衆院本会議で2日、政府の2021年度予算案について「立憲民主党・無所属」会派を代表して武内則男議員が反対討論をおこないました。
武内議員は、わが国に新型コロナウイルスの感染者が出始めてからすでに一年あまりが経ったと振り返り、亡くなられた多くの方々に哀悼の意を表すとともに、昨年末、検査を受けられないまま急逝した羽田雄一郎前参院幹事長を悼み、引き続き、最大限の緊張感をもって国政に臨む決意を述べました。その上で「国民には緊急事態宣言を出して、厳しい自粛を求めておきながら、政府・与党の幹部が、こそこそと深夜まで会食を繰り返していたことは、まさに言語道断であり、同じ国会議員として恥ずかしい限り。自らの行動を一層戒めるとともに、政府・与党の諸君には、改めて猛省を求めます」と苦言を呈しました。
安倍政権、菅政権の驕り、緩み、たるみは看過しがたいものがあるとし、桜を見る会の問題、森友・加計学園問題、河井克行元法務大臣夫妻に係る選挙買収事件、カジノ導入に絡む収賄事件を例に挙げました。また、コロナ禍の最中に起き、予算委員会審議でも焦点となった菅総理の長男が出席した総務省接待問題、前農林水産大臣の金銭授受問題及び農水省の接待問題に関して、「もやは呆れ返るほかはありません。どこまで安倍・菅・自公政権は腐りきっているのでしょうか」と強く非難しました。
また、安倍政権、菅政権での新型コロナウイルス対策について「突然、使われもしない布マスクを配ってみたり、思いつきのように一斉休校をしてみたり、給付金の対応がブレにブレたり、事業者への補償が足りなくなったり、生活困窮者への支援が遅れたり」したと振り返り、この間の政府の対応は、まさに後手後手の繰り返しで、何もかも小出し、結局は中途半端の極みだったと指摘し、対応を改めるよう政府に強く求めました。
武内議員は、本予算案に反対せざるを得ない理由として、最優先すべき感染防止対策の予算が予備費の5兆円を除いては、決して多くないこと、政府予算案は昨年12月に編成されたものであり、その後の第3波や緊急事態宣言発出に伴って必要とされる予算が盛り込まれておらず不十分であること等を挙げました。
政府案では不十分なことから、立憲民主党は予算委員会に組み替え動議を共同提案したことを報告しました。その内容について、新型コロナウイルス対策関連では、(1)病床や療養施設の確保のため、国がより積極的に関与するとともに、収入の減ったすべての医療機関への経済的支援を行うこと、医療従事者等への再度の慰労金支給を行うことなど、「病床の確保や医療機関支援のため」に3兆円(2)ワクチン接種体制の整備・充実や、エッセンシャルワーカーへの定期的公費検査の実施、コロナ検査機器やゲノム解析の普及・促進、保健所の体制強化や出入国管理など、「再燃防止策・封じ込め策のため」に2兆円(3)生活困窮者や低所得の子育て世帯に対する給付金の支給や、緊急小口貸付、休業支援金の延長、雇用保険の特例や学生支援など、「暮らしを守るため」に7兆円(4)事業規模に応じた持続化給付金や休業支援金の給付、無利子無担保融資の拡大・延長、雇用調整助成金特例の延長、地域公共交通機関へ支援など、「事業を守るため」に22兆円――という充実した内容であることを説明しました。
また、コロナ対策以外の予算として、保育士・幼稚園教諭・介護・障害福祉従事者等の処遇改善や小中学校における給食費無償化、児童手当特例給付の所得制限の撤回・廃止、消費者行政の強化、DV被害者支援、農業者戸別所得補償制度の復活・充実など、「持続可能な社会の実現や、将来に向けた先行投資等に必要な予算の確保のため」に2兆円を計上していることも紹介しました。
残念ながらこの組み替え動議を委員会で与党が否決したことを取り上げ、「与党議員は今回の感染拡大の実態と、それに伴う国民の窮状が、はたして本当に見えているのでしょうか。仮にそれが見えていないなら論外であり、見えていてなお無為無策を貫き通すなら、無責任の極みであります」と断じました。
その上で、「政府案は、新型コロナウイルス対策という、私たちにとって今、最も必要とされている内容が、極めて手薄となっている一方で、本来なら厳しく精査をして、不要不急な部分をカットすべき従来型の既存予算が、相も変わらず膨張し続けているという、まったくもって理解に苦しむ内容となっている。このような予算案を、私たちは決して容認することはできない」と述べ、討論を締めくくりました。
与党等の賛成多数により2021年度予算案は可決され、参院に送付されました。