衆院本会議で4月1日、「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」が審議入りし、岡島一正議員が会派を代表して質問に立ちました。予定原稿は以下のとおりです。
「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」に対する趣旨説明質
立憲民主党・無所属 岡島一正
立憲民主党の岡島一正です。私は会派を代表して災害対策基本法等の一部を改正する法律案について質疑を行います。
冒頭、岩手県大船渡市、愛媛県、岡山県など、各地の山林火災で被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げますとともに、消火活動に従事された方々に敬意を表します。また、ミャンマー大地震で、ミャンマーとタイで甚大な被害が発生しています。亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。日本政府においては被害が甚大なミャンマーへの最大限の支援を講じるようお願いを申し上げ、質疑に入ります。
さて、政府は今回の災害対策基本法等の改正にあたり、昨年12月20日に官邸で、防災立国推進閣僚会議を開いていました。議事録を見ると、石破総理大臣は「本気の事前防災」を進めると述べています。そして、それは人命、人権最優先の「防災立国」を確立するためとしていました。防災立国、それも我が国が目指す国のあり様であることには私も賛成です。ただし、石破総理が政府の防災政策について「本気の事前防災」とキャッチフレーズを語ったのは違和感を覚えます。石破総理は「これまでの自民党政権の防災政策は本気ではなかった」「本気ではない防災政策の下では国民への責任は果たせていない」と認識していたということなのでしょうか。
私は現在も東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会に所属しておりますが、2021年秋まで、災害対策特別委員会で野党の筆頭理事を務めさせて頂いた頃を振り返ると、委員の方々は与野党を問わず「皆さん一致して本気の防災対策」に取り組んでおられました。災害対策に関しては政党を問わず委員もそして政府もいつも本気でした。
石破総理が事前防災に取り組むというなら「防災立国を目指す事前防災」と語るべきだったのではないでしょうか。本日、私は石破政権に対して私たち立憲民主党の災害対策に対する本気の思いをも改めてお示し致したく壇上に立ちました。与野党を問わず国会あげての災害対策に向けて、私は災害対策基本法等の改正について「Constructive Engagement」建設的関与として質疑を行います。
坂井大臣、赤澤大臣におかれましては、是非とも真摯にお聞き頂きご答弁頂きたいと思います。 よろしくお願い致します。
1 大船渡市の山林火災では、二次災害防止のため一部の送電を停止したほか、今治市においても市内全域が停電になる可能性が危惧されるなど山林火災による生活インフラへの大規模な影響が露呈いたしました。
坂井大臣におかれましては3月16日に大船渡市の被害状況を視察されたと聞いております。最近、頻発する山林火災をみて、どのような教訓を得たのか、今後の対応に向けての見解をお伺いいたします。(坂井防災担当大臣)
2 本法律案の内容について質問いたします。能登半島地震では発災当初、半島特有の道路事情のほか、ボランティアの受け入れ体制が整っておらず混乱したことが、政府の「災害対応検討ワーキンググループの報告書」で指摘されています。今改正案では、国や自治体に協力して、避難所の運営や炊き出しなどの業務を行う団体を、被災者援護協力団体として国が事前の審査会を通して登録する制度を創設し、これにより登録を受けた団体はいわば国によるお墨付きを受け、災害発生直後で混乱しかねない自治体側も登録団体を信頼して協力を求めることが可能となるとのことであります。登録には、実績が相当程度あることが要件とされていて慎重な審査も必要だと思います。しかし、その反面、実績の乏しい団体はボランティア意欲があっても、何度か災害を経ないと登録団体になれないということになります。
経験や実績の少ないボランティア団体や個人ボランティアの意欲を損なうことのないよう、制度が運用されることを期待しますが、大臣の見解を伺います。
また、民間の力は重要ですが、これは本来、国が担うべき公助の民間任せ、官製ボランティアとなるとの懸念も生まれます。これについても坂井大臣の見解をお伺いいたします。(坂井防災担当大臣)
3 災害対策基本法等の改正にあたり政府は内閣府に防災監という次官級ポストを新設するとしています。現在の内閣府防災は局長級の政策統括官が事務方トップであることから各省との連携を進めていくにあたって次官級の職員を置く事は必要であると内閣府から説明を受けていますが、役職という形だけでは十分ではなく、いかに機能させるかが問われています。
石破内閣が意図する防災監の役割とは何か、そしてそれによって今後、どのように国の防災の対応が変わっていくのかを坂井防災担当大臣に伺います。(坂井防災担当大臣)
4 防災監は、防災担当大臣を助け災害に関する事務を統理すると規定されていますが、その事務からは原子力防災に関するものが除かれています。東日本大震災による福島第一原発事故以降、原子力災害を含めた複合災害への対応も焦点となっています。
防災監が災害対応の司令塔を謳う一方で、原子力災害は別枠というのは何故なのでしょうか。防災の司令塔には原子力防災を含めた一体的な組織、運用も求められていると考えますが、大臣の見解を伺います。(坂井防災担当大臣)
5 防災監は石破総理がアメリカの連邦緊急事態管理庁FEMAに倣う組織として令和8年度の設置を目指している防災庁の長官とも目される役職だと思われます。防災庁の設置に向けて政府は今年度から内閣府防災の予算を約146億円・定員220人へと前年度に比べ倍増したと承知しています。私は政府の防災体制強化への姿勢には賛成です。しかし安倍政権時代、政府は日本版FEMAの設置については否定的な答弁ばかりでした。それが何故、設置に前向きと一変したのでしょうか。
そもそも平成27年に「危機管理組織の在り方に係る副大臣会合」が出した報告書において、「日本版FEMAのような危機管理対応官庁の創設等の抜本的な組織体制の見直しの検討については積極的な必要性は直ちには見出しがたい」と結論が出されました。
当時の副大臣会合の座長は、現在の赤澤防災庁設置準備担当大臣です。赤澤大臣は現在の内閣府防災の体制はパンク寸前だと仰っていますが、そうであるならば、これまでの政府の防災体制は誤りだったという事なのでしょうか。
防災庁が昨年暮れになって突然に必要となった理由、それまでと何が急に変わったのか、災害対策上の客観的な説明を赤澤大臣に伺いたいと思います。(赤澤防災庁設置準備担当大臣)
6 米国のFEMAには、EMI(Emergency Management Institute)という部局があり国や州、地方の危機管理担当者、ボランティア組織を対象にして危機管理訓練・教育をしています。防災力の強化には組織の強化、連携もさることながら実際に連携に当たる人と人の連携、訓練こそが必要となっています。
防災庁を目指すなら組織の人材を作るEMIのような防災教育機関こそ検討すべきではないでしょうか。赤澤大臣の見解をお伺いいたします。(赤澤防災庁設置準備担当大臣)
7 福祉関係者への従事命令について伺います。
能登半島地震において、災害関連死とされた方は直接死とされた方の人数をゆうに超えました。この状況を踏まえ本改正案には災害救助法による救助の種類に福祉サービスの提供が加えられます。これは被災者支援の充実に繋がり災害関連死を減らし結果として犠牲者の総数を減らすことにもなるでしょう。
しかし福祉関係者について、単純に従事命令の対象に加える事は看過できません。そもそも従事命令は国民各自の自発的な協力が得られず、かつ、協力が欠かせない場合に、最後の手段として都道府県知事に付与された強制措置の一つで、一定の医療、土木建築工事または輸送関係者を救助に関する業務に従事させる権限です。命令に従わない者は6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる事となっています。
この点につきましては、能登半島地震発災後、地元自治体の声も聞きながら、我が党におきましても議論を重ねて参りました。その中では、福祉関係者という幅広い分野にわたる職域の概念を政令により限定をかけるとはいえ、そのまま従事命令の対象とし罰則の対象にもすることにはためらいを覚える、そもそも自発性の強い福祉関係者に対して罰則規定は不要ではないかという意見が大半でした。福祉関係者については従事命令の対象にしたとしても、罰則規定は不要と考えます、坂井大臣にお考えを伺います。(坂井防災担当大臣)
この議論の際に思い返されたのは東日本大震災です。東日本大震災では、多くの公務員や消防団員がその職務において亡くなっています。現在の防災基本計画は、この教訓も踏まえて作られたものと承知しております。
石破総理は、「人命・人権最優先の防災立国を構築する」と発言されていますが、このご発言や現行の防災基本計画と、刑事罰による威嚇付き従事命令とは相容れないと受け取れます。坂井大臣、政府のお考えをお示しください。(坂井防災担当大臣)
結びに、私は自然災害に象徴される災害対策には政党や政派、個々の政治家の壁はあってはならないと考えています。自然のもたらす災害から社会事象や人によって起こされる社会的災害や複合災害など様々ですが、どの災害に対しても、国会、政府は迅速にして冷静に協力して取り組むべきものと考えています。議員の皆さん、いつどんな災害があっても対応できる国会として、災害対策を進めてまいりましょう。これにて私の質疑を終わります。ご清聴ありがとうございました。
20250401「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」趣旨説明質疑 岡島一正議員.pdf
