党旧統一教会被害対策本部(本部長:西村智奈美衆院議員)は8月10日、第6回会合を国会内で開催。日本の新宗教運動や宗教団体の政治活動、カルト問題などを研究している宗教社会学者、上越教育大大学院准教授の塚田穂高さんから、「宗教社会学から見た統一教会問題―カルト問題・宗教と政治・『宗教2世』問題―」をテーマに話を聞きました。

 塚田さんはまず、統一教会問題は(1)「カルト」問題(2)宗教と政治の関り方(3)「宗教2世」問題――の3つがかけ合わさったものであり、(1)については、「問題がなくなること、被害者の救済・回復」(2)については、「旧統一教会との決別宣言、関りの可視化・透明化(説明責任を果たすこと)」(3)については、社会の理解や、公的相談・支援体制の整備」をそれぞれのゴールだと設定。一部で「統一教会が取り上げられることは、容疑者の思う壺」「まだやっているのか」といった言説があることには、「全然解決しておらずまだまだこれから。容疑者の供述や分かっている背景を見ても、これら3つを解決しようとして事件を起こしているのではない」と述べました。

 日本では、元々「マニアック」程度の意味であったものが、1995年のオウム真理教地下鉄サリン事件など以降、「カルト」は「危険な反社会的な宗教(的)集団」という認識・用法が急速に定着したと振り返る一方、宗教社会学では、主に宗教が関わる社会問題・人権問題を「カルト問題」だと捉え、「どういう教団やその信者がどういう行動を取ったときに、『社会問題』が起こっているか、その『問題性』とは何かを、具体的に見ていく姿勢をとる」と説きました。

 その上で、「カルト問題」の表れ方として、生命の破断や性的虐待、暴力的布教、児童虐待などさまざまある中、統一教会問題は「金銭はく奪」と「正体隠しの詐欺的布教」に当たり、「人が死んでいない。オウムほどではないから、問題ない」とはならないと指摘。特に精神の自由の侵害は、スピリチュアル・アビュース(精神的・霊的虐待)、人権侵害だと述べ、「宗教だからこそ、問題が深刻だ」と強調しました。

 統一教会は、1954年に韓国で創立後58年に日本伝搬、64年に宗教法人となり、60年代後半から「親泣かせの原理運動」(学生がのめりこむ)として社会問題化、80年代半ばから姓名判断などと絡めた商品販売が「霊感商法」として問題化、87年には全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成され、現在まで訴訟・係争がほぼ絶えないと言います。2009年のコンプライアンス宣言(信者たちが法令を遵守し、公序良俗に反する行いが無いように教団が責任を持って指導する姿勢を打ち出した)以後は、物品販売は基本控え、強要的な献金へ切り替えられたとし、こうしたいわゆる霊感商法、正体隠しの勧誘で高額献金を集めてきたのは日本だけだと指摘。日本で集めたお金を韓国や米国など海外に送り、韓国では財閥的な活動、米国ではロビーや平和活動をするという、明確な役割分担があったと述べました。

 政治との関係では、統一教会は、政治団体「国際勝共連合」として、当初から岸信介ら右翼大物とつながり、左派に対する都合のよいカウンター勢力になり、冷戦後も「勝共」、家族や性的「純潔」を重視する考えから、同性婚やLGBTなど性的マイノリティーへの理解といった動向を新たな「共産主義」的価値観として敵視するようになり、「反共・反リベラルの、都合のよい補完勢力になっていたと解説。政治家が、霊感商法と強要的献金で国民に甚大な被害を与え続けてきた団体と都合よくつき合い続けてきた問題に加え、夫婦別姓やLGBT理解増進を止めてきたことで、他者の自由や人権を抑圧してきた動きなどについては、まとまった動向として検討すべきだと提起しました。

 「宗教2世」については、「特定の信仰・信念を持つ親・家族とその宗教的集団への帰属の下でその教えの影響を受けて育った子ども世代」と定義。少なく見積もっても数百万人以上いて、その中で外とのギャップの大きさや自由の制限、虐待などにより悩み、苦しむ人々が少なからずいると説明。必要な対応として、相談・支援体制の整備や社会の理解・偏見の排除等を挙げました。

 最後に、政治・政治家に対しては、(1)「カルト問題」と統一教会問題についてよく知り、問題の撲滅、被害救済・回復を(2)2009年、教会本部まで捜査が入らなかったことに政治家の関与があるか検証を(3)統一教会との決別宣下を、宗教との関り方については透明化・可視化を(4)「2世」問題について具体的・効果的対応を(5)「宗教」について、「宗教と社会」「宗教と政治」についてもっと「研究」を――の5つを求めました。

 出席議員からは、「2009年に協会本部に捜査が入らなかったことの重要性」「カルト問題から守るための教育の在り方」などについて質問がありました。