政府はアメリカ政府との交渉を経ても、『ではないか』『と理解している』という説明しか国民にできないのか。確認したい。(2)衆参の予算委員会が終わった後、赤澤大臣が訪米し、長くお話をして、ようやく慌てて修正というか確認というか、作業がなされて分かった。これは、前から見通せたことなのか。衆参予算委員会の前、党本部や農林水産部会で説明したときには予期しなかったことが起こってあのような対応したのか。予定調和の中で、あのタイミングでアメリカに行って話をしてくるということが、段取りが付いていたことなのか。国会で説明したことと違う状況が生まれて、あのような対応をしなければならなかったのであれば、外交交渉に難しさはわかるが、見通しが甘かったと総括しているのか。(3)新たな関税を課されないように努力するのは当然の話。総理が予算委員会で言ったウィンウィンの状況では全くないのであって、単負担が増えただけ、というのが日本国内での一般的な受け止めと思う。大変しんどいことを吹っ掛けられて、それがある程度で収まったという意味ではよいかもしれないが、決して、以前の状況よりもよい状況にあるわけではない。今回合意してしまった関税率を元に戻すための努力をするのが大前提にあるのか。それとも、それがないのか。基本姿勢を確認したい」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。
外務省より「(1)大統領令がいつ修正されるのかについて、現時点で何月何日と申し上げることは難しいことをご理解いただければ幸い。(2)赤澤大臣の訪米、われわれも同行したが、見通しが甘かったのではないかとのご批判があろうかと思うが、米側の事務的な中で起こることについて、事前に分かるかどうか。繰り返し、合意内容を確認しながらやってきた。赤澤大臣も『遺憾』という言葉を使っており、私どもも思うところがあり、それについて、一刻も早く直していただくべく、調整しなければということで、赤澤大臣に訪米していただき、協議をした上で、発表したところ。予定調和ということではないと思う。日々、いろいろなことが起こる中でできるかぎり対応していただいているつもり。(3)ご指摘のとおり。15%で満足するというものではない。追加関税が課され続けている状況がある。しっかり働きかけをしていきたいと考えている」との回答がありました。
以上を踏まえ、参加議員から、「ご苦労がたくさんあることはよく分かる。2点目についての説明は、アメリカの事務方が、そのようなことをするとは分からなかったからだと思う。その水準の人たちと話をしている中、政府は、根拠も示さずに『私たちが話を付けてきたから大丈夫だ、大丈夫だ』と言って、政府を信用してもらうしかないと言い続けてきた。しかし、実態は今言われたようなこと。もう少し、リスクを含め、情報開示、きちんとした説明が必要ということを、8月初頭の顛末の中で、政府は意識すべき」(渡辺創衆院議員)との指摘がありました。
■豪雨被害対策等についてヒアリング
続いて、農林水産省から、令和7年8月6日からの大雨に関する農林水産の被害状況について、ヒアリングを行いました。農林水産省の説明は、概略、以下のとおりです。
「今般の大雨は、日本付近に停滞した前線上の低気圧に向かって、日本の南、南シナ海から暖かく湿った空気が流れ込んだことで、広い範囲で大気の状態が非常に不安定となり、24時間降水量が観測史上一位を更新する記録的大雨となった。
昨日(令和7年8月18日)時点の被害状況について、全国22府県から被害報告を取りまとめた。主な被害状況として、農地3,133か所、水路、ため池などの農業用施設1,968か所、畜産用施設6カ所、農作物の被害については、イネの倒伏、トマト、イチゴなどの冠水被害。被害の規模は不明。
林野関係については、林地荒廃104カ所、林道施設等569か所。
水産関係については、雨で流木が流れ込み、埋塞している漁港が18港、漁船13隻。
MAFF-SATとして、農林水産省の職員をこれまで166名、被災地に派遣し、被害状況の調査、応急復旧、ポンプの貸し出し、設置などの支援を行っている。
卸売市場は3カ所で浸水被害が起きており、一部システムが故障している。石川県の金沢競馬場全体で浸水、再開は調整中。
特別警報が発令された市町村について防災重点農業用ため池340カ所全て点検したが、異常は認められなかった。それ以外の地域について、防災重点ため池9カ所が被災しているが、人的被害はない。
ダムについては被害なし。
農業集落排水施設について18施設のうち6施設について異常が確認されたが、仮復旧を行い、再開している。
営農飲雑用水施設については異常がないことを確認した。
昨日、総理より、農地、水路、農道、林道に係る災害復旧については、激甚災害の指定見込みと公表されたところ。これにより、激甚災害(本甚)に指定された場合、過去5年間の実績の平均になるが、農地の復旧は国庫補助率が86%から96%、農業用施設の場合96%から99%となる見込み。災害関連資金の活用について、自然災害が生じた場合、長期低利の資金の活用ができるが、これに加え、激甚災害(本甚)に指定された場合、災害関連資金の貸付当初5カ年実質無利子化の支援がなされる。
引き続き、被害状況を県、市町村と連携しながらしっかり把握し、地元の関係者の皆様と相談しながら、必要な支援を提供してまいりたい」
<改良復旧への支援が必要>
参加議員から「激甚災害に指定された場合、原状復旧が大前提。実際は、二度とこうしたことは起きないでほしいということで、さまざまな改良など原状復旧以上のことをやってほしいという要望が非常に強い。原状復旧以上の対策はできるのか」(野間健衆院議員・部門長代理)との質問がありました。
農林水産省から「農地、農業用水の災害復旧について、ご指摘のとおり、激甚災害が頻発しており、何年か後に同じような被害が発生している。われわれは原状復旧が原則であるが、再度災害の防止という観点から、改良復旧を推奨している。例えば、被災したため池の洪水吐(豪雨時に流入した雨水を安全に流下させるための施設)は生きているが、排水能力が足りない場合、災害復旧関連事業などを活用して、設計基準に応じた施設ができる改良復旧が行えるようになっている。その事例について、都道府県を通じて市町村にお知らせしている。災害復旧方針はこれからだと思うが、国の職員から『こういうこともやれますよ』と、技術的な助言等を行っていきたい」との回答がありました。
<激甚災害の指定が見込まれる府県>
参加議員から「昨日、総理が『激甚指定の見込み』と発表されたとき、12の県と言われた。12の県で激甚指定の見込みという理解でよいか」(西村智奈美衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「今回の低気圧停滞に関する一連の災害ということであり、別の気象条件による場合は外れる場合もある。先ほどの被害状況の説明の中で22府県と申し上げたが、これは一連としている。どこまでが入るかは、私どもではなく気象庁の範疇」との回答があり、補足して、「22府県は、今の段階で8月6日からの大雨で被害報告があったもの。大雨から1週間ちょっとなので、22府県以外から一連の大雨による被害報告があれば、激甚災害の対象となると考えていただいて結構かと思う」との回答がありました。
<漁船に対する支援>
「あちこちで災害があり、農水省の皆さんが迅速に対応していただいていると思う。お疲れ様です。漁船の被害が結構あると思う。漁業者にとっては、これからも続けるか、これで辞めてしまうか、ということになる。水産関係に関する支援として、漁船等のリース方式による導入とあるが、これ以外に支援はあるか」(田名部参院議員)との質問に対しては、農水省より「水産庁が来ていないので、別途対応する」との回答がありました。
<渇水と大雨というダブルの被害が作況に与える影響>
「前回、渇水被害についてヒアリングを行った。渇水で弱ってしまった農作物が、今度は大雨というダブルの被害。どういう状況なのか、しっかりと把握する必要。前回、作況には影響ないと言われたが、今度はどうなのか」(金子部門長・衆院議員)との質問に対しては、農水省より「現在、調査中。この夏暑かったが、7月末まで、全国的には大きな障害がない状況であった。その後渇水、大雨があった。状況を注視しなければならない。統計部が8月15日現在の生育状況の調査を実施しており、8月末に公表する。こうしたデータを見ながらと思う。今回、渇水の後、雨が降って困っているというよりも、雨が降ってよかったという意見が多かったと受け止めている」との回答がありました。
■渇水・高温被害対策等についてヒアリング
続いて、農水省から、渇水・高温被害対策について、概略、以下の説明がありました。
「7月の少雨により、全国的に渇水傾向となったが、8月前半の雨で状況はだいぶ変わった。8月2日から11日の10日間累積雨量をみると、岩手や宮城では雨が降っていないケースもある。渇水傾向が続いている地域もあるので、引き続き、MAFF-SATによるサポート、ポンプの貸出し、給水車の手配等の諸経費を補助するという3点セットを引き続きやっていく」
「8月から10月は例年よりも高温が続く見込み。高温で乾燥してくるとカメムシ類が活発化するが、8月8日現在、42件32道府県で注意報が発表されている。渇水の話もあり、農水省の渇水・高温対策本部で、大臣からカメムシ対策を何とかせよとのご指示があり、既存予算を活用、運用を変えて、カメムシの追加防除の際に支援する事業を8月8日から始めている。多くの地域ではおおむね2回の防除が指導されているが、それでもカメムシ発生を抑えられず、3回目の防除を行うとき、10a当たり1,000円補助するという支援。しっかり周知をしている」
<渇水後の大雨による被害 降水量不足により渇水被害が継続している状況>
参加議員から「渇水のため田んぼが割れて、雨が降って田んぼが崩れるというところもあったのではないか。私の地元では、『1週間から10日雨が遅かった。渇水被害が出ている』と言われている。降っていなかったところもある。状況はどうか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農水省から「乾ききったところに大雨が降り、崩れたという話は、豪雨災害の方で拾っている話であり、復旧の話も出てくると思う。降っていなかったところがあるのはご指摘のとおり。宮城北部、岩手南部は引き続き雨が降っていない。これも地域差があり、北上川の本流では水がそこそこあるが、支流では雨が降らなかったという濃淡がある。丁寧に拾って支援していこうと働きかけをしている」との説明がありました。
<降雨が農業用水確保、高温障害に与える影響>
参加議員から「(1)今回の雨で、ため池、ダムはある程度満たされてきているのか。(2)降雨が高温障害に与える影響はどうか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農水省より「(1)渇水について、地域差があり、報道がなされた鳴子ダムの貯水率0%は継続している。上流の別のダムの水を強めに掃き出し、番水で何とかしのいでいる状況。引き続き、注意をしなければならない。石川県は全体的に大丈夫と聞いているが、地域によって偏りがある。8月前半の雨で変わったことは確かだが、だからと言って緩めていいという状況にはない。引き続き、現場の話を聞きながらしっかりとサポートしていく」「(2)米の品質への影響について、渇水の影響が心配される時期はイネの穂が出る時期。そこはなんとか乗り切ったところが多いのではないかと思っているが、その後、穂が出た後実りが充実していくが、そこで気温が高いと白い米、未熟米が発生する。水をかけ流す、イネを冷やすという対策は水があればできる。雨が降ることは好ましい。いずれにしても、高温の影響は今後注視していかなければならない。今年は非常に気温が高いので、米の品質には少なからず影響がでるのではないか」との説明がありました。
<高温少雨に対応した生産基盤の保全の在り方>
参加議員から「岩手は冬に雪が降らなくなり、大規模林野火災も発生している。気候が変わってきている。国内の生産基盤を守っていく上で、今の農業水利ダムで足りているのか。このまま高温少雨が続くのであれば、この先、生産基盤をどう守っていくのか。農水省内で議論をしているのか」(横沢高徳参院議員)との質問がありました。
農水省より「非常に大きな課題としてとらえている。降るときはどっかり降り、降らないときは全然降らないということが時期的、地域的に偏る。こうした傾向は今後もある中、どう対応していくのか。番水、ポンプの反復利用への支援は今年初めて実施。2年前の新潟の渇水がひどかったため、その反省で実施。ダムを新しく作ることなどは、ロケーションの問題があり、時間もお金もかかる。即効性がない。当座やらなければならないことは番水、反復利用。こうしたコツコツとした取り組みを補助対象にした矢先、この年に当たった。来期以降どうするか。新潟の例を申し上げたが、3年連続渇水の地域もある。そうした地域ではあらかじめ井戸を掘るなど、岩手の土地改良区も去年も今年もやられていると聞いているが、あらかじめポンプを購入しておくことも補助対象にしている。プッシュ型で、現場の施設管理者の相談に応じながらやってまいる。そもそも、基幹的な水利施設は老朽化しており、パイプラインの破裂という事故が起きているので、そうしたことを防ぎ、水利施設の能力を維持すること。可能であれば、施設増強にも取り組んでいく。スパンの短いものから長いものまで、しっかりやっていく」との回答がありました。
<渇水対策の支援要請の状況>
参加議員から「農水省の取組として『ヒト・モノ・カネの渇水対策3本柱で現場の取組を支援』とあるが、どのくらい支援要請があったのか」(田名部匡代参院議員)との質問がありました。
農林水産省より「集計中。結果としてどれだけ経費がかかったか、については、最後に分かる。今、手が上がっているのは47都道府県のうち27県」との回答がありました。
■米価高騰の要因と対応の検証及び今後の方向性についてヒアリング
続いて、農林水産省から、8月5日開催の米の安定供給等実現関係閣僚会議資料に基づき、米価高騰の要因と対応の検証及び今後の方向性についてヒアリングを行いました。、農林水産省の説明は、概略、以下のとおりです。
「需要の見通しについて、これまで、一人当たりの消費量が毎年マイナストレンドで推移してきたこと、人口が毎年減少してきたことを掛け合わせて計算してきたので、必然的に減少傾向で見通してきた。需要の実績について、毎年の6月末在庫量で引き算をして推計してきた。
需要実績と見通しについて、過去の長いトレンドの中で、毎年7万トン、10万トン需要が減少する中、コロナ禍の前までは実績と見通しはまあまあ合っていたとみている。コロナ禍、ロシア・ウクライナによる小麦高があり、令和5年産の需要の見通しと実績の差は23万トン、6年産については、37万トンという開きがあった。この乖離の要因について、①精米歩留まりの悪化をよく見ておくべきではなかったか、②インバウンド需要をより正確に反映させる余地があったのではないか、③家計購入量が必ずしも減少一辺倒ではなかったのではないかの3点。
精米歩留まりの悪化について。農水省の統計は玄米ベースで行ってきた。令和5年産6年産について、精米の歩留まりが悪いのではないかとの話が聞こえてきた。調査の結果、令和2年産~4年産については、精米歩留まりは90%程度で推移してきたが、5年産米は88.6%、6年産米は89.2%。トン数にすると、令和5年産米は10万トン、6年産米については6万トン程度余計に玄米を消費する必要があった。
インバウンド需要の増加について、コロナ禍以降訪日外客数がなかなか見通せない状況下、最近は、対前年2.3倍、1.3倍と急激に伸びている。訪日外国人による米の需要量をどれだけ正確に推計できていたかという問題。
家計購入量について、正確に測りにくいところであるが、総務省の家計調査をみると、令和4年から6年にかけて二人以上世帯を中心に米の購入量が増加したと推計されている。その理由として、令和5年頃、パン、麺類と比較して相対的に米の値ごろ感があったこと、6年産については、米が不足するとの報道が出てきて、米が足りているのかという不安、台風や地震が発生したときにはもう少し買っておこうという消費者心理が影響したのではないかと考えられている。
これらを整理すると、基本指針で見通した需要実績、生産量について精米歩留まり、とう精数量から推計したものを初めて作ったが、5年産については、56万トン、6年産については28万トン不足したのではないか。民間期末在庫が令和5年6月末で197万トンだったところ、6年には153万トン、7年には備蓄米を除き121万トンと、6月末の民間在庫が思ったよりも減っており、民間在庫を取り崩して供給量が推移してきたと言える。
米の流通実態は多様である。これまでは、JA系統等の集荷業者から卸売業者、小売業者等を経由するルートがメインであったが、最近は、JA系統の集荷率が下がり、流通ルートが多様化している。6年産について、生産量からの出荷量は15万トン増加しているが、JA系統への出荷量は34万トン減少し、JA系統以外への出荷が49万トン増えていると推計されている。
全体としての民間在庫はある程度存在すると考えていたが、民間在庫は、既に売り先が決まっているものが多く、緊急事態に対応できるバッファーになりえない状況。昨年夏の端境期に米が不足するとの不安から集荷競争が発生し、同業者間で取引するスポット市場を通じて比較的高い価格の米が調達された。
これらのマーケットに対する農水省の対応について、多様化している流通へ働きかけていかなければならないのではないか、ということだが、農水省から当初、「新米が流通すれば価格が落ち着いてくる」と発信していた。結果的にそううならなかった。生産量は玄米ベースで足りていると統計上認識していたが、流通構造の変化を踏まえた流通実態の把握に消極的であったのではないか、マーケットへの情報発信や対話も不十分であったのではないかとの指摘である。
備蓄米について、不作時に放出するというルールのもと、放出する判断が遅れ、更なる価格高騰を招いたのではないかとの指摘である。令和7年3月から放出しているが、政府委託倉庫からの流通に時間を要した。
この検証はこれで終わったわけではなく、米の需給見通しについて基本指針の中でまだ示していない。これから検証の結果等を反映していく。
今後の方向性は、以下の6点。
(1)需給の変動にも柔軟に対応できるよう、官民合わせた備蓄の活用や、需要に応じた増産に努めていく
(2)生産性の向上が必要で、農地の集積・集約、スマート農業を進めていく
(3)米国の関税措置による影響を分析しつつ、出口としての輸出の拡大に努めていく
(4)精米ベースの需給、消費動向を把握し、需給見通しを作成する
(5)流通構造のきちんとした把握、流通の適正化を通じた消費者・生産者の納得のある価格の形成
(6)令和9年度の水田政策の見直しを進めていく」
<米の流通実態を踏まえた方向性を示す必要>
参加議員から「米の流通実態は皆さん十分ご承知のことと思う。今回の検証は、踏み込むべきところに踏み込んでいないと思う。JAの集荷が4割で、民間が圧倒的に多いことを踏まえた今後の方向性を出していかなければならないのではないか。米の流通実態を踏まえ、本当にやるべき検証は別にあるのではないか。農水省の中で、議論したのか」(西村智奈美衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「ご指摘のとおり、需要の推計は500トン以上の取扱いがある卸売業者、集荷業者の調査で作成していた需給見通しがあったが、十分把握できていないということで、この検証を行う際に、取扱量20トン以上の小さい業者を含め、調査を行っている。7万社あるが、農水省が小さい業者を含めた流通の把握をしなければならないことは今回の反省としてあるので、どのように効率的に調査をしていくのか、考えていきたい」との回答がありました。
<事務次官による謝罪の対象 目詰まり主犯論の検証 家庭消費量の見通し>
参加議員から「この資料をみてびっくりした。ここに書いてあることは国会でも指摘されてきたこと。農水省は『そうではなく、目詰まりだ』と言い続けてきたが、『全部、指摘のとおりでした』というもの。(1)自民党の部会で事務次官が説明して謝罪したとの報道を見たが、誰に対して謝罪しているのか。去年の夏から今に至るまでの一連の対応を誤った政策判断をし、誰かに迷惑をかけたから謝罪したのだと思う。自民党に謝るべきかどうかは別かと思うが、筋論のところを説明願いたい。(2)あれだけ続けてきた目詰まり主犯論。目詰まりという単語はどこにも出てこない。そのことについての検証を伺いたい。(3)家庭の消費量、購入量が増えたことが要因としているが、米不足という騒ぎの中で拍車がかかって、量が増えたので、今後の見通しを立てていくとき、家庭消費量は長期的にそうだと言えるのか。その検証の視点を持っているのか」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。
農水省より「(3)(2)(1)の順番でお答えしたい。(3)家庭の消費量について、ご指摘のとおりで、ここ2年、少し上がっているからといって、来年さらに上がっていくことは必ずしもないと思っている。2年連続消費量が上がったということは知る限り、ない。来年どうなるか、様々な要因が絡んでいるので予測しづらい。消費量の見通しがどうなるのか、2年消費増が続いたので来年は落ちるとの見立てもあると思う。なるべく正確な見通しができるようにしたいと考えている。(2)目詰まりをどう定義するかとの問題でもある。先ほどお示しした流通ルートの多様化について今年の6月末時点において、各卸、小売り、小規模を含め、昨年に比して過大な在庫があるというデータはなかった。いずれにしても、令和6年産について、卸と実需の間で新しい集荷ルートの開拓であるとかスポット取引、集荷競争があり、例年と異なる状況であることは確かであると考えている。この中で、円滑な流通ができていない状況があったのではないかと認識している。これを目詰まりと言うかどうかはともかく、こうした状況にあったと考えている。(1)については、まさにそのとおり。検証にあるとおり、5年産、6年産のコメの需給見通しを誤っていたことにより、国民の皆さま全体にご迷惑をかけたことはそのとおりだと思っている。お詫びを申し上げたい。幅のある需給見通しの在り方を検討し、需給の変動の柔軟に対応できるようにしたい。マーケットへの情報発信、対話をしっかりやっていきたい」との回答がありました。
これに対し、参加議員から「簡潔にまとめると、この間、農水省は、生産見通しは間違っているはずがないから、現状とのずれはどこかに原因があるはずで、それは、目詰まりしかないという説明を繰り返してきた。その見立ては完全に間違っていた。この検証をみると、原因は需給見通しの間違いであり、生産量コントロールが間違いであり、ということが順番に書いてある。農水省の見立て、説明が誤りであったから謝罪しているのか」(渡辺創衆院議員)との質問がありました。
農水省より「明確に○か×かは言いづらいが、目詰まりで全てを説明できるかどうかは分からない。需給の見通しの誤り、実際の集荷競争が想定以上に起こった。いろいろな事情があったと考えている。そのときの担当が、ある範囲の中で、これしかないと自信をもって説明したということに尽きると思うが、現在においては、さまざまな理由もあったと考えている」との回答がありました。
参加議員からは「事務方が説明しただけでなく、国会で大臣が答弁してきた。レクで言ったこととは違うことを申し述べておきたい」との指摘がありました。
<卸売業者に対する謝罪の有無 備蓄米の運用方針>
参加議員から「(1)(事務次官が)自民党の議員に謝ったことに、違和感がある。一方、小泉農相は、卸の利益が5倍で、おかしいのではないかと国会で答弁している。私の地元でも卸の方は相当怒っている。皆さんの分析では卸売業者は悪くなかったということではないか。謝るべき相手は違うのではないか。小泉農相は卸、流通の方に対して、謝罪したのか。(2)備蓄米がだぶついているのではないかとの話がある。備蓄米がスカスカの状態。一番古いものを餌米にすると備蓄米ゼロになる。どうするのか」(近藤和也衆院議員)との質問がありました。
農水省から「(1)小泉大臣は、8月8日の記者会見で謝罪の言葉を述べたと認識している。(2)備蓄米の在庫は、96万トンあったのが、だいぶ減ってきたので、減った分について、量としてどう確保するのかという観点も必要になってくる。令和7年産米が入ってきたら2年産米を直ちに売却することにはならない。具体的な運用については、これから詰めていくことになる」との回答がありました。
参加議員から「(令和2年産米について)場合によっては、食用に回す、備蓄としておかざるを得ないこともありうるのか」(近藤和也衆院議員)との質問に、農水省は「いろんな選択肢がある。今後、考えていく」と回答しました。
また、農水省から「8月8日の大臣記者会見で、小泉大臣は『国民の皆様にご迷惑をおかけしてしまいました。このことは、農水省の責任として、私、大臣含めお詫びをしなければならないと思っております』と発言した」との補足説明がありました。
これに対し、参加議員から「見通しが誤っていたことへのお詫びではなく、卸売業者を悪者にしていたことに対して謝ったのかという事実確認をしたかったが、この時は『国民の皆さまにご迷惑をおかけした』としか言っていない」(近藤和也衆院議員)との指摘がありました。
<大手集荷業者が報告した在庫量が真正であるかどうかを確認すべき>
参加議員から「米価高騰の原因について、今までは分からない、なんとなく流通に問題があるのではないかと言っていたが、そもそも、見込みが甘かったのだと結論を出された。食糧法は供給の安定と供給の安定を通じて価格を安定させるためにある。大手の集荷業者は報告義務が法律上負っているが、その報告が正しい報告なのかどうかについて、確認をすべきではないかと前々から申し上げていた。その確認はこの検証でもなされていないと思う。例えば、報告された在庫量と真の在庫、棚卸の数値までしっかり確認したのか」(川内博史衆院議員)との質問がありました。
農水省から「調査を実施している。小規模の業者に対する在庫量調査を行った。それ以外の大手の集荷卸に対する訪問調査を行っている。取扱数量の多い集荷業者7社、卸売業者6社を選定し、食糧法上報告いただいている内容について、各種台帳、伝票との突合、取りまとめ手法の確認など、立入検査、調査を実施している。結果については、若干の伝票との齟齬があったが、全体として需給の把握に影響を与えるような齟齬は基本的になかった」との回答がありました。
これに対し、参加議員から「なぜ、今、『検査』という言葉を『調査』に変えたのか。伝票をきちんと突合したのか、疑義が生ずる。立入検査と立入調査は全然違う」(川内衆院議員)との指摘があり、農水省からは「食糧法51条に基づく調査であり、調査の方が正しい。調査なのか、検査なのかによって、緩いとか、そういうことはない」との回答がありました。
参加議員から「調査して突合した、とどや顔で言うが、報告された数値が本当に合っているのかどうかを検証することが農水省のやるべきことであった。ちょろちょろと出かけて行って、ちょろちょろっと見て、『合ってますね』といって帰ってくるのが検証であるとは、とても思えない。大変な迷惑を国民にかけたと自分たちが言った。大変な迷惑をかけたのなら、大変な調査なり検査なりをした上で報告を出さねばならないのではないか。改めて、在庫として報告された数字と大手集荷業者の毎月末の倉庫の在庫の総量が合っているのかどうか、確認すべきと思う」との指摘がありました。
農水省から「おっしゃるとおり、52条に立入検査という項目はある。今回実施したのは、われわれの反省かもしれないが、時間も限られていた中、51条の立入調査しかできなかったのが正直なところ。51条の調査に関して、疑義はなかったが、流通の可視化などをやらなければならないと思っている。20トン以上取り扱っている7万業者に、調査しますよと送ったが、3万5千、宛先不明で返ってきた。把握できていなかった反省がある。これは公表している。そういったことも踏まえて、どうやって行くのかは考えていかなければならない」との発言がありました。
<作況指数の信頼性への疑義 精米ベースの供給量把握の考え方 増産に伴う飼料用米の利用者へのフォロー>
参加議員から「(1)要因の1つに、精米歩留まりの悪化を把握できていなかったことがある。作況指数が信頼できなかったものと考えてよいのか。作況指数を公表しないとされたが、同じような調査を継続すると聞いている。これでよいのか(2)精米ベースの供給量の把握をしていくとあるが、これまでやってこなかったことであり、どういう方針で実施する考えか(3)今後増産に舵を切るとしている。今年度も増産とのニュースが流れているが、その多くが飼料用米から主食用米への転換と思っている。今まで飼料用米を使っていた養鶏業者などから心配の声が聞かれている。フォローについて、どう考えているのか」(岡田華子衆院議員)との質問がありました。
農水省より「(1)作況指数は廃止している。過去30年のトレンドから今年の作柄について評価することが実感に合わないということであったので、やめることとした。収穫量調査をやらないというわけではなく、精度を向上させた上で引き続きどれくらいの生産量がありそうかということについての統計はやっていく考え。具体的に、いつになるかは分からないが、AIを使うとか、ふるい目を生産者の実感を踏まえたものを使うなど、きめ細かい情報提供ができる統計に見直していく(2)精米ベースについて、需要見通しの中で、供給量の中で反映するのか、生産量の数値をいじるのか、検討しているところ(3)餌米を主食用米に売ってしまうので、餌米が足りなくなるという話は聞いているので、具体的にどのように対応するか、検討している」との回答がありました。
<農林水産省は一連の対応について反省する必要>
「事務次官以下幹部の皆さんが自民党の部会で頭を下げている報道を見た。何なのか。とても残念。参議院では、昨年の6月頃に、米不足の状況があるのではないかとの指摘していた。現場からも、米が通常の動きとは違う、品薄なのではないかという声があった。その情報を全く農水省は把握していなかった。われわれも何度も国会で供給量が足りていないのではないかと指摘してきたが、(農水省は)全く理由にならないことを根拠に足りていると話をしてきた。見通しが甘かったと指摘されたくないために、ごまかしにごまかして、いよいよごまかしきれなくてごめんなさいと。国民の皆さんにこれだけ不安を与えて、高くて米が買えない、いざというときの備蓄米を出し放題に出して、何が食料安全保障だ、と言う状況に陥っていることを深く反省していただきたい。保身に走るのではなく、どうやって食料安全保障を守るのかを考えなければならない。場当たり的に米を増産するから大丈夫だと言っても、一方で飼料用米をどうするのか。作況指数もなんか違うからやめると。そうではない。どうしたら正しい精度の高いものができるのか、それを公表して初めて安心してくださいとなる。反省していただきたい」(田名部参院議員)との発言がありました。
<原因を追及し、今後どうするのか、前進させていく必要>
「説明の中で、当時の担当者が云々という言葉があった。それは良くない。その時、その時、精一杯対応してくださっているとは思う。今お話があったように、わが国の食料安全保障をどう考えるのか、重要なこと。間違っているのであれば間違っているとしっかり認めながらも、今後どうするのか、前進させて考えていかなければならない。私たちは本当の原因を知るためにいろいろ議論をしてきた。悪者探しをしているわけではない。原因の追究をともにやっていければと思っている」(金子恵美部門長・衆院議員)との発言がありました。
<本年産米の需要見通しと生産実績見込み>
参加議員から「本年産米の需要見通しを663万トンとしているが、これは誤った見通しを前提にしていると思う。今回の反省を踏まえ、どのくらいになるのか。生産量とのギャップはどのくらいになるのか」(階衆院議員)との質問があり、農林水産省から「7年産8年産の需給見通しの中で、663万トンと記載している。これについて、7月末の新たな基本指針の中では、検証中のため、定めることをしなかった。需要量の数値は検証の中でも一番難しいため、お示しできなかった。検討中ということでご勘弁願いたい」との回答がありました。
「生産実績は7年産米の見込みについて735万トンという数値が出ている。これは、ほぼそのとおりとみているということでよいか。確度は高いということでよいか」(階衆院議員)との質問があり、農水省より「735万トンについては、もともとの見通しに加え、56万トンの増産が6月末時点で出ており、これを足したもの。確度については7年産米については高温被害なども踏まえて、ということになる」との回答がありました。
<余剰米の発生により米価が下落した場合の対策の在り方>
参加議員から「今の需要見通しがそんなに大きく変わらないとすれば、米が相当余ると思われる。米が余ったとき、価格が下がって農家が困ることをどうやって防ごうとしているのか」(階衆院議員)との質問があり、農林水産省より「7年産の動向は非常に難しい。普通に計算すれば8年6月末の民間在庫は今書いてある数字より大きくなると想定される。一方で、備蓄米をどう扱うかということもある。7年産の概算金が高い水準となっていると聞いている。実際にどの程度の価格で販売されるのか、年間を通じてどのように推移するのか、見通しは非常に難しいと考えている」との回答がありました。
参加議員から「市場価格がどうなるか分からない中、仮に下がった場合、どうするのか、聞いている。仮に下がった場合、消費者は助かるが、農家を助けるために、われわれは直接支払とか備蓄米の買上げを行うとか、そういうことで価格下落から農家を守ることを提案しているが、それはやるのかやらないのか、どういう方針か」との質問に対して、農水省より「価格については、基本計画以降、生産者、消費者が納得いく価格にならなければいけないと考えている。コスト指標もやっている。余った場合にどうするのかというご質問については、その時に需給の状況を見て判断するとしかご回答できない」との回答がありました。
参加議員から「それは農家の皆さんへの安心材料にはならないと申し上げておく」との指摘がありました。
■その他
ヒアリング終了後、参加議員から「大正7年に米騒動があり、寺内内閣が倒れ、立憲政友会の原内閣が誕生した。コメ問題は政権が倒れるくらいのこと。今までの大臣答弁とは全く違う状況である。ぜひ、閉会中審査を衆参で求め、委員会を開いてしっかり大臣の答弁をとっていかないと収拾がつかない」(横沢高徳参院議員)との発言があり、野間部門長代理より「衆院の方でも求めてまいりたい」との発言がありました。
また、「食糧法上の立入検査だけが法的に帳簿を確認したり、本当のことを言いなさいといってヒアリングができる。この報告書はでたらめかもしれない」(川内衆院議員)との発言がありました。
最後に、金子部門長より、「本日午後4時から渇水・高温被害対策本部が開催される。本部長は小川淳也幹事長。豪雨災害もあるので、われわれとしては、その対応も必要になってくると思っている。同対策本部は、国土交通と農林水産が連携しており、農水以外のテーマも取り扱う」との紹介がありました。
