衆院予算委員会は22日、集中審議をおこない、立憲民主党の2番手として重徳和彦議員が質疑しました。重徳議員は、第2次安倍政権以後の農政において、行き過ぎた経済重視により農地コミュニティの視点が欠落していることを指摘。中山間地域と都市部を一体として考え、小規模家族農業の持つ多面的な価値を認めて十分な対価を支払うことにより、「小さな農業をしっかり守るべきだ」と主張しました。

 吉川元農水大臣が鶏卵業者の代表者から賄賂を受け取っていた事件について取り上げ、「2つの点で国民生活に影響を及ぼしかねない重大な問題がある」と述べ、(1)政策がお金で動いている(2)卵という食材を通して国益を大きく損ねている――ことを問題としてあげました。重徳議員は、「大臣は単なる有力議員ではない決定権限のある別格の議員。金で動いていると見られること自体が疑惑を招く」と強く指摘し、「企業団体献金の受け取りは大臣の任期中は自粛するルールに変更するように見直してはどうか」と大臣規範の改正を提案しました。しかし、菅総理は「大臣が自ら律すべき規範として定めており、大臣規範を改正する必要はない」と繰り返すのみでした。

 今回の贈収賄事件が、本来の動物の生き方を重視する環境を整えるアニマルウェルフェア(動物福祉)という欧州で進められている考えに業界が反対するため、吉川元大臣にお金が渡ったことであると重徳議員は説明。こうした姿勢について重徳議員は、「日本のアニマルウェルフェアに対する考えは堂々と国際社会に向けて上手に伝えれば良い」と述べた上で、「国際的に日本の立ち位置がアニマルウェルフェアに消極的と見られるだけじゃなく、『日本はまだ賄賂文化なのか』と見られる」と問題を指摘しました。

 また重徳議員は、自身が座長を務める野党共同会派の「安倍農政検証ワーキングチーム」で報告書をまとめたことに触れ、第2次安倍政権以後の農政は、行き過ぎた経済重視で農地コミュニティの視点が欠落していると指摘。一方でワーキングチームでは、小さな家族農業の価値を全面的に応援し、JAの協力を得て、地域や学校で食農教育を進めることにより食料自給率を高め、地域の政策を一体的に推進することを目指していると紹介しました。そのうえで、「小規模家族農業の持つ多面的な価値を正面から認め、政府が十分な対価を支払って小さな農業もしっかりと守っていく必要があると思う」と述べ菅総理の見解をただしました。菅総理は、「農林水産業を中心とする所得を引き上げることが極めて大事だと私自身思っています。 安倍政権の中で農協法の60年ぶりの改正、漁業法、森林法を70年ぶりに改正を行って、所得を少しでも引き上げる方向に農林水産を持っていきたい。そういう思いで取り組んでいる」と答弁。重徳議員は、「われわれの危機感はそういうレベルを超えている」と述べ、農業人口が激減していることを説明。「日本の農業人口がさらに減ったら30年後は、われわれの子どもたちはもう輸入で食べていくことが果たしてできるのだろうか。今の国際情勢で輸入に頼りきるということは非常にリスクがある。災害だってもっと酷くなるのじゃないか」と危機感を示しました。

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 さらに重徳議員は、ワーキングチームで国立農業公社という構想を打ち出していることを紹介しました。この構想は、農業をしたい人を一括採用して、技術指導し、中山間地域を含む田畑のマッチングをおこない、安定した所得を国が保障すると説明。「働く先を失う方が増え、若い人が先行きを見通せない中で、大胆なプランが必要ではないか」と菅総理に提案しました。

 最後に、防衛施設周辺の土地の所有や利用状況を調査し、権利移転の際には事前届け出制を導入する法案を政府が提出することを取り上げました。この法案が防衛施設周辺土地の不適切利用に対して勧告、命令、罰則は出せても、農地や森林水源地は対象外で調査対象としないことを「食糧生産、水源地という意味では十分な価値があり、外国の方から見れば喉から手が出るほどほしい資産だ」と指摘。その上で、「対象に農地、森林を含めることが国土・食の安全保障にも資するのではないか」と提言しました。菅総理は、「新法は国境・離島で農地森林を対象としない。農地法、森林法で食料の安定供給・保全を目的に届け出措置が講じられている」と答弁するのみでした。重徳議員は改めて「安全保障の観点からこの問題をとらえてほしい」と要望しました。

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