衆院予算委員会で22日「経済情勢、グリーン社会の実現等内外の諸課題」に関する集中審議がおこなわれました。

 立憲民主党のトップバッターとして質問に立った菅直人衆院議員(元総理)は、東日本大震災から10年を前に、東日本大震災と原発事故で亡くなられた方、被災された方にあらためて哀悼とお見舞いの意を表明。当時の総理として、生きている限りこの問題に取り組んでいく決意だと力を込めました。

 その上で、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と東日本大震災・原発事故とでは、性格は違うが危機管理や緊急事態の面では共通する部分があると指摘。当時自身は総理として、専門的な立場から近藤駿介・原子力委員会委員長に、最悪の状況でどのようなことが予想されるかをシミュレーションしてもらい、それを防ぐためにはどうすべきかを考え、対応をしたと振り返り、「今回のCOVID-19で最悪の状態をどう想定されているのか、基本的な考えを聞かせてほしい」と尋ねました。

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自身が指示し、作成してもらった「事故が収束できなかった場合の強制移転の区域(170km)と移転希望を認める区域(250km)のシミュレーション」

 菅総理は、「最悪を想定するのは危機管理の要諦だと思っていると述べる一方、最悪の状態については「さまざまな事態が考えられる。例えば変異株の問題とか、それにワクチンがきかなくなるとか、いろいろなことが想定されるが、そこには対応できるよう全力を挙げている」などと頼りない答弁に終始。菅議員は、「変異株など新しいことに対応されるのは当然必要だが、1年間いろいろなことが起きているなかで、全体を見通しての最悪のシナリオが菅総理、菅政権には見えないことが大きな問題だ」と断じました。

 菅議員加えて、自身は10年前の事故発生後数日の間に、当時の野党第1党の党首である自民党の谷垣総裁から話を聞いたことにも言及し、野党党首との会談を開くよう提案。「必要があればお願いすることはあり得る」と答える菅総理に対し、「必要な時だと思うから提案している。ぜひその必要性を考えていただきたい」と求めました。

 次に、菅総理が掲げた「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする(カーボンニュートラル)」目標をめぐっては、菅議員は「私も大賛成」とした上で、これを口実に原発の再稼働や新設しようとする動きがあると問題視。東京電力・福島原発事故以後の2011年から19年度の電源構成では、原発による発電量は全体の3.3%に過ぎず、これに対し水力・太陽光・風力・地熱・バイオマス発電量は2011年の9.4%から2020年は18.1%と倍増していることや、中国では再エネの導入を急拡し、昨年1年間で原発120基分の再エネを整備したという報道に触れ、「日本でもすべての電力を再エネで供給することが可能だと思っている」と主張しました。

 そのための解決策として、農地の上に太陽光パネルを設置し、耕作しながら太陽光発電を行う「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」を提案。「営農型太陽光発電、農業収入と売電収入と両方入ってくるやり方を農水省として進められている。日本には約400万ヘクタールの農地があり、1ヘクタールあたり約500キロワットのソーラーパネルを設置することができる。年間日照時間約1000時間とすると、2兆キロワットアワーとなり、今日本が使っている電気の2倍だ。4割の農地でソーラーシェアリングをやれば、日本で必要な全電力を賄える。農地の経営も安定し、菅総理が目指す『地方活性化』にもつながる」などと説きました。これに対し野上農林水産大臣は、さまざまな課題をクリアする必要があり慎重な検証が必要とした上で、「地域活性化にする形で導入をしっかり進めていきたい」と発言しました。

 菅議員はまた、水素はエネルギーとして利用する際にCO2を排出しないことから、「再エネ水素社会」を掲げ、水素の利活用を主張、政府に対して取り組み推進を求めました。

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