参院本会議で所得税法改正案等に対する代表質問が行われ、柴愼一議員が登壇しました。予定原稿は以下の通りです。
2026.3.23
立憲民主・無所属の柴です。柴愼一です。会派を代表して、ただいま議題となりました、所得税法等の一部を改正する法律案ほか二法案について質問します。
(日米首脳会談)
まずは、高市総理、日米首脳会談お疲れさまでした。中東情勢が緊迫化する中、極めて難しい判断・対応が求められた訪米だったと思います。多くの課題に対応した総理はじめ関係者のご労苦に敬意を表したいと思います。
首脳会談の詳細については、別途、質疑の場があることから多くは申しませんが、私からいくつか総理の認識をお聞きします。
トランプ大統領からのホルムズ海峡の安全確保への貢献の要請に対し、我が国の立場を説明されたとのことですが、具体的に「できること、できないこと」をどのように説明し、トランプ大統領からどのような認識が示されたのでしょうか。総理お答えください。
次に総理の「世界に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ、諸外国に働きかけてしっかりと応援したい。」との発言について伺います。
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃では、子供を含めた多くの人命が失われています。その中で、トランプ大統領からは武力を誇示する、イラン国民の命を弄ぶような発言・発信がなされ、総理の発言に私は強い違和感を持ちます。
今般のイラン攻撃に対し、我が国は法的評価をしていませんが、このような武力紛争が続く中での高市総理のこの発言です。トランプ大統領の言う「力による平和」を肯定しているのですか。これは法の支配とは相容れないものでは無いでしょうか。総理、発言の真意をお聞かせください。
また、この発言は孤立感が増す米国との友好な関係を維持するためには意味があったと言えますが、一方で「諸外国に働きかける」としており、今後、欧州や中東各国に何を働きかけるのか、対応をどう進めていくのか、総理、明確にお答えください。我が国がなすべきは、法の支配に基づき、トランプ大統領に軍事攻撃の停止を促し停戦を実現、その上で各国と連携して中東情勢の安定を図るなどの貢献を行うことであり、それが日本の国益に最も叶う姿では無いでしょうか。
我が国として対応をどのように進めていくのか、総理お答えください。
(責任ある積極財政)
高市政権の財政運営について伺います。
高市総理は施政方針演説で、日本の総合的な国力を徹底的に強くするために政策のあり方を根本的に転換すると述べています。そしてその本丸は「責任ある積極財政」であり、「長年続いてきた過度な緊縮志向を断ち切る」とも述べて、財政運営の政策転換に至った認識を表明しています。
そこで伺います。少なくとも2009年以降、税収が伸び悩む中にあっても一般会計歳出は総額100兆円前後となっており、2020年のコロナ禍以降は140兆円を超える歳出を計上した年度もありました。アベノミクスによる機動的な財政政策もあり、この間、収入不足の穴埋めのための国債発行がなされ、債務残高は増加の一途を辿ってきました。高市総理の言う「長年続いてきた過度な緊縮志向」とは、具体的にどのような時期・政策を指しているのか、総理お聞かせ下さい。
衆議院財務金融委員会での質疑では、片山財務大臣から「特定の時期における具体的な施策を指しているということではない。」「いつの時期ということではない」などの答弁がありました。
だとすれば、解散総選挙を行うにあたり、責任ある積極財政への大胆な政策転換に対する信を問うという大義が根拠のないものであったと言えるのではないでしょうか。総理の明確な答弁を求めます。
(円安に対する認識)
次に財政運営に関連して、円安についての認識を伺います。
高市総理は先の衆議院選挙の演説会において、外為特会の運用状況が「ホクホク」であるとの発言をされました。その後、総理ご自身が弁明されたように、当該演説会において総理はたしかに、円安及び円高の評価は一概には難しい側面があるとの発言をされています。それでも円安についてはメリットを強調するだけで、デメリットについては言及がありませんでした。
一般的に積極財政は通貨安を誘導するリスクがあると言われています。中東情勢が緊迫化する中、円安はさらに進む懸念もあります。円安は輸入物価の上昇を通じて国民生活に多大な負の影響をもたらすという観点から言えば、高市政権が向き合うべきは円安のメリットではなく、円安のデメリットやリスクです。
そこで伺います。円貨の下落は物価高の連鎖を招きます。「責任ある積極財政」を進める上で、高市政権は円安リスクに対してどのように考えておられますか。
「日本列島を、強く豊かに」とのフレーズとアジア最弱とも言われる円の価値に大きなギャップを感じます。為替は経済のファンダメンタルズ (基礎的条件)で決まるものですが、高市政権の掲げる「強い経済」に相応しい円の水準はどのようなものと考えるのか、総理の答弁を求めます。
(年収の壁)
所得税の基礎控除の引き上げについて伺います。
本改正案では、所得税の基礎控除額を2年ごとに物価動向に連動させる仕組みを恒久措置として講じるとしており、物価上昇局面における税負担軽減の対策として、意義ある改革が行われたものと考えます。
しかし同時に、令和8・9年の2年間の特例措置として、年収665万円までの所得層に上乗せで追加の控除を行うこととしています。政府はその政策目的を「働き控えへの対応」、及び「物価高に苦しむ中低所得者の手取りの増加」としていますが、その結果年収665万円前後で手取りの逆転現象が生じ、新たな壁が発生することになります。加えて2年後に上乗せ特例が廃止される際には、最大4.2万円の増税となる所得層が出ることも想定されます。この課題に対応されるのか財務大臣お答え下さい。
この間のいわゆる「年収の壁」を巡る税制改正は、制度を極めて複雑にし、元に戻す際にも影響が大きくなっています。また所得層によって控除額や減税額に偏りが生じ、低所得者層への減税効果も限定的となっています。
そこで伺います。政府は、これらの問題が生じる中、基礎控除の上乗せ特例で物価高対策と働き控えへの対応を措置した意図、及びその課題をどのように評価しているのか、財務大臣お示しください。
(インボイス経過措置延長)
インボイス制度について伺います。2023年10月に導入されたインボイス制度に対して、弱い立場にあるフリーランス・個人事業者に税負担増や商取引から排除の懸念があることから、私たちはインボイス制度については、明確に「廃止」を訴えてきました。
今回の改正案では、経過措置 (いわゆる2割特例・8割控除) を見直し・継続するとされていますが、あまりに中途半端です。経過措置の見直し継続に意味が無いとは言いませんが、中途半端な制度変更は、発注元の事務煩瑣にもつながり、かえって取引からの排除を招きかねません。
政府は、インボイス制度導入後のフリーランス・個人事業者の状況をどのように認識されているのか。長引く物価高、中東情勢の緊迫化により原油価格などが高騰する現状に鑑みれば、弱い立場にある方々にしわ寄せがされ、事業継続が困難になることが見込まれます。
ついては経過措置を縮小して継続させる本改正案は撤回し、現在の経過措置を維持する形の改正とすべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
(1億円の壁)
極めて高い水準の所得に対する負担の見直しについて伺います。
いわゆる「1億円の壁」とは、所得1億円を境に税の負担率がかえって低下する問題です。令和5年度税制改正で30億円を超える極めて高い所得層への措置が導入されています。今回の改正案では、さらに6億円程度を超える所得に対して追加負担の措置を講じるとしています。
こうした措置は、所得税の「総合課税」 化への流れの一環であると考えられます。応能負担原則の観点から、所得税の「総合課税」化を含め金融所得課税のあり方に関する検討を今後どのように進めていくのか、併せて1億円の壁解消に向けた今後の政府の方針について、財務大臣お答えください。

(法人税の租税特別措置と内部留保)
「大胆な設備投資促進税制」、及び「研究開発税制の見直し」について伺います。両税制は法人税に関わる租税特別措置です。租税特別措置について政府は「日本版 DOGE」を内閣官房に新たに設け、そこでの点検を開始したばかりと聞いています。そこでの議論を待たずに、令和8年度の税制改正でこれらの措置を盛り込んだ理由、さらには新設される日本版 DOGE との関係性はどのようなものになるのか財務大臣に伺います。
いずれの措置も国内投資の活性化を掲げる高市政権の方針を税制で裏づけるものとなっています。
しかし、我が国は国内投資不足による経済停滞が指摘される一方で、巨額の内部留保が企業に溜まり続けており、13年連続で過去最大を更新している現状があります。そのような状況において巨額の税財源を用いて減税を行う正当性は、厳しく問われる必要があると考えます。
政府は租特による法人減税を拡大する前に、まずは企業の内部留保を成長投資に繋げる取り組みを促進すべきだと考えます。コーポレートガバナンスコードの見直しの検討含め、総理の見解を伺います。
(政府による賃上げ支援)
賃上げ促進税制について伺います。
今回の見直しにより、大企業及び中堅企業への減税措置は廃止されることになりました。そのことは妥当なものと評価しますが、実質賃金の引き上げは極めて重要な政策課題であり、先行きに不確実性が増す中であっても、大手の好調な賃上げの流れを中小・小規模企業に繋げていく政策が必要です。
政府は重点支援地方交付金に推奨メニューとして賃上げに対する支援を追加していますが、このような施策は地方任せにするのではなく、国が責任を持って推し進めるべきであり、大企業・中堅企業向けの措置を廃止する原資をもって、賃上げを行う中小企業等への支援を国が実行すべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
(防衛特別所得税の撤回)
防衛特別所得税について伺います。
日本を取り巻く環境変化、サイバー・宇宙分野などの技術革新などを踏まえると、防衛力を整備する必要があることについては理解します。一方で「防衛力整備計画」で示された5年間で43兆円の防衛費は「数字ありき」であり根拠が明らかではないと私たちは主張し、その財源確保に向けた増税措置に対しても、撤回を求めてきました。
東日本大震災から15年を迎えるこの年に、復興にかかる費用を国民全体で広く分かち合い負担する 「復興特別所得税」の仕組みを流用する形で、防衛特別所得税を新設することに対して、強く反対します。
総額43兆円の防衛費確保に伴う年1兆円強の増税措置は、既に増税が決定している法人税・たばこ税だけで賄える見込みであることから、追加の増税は必要ありません。防衛特別所得税は撤回すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
(納税者権利憲章)
納税者権利憲章の創設について伺います。
税は、国民が互いに支え合い、共によりよい社会を作っていくため、公的サービスの費用を広く公平に分かち合うという意義があります。そうした税の重要な役割を、国民一人ひとりが意識するにあたっては、納税者としての権利をしっかりと保障する必要があります。
納税者権利憲章は、既にOECD38か国中35か国で制定がなされ、課税当局の納税者に対する重要な公約、あるいは両者の信頼関係醸成のための宣言として、諸外国では機能を果たしています。
我が国における納税者権利憲章の創設を求めます。財務大臣の見解をお示しください。
(特例公債法)
特例公債法の改正案について伺います。
そもそも特例公債法は、財政法4条において建設国債以外の公債発行を原則禁じていることから、それを特例的に許可するために国会で議決されるものです。
政府は令和8年度から12年度までの5年間の授権期間が与えられることで安定的な財政運営が可能としていますが、高市政権の掲げる「責任ある積極財政」の成否は、このインフレ局面下において、いかに国債運用における「市場の信認」を得ることできるかどうかにかかっています。
そこで特例公債の発行については、毎年国会における審議・議決を得た上で授権する運用に戻すことこそが重要だと考えますが、総理の見解を求めます。
(結びに)
最後に申し上げます。私が参議院の一員となり3年半あまり。この場に議席を得てこの間に最も強く感じたのは、政府・行政府と国会・立法府が、それぞれの立場を尊重しつつ、緊張感を持って真摯な議論を積み重ねる姿でした。
先の総選挙の結果により、衆議院ではその関係が大きく変化し、自らの存在を貶めるような運営が行われたことに強い問題意識を持つものです。
衆議院での議論において総理は「国会のことは国会で決めること」と答弁されています。
参議院として、予算・法案の審議充実と国民生活に悪影響を及ぼさない議会運営の両立に向けて、与野党が知恵を出し汗をかくとの思いは、この場にいる全員の共通認識であると思っています。
私もその実現に向けて力を尽くしていく決意を申し上げ、質問を終わります。
