参院本会議で22日、21日に続き菅総理の施政方針演説など政府4演説に対する代表質問が行われ、会派を代表し、立憲民主党の田名部匡代議員が登壇。田名部議員は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策や農林水産業政策を中心に(1)GoToイート事業の停止(2)適切な検査体制(3)中小事業者に対する一時金支援の対象(4)食料自給率(5)農林水産物の輸出戦略(6)家畜伝染病への防疫措置(7)吉川元農水大臣の収賄罪に関する第三者による検証体制(8)農林水産政策に取り組む基本的姿勢(9)性暴力被害者の実情を適正に考慮した法改正(10)東日本大震災から10年(11)コロナ禍での災害対応(12)選択的夫婦別姓制度――など、多岐にわたる課題について菅総理はじめ政府の見解をただしました。
質問ではまず、大雪被害への対応について、「雪国では地吹雪による視界不良だけでなく、除雪により1車線が利用できなくなるなどで各所で渋滞が発生し、緊急車両の移動や食料・燃料の輸送に影響が出ることもある」と指摘。「現段階で農林水産関連施設等の被害も9000件を超え、農作物等全体の被害総額は30億円以上と試算されている。この先、除雪費の不足も考えられ、必要に応じた十分な支援をお願いしたい」と求めました。
これに対し菅総理は、「高速道路とそれに並行する国道を広範囲に同時に通行止めするなど人命の安全確保を最優先に対策を講じる。地方公共団体が適切に道路除雪を実施できるよう、支援をしていく」「大雪については政府としてしっかり対応する」などと答えました。
COVID-19対策をめぐっては、感染者数の急拡大に加え、感染拡大の影響による深刻な失業の実態、過去最多となる飲食店の倒産件数などに触れ、「まずは徹底してコロナを封じ込め、倒産や廃業することなくこの危機を乗り切っていただくことが重要」だと強調。第3次補正予算については「GoToイートは一度立ち止まり、持続化給付金や家賃支援を続けるべきではないか」と問いましたが、菅総理は「GoToイートについては、各都道府県で感染状況を踏まえて運用を見直している」と答弁。中小企業者に対する一時金の支援については、政府による緊急事態宣言発令地域のみが対象になると答え、地方自治体による発令地域は地方創生一括交付金などにより対応されるのではないかとの考えを示しました。
農業政策に関して田名部議員は、国家戦略特区諮問会議による提案で、農水分野で国家戦略特区による企業の農地取得を全国に拡大する話があることを取り上げ、「現在、特区として企業の農地取得が認められている地域でも、ほとんどがリース方式で農地を利用し、企業が農地を取得しなくても農業経営をされている。現場の実態や現場の要請に関係なく強引なやり方はやめていただきたい」と主張。「菅総理は安倍前政権が続けてきた、⺠間議員による提案を重視する路線をそのまま継承していくつもりなのか、美しき豊かな農山漁村を目指される総理の農林水産政策に取り組む基本姿勢をお聞かせください」と迫りましたが、菅総理からは現場の声に応える明確な姿勢は示されませんでした。
田名部議員は最後に、「いつも『政治は困っている人のためにある』と話し、困難な時も『俺たちが頑張らなくてはどうする』と背中を押してくれた。『もう一度政権交代を目指し、国民のための政治をやろう』と声をかけていただいた」と、あらためてCOVID-19で亡くなられた羽田雄一郎議員を偲び、「総理はまずは自助、共助公助。まずは自力でとおっしゃるが、世の中にはぎりぎりのところで、我慢の限界のところで頑張っている方がたくさんいらっしゃる。みんな必死に頑張っている。その姿が見えていらっしゃるのでしょうか」と問いかけました。「羽田雄一郎議員が国民のために、苦しんでいる人たちのためにとおっしゃってきたことを、これからも立憲民主党の仲間と大事にしながら、国民の皆さん、あなたのための政治を行う。立憲民主党は『命と暮らしを守る』、その政治を実現させていく」と力を込め、質問を締めくくりました。
田名部議員は冒頭、21日の代表質問での水岡俊一議員に対する菅総理の答弁に言及。「コロナ収束は与野党超えて取り組むべき課題であり、私たちはこの間極めて協力的な対応をし、積極的に政策提言を行ってきた。しかし昨日の総理の答弁は誠実とはほど遠いものだったのではないか。総理はあらゆる機会を通じて国民に説明する責任がある。長さではないが丁寧な説明をしていただきたい」と苦言を呈しました。
野党側は21日、代表質問での菅総理の答弁をめぐり、あまりにも短いと与党側に抗議。22日の議院運営委員会で自民党の水落委員長は、政府側に丁寧に答弁するよう申し入れたと報告しました。