立憲民主党など野党は1月26日、旧統一教会問題に関する第38回目となる国対ヒアリングを実施しました。今回は、(1)旧統一教会が元信者からの求めに応じて返金した事例、(2)養子縁組あっせんに関する統一教会への行政指導――について被害者と被害者弁護士連絡会の方からヒアリングを実施。関係省庁からも話を聞きました。

 冒頭、弁護士連絡会の木村壮弁護士は、24日に朝日新聞に「裁判外で元信者と46件の和解」との見出しの記事の経緯について説明。すべての報告を受けた網羅的なものでもなく、弁護士が入らず一部だけ返金し合意書を作られるなどの事案も多数あるとして、「あくまでも(教会が「コンプライアンス宣言」を出した)2009年以降の被害の一部に過ぎない」「弁護士が付き、交渉した事案だけでもこれだけある」と語りました。

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 佐々木大介弁護士は、交渉により被害救済に成功した事案について説明。依頼者は少なくとも3千万円を献金していたものの、教会に通うことを辞め、全額返金を要求。教会は600万円返金する一方で今後一切請求しない旨の念書を作成、分割で合計600万円の支払いを受けていました。その後、昨年の事件をきっかけに残金請求を弁護士に依頼し、3千万円から600万円を差し引いた2千400万円を分割で支払う旨の和解が成立したというもの。

 佐々木弁護士は、昨年の臨時国会で岸田総理が念書作成などについて「勧誘の違法性を基礎づける要素の一つとなり、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が認められやすくなる可能性がある」との答弁により、交渉が進み解決に至ったと説明。「今後被害を名乗り出る被害者の方、念書があり被害救済が絶対無理だと思っている方もたくさんいると思うが、その方々にとって、まさに光明」「被害救済を諦めず、弁護士に相談いただきたい」と語りました。

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 母が教会信者で1億数千万円の献金をし、その後、認知症も疑われる状態で寄附の一部返金のみでの和解や返金を求めない旨の合意書、いわゆる「念書」を書かされ、現在は返金請求の裁判中の中野容子さん(仮名)は、昨日の衆院本会議でおおつき紅葉議員が、自身の例を挙げ念書の効果について、岸田総理から「新法による寄附に関する規則の確立と相まって、不当な寄附勧誘に関する念書の無効性についても認められやすくなる効果がある」との答弁を引き出したことに、昨年来重ねられてきた審議を経て今回の答弁内容は、より精緻になったと評価。「上告審で不法行為が認められることを信じて闘いを継続していく」と語りました。

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 両親が1億円以上を献金し返金手続きがうまくいっていないという鈴木みらいさん(仮名)は、両親が先祖解怨(霊界にいる先祖を地獄から救うため430代前まで解怨と祝福をすること。全て行うには約1千万円必要とも言われている)の他、教会の聖地に建設中の天苑宮のための献金要請も受けていると述べ、「信者の生活を旧統一教会は考えているのだろうか」と疑問視しました。

 ジャーナリストの鈴木エイトさんは、(1)内装費用が更に必要なため天苑宮の1家庭あたりの献金ノルマが183万円から1.5倍になっている(2)韓国に送金できていないものがかなり有り、5月5日の奉献式に日本の信者が参加する際に運ばせるのではないかという話がある(3)先祖解怨に関連し、今後は祝福2世を霊媒師として教育し、文鮮明氏が降臨したという設定で先祖解怨を進めようというプロジェクトがある(4)被害者救済法施行後も変わらずに先祖解怨や伝道が行われている(5)解散命令請求が通っても一般企業と同じように税金を納めた上で、献金集めや伝道活動はできると報告している――など実態を説明しました。

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 厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課からは、教会へ養子縁組に関する関係法令の遵守等の通知を行ったこと等について説明がありました。

 柚木道義議員は、(1)被害者救済法の罰則・行政措置は法施行後1年以内に施行となっていることから年度内の施行(2)法令等違反に該当すれば、解散命令請求要件にあたるとして、養子縁組あっせんについて厚労省は警察と連携し、刑事告発を含めた対応に踏み切る――などを求めました。

 山井和則議員は、念書があるにもかかわらず返金されたのは岸田総理の答弁のおかげであり、「消費者庁が頑張って答弁を書いてくださった」と述べました。

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※ヒアリングのライブ配信や録画の配信は不可としています。今回のヒアリングは、被害者保護の観点から、中野容子さんは顔出し不可・音声はそのまま、オンライン参加の鈴木みらいさんは顔出し不可・音声は変え、またいずれも仮名です。