衆院本会議で2日午後、本予算の採決に続き「所得税法等の一部を改正する法律案」が議題となりました。採決に先立ち、法案に反対する立場から、櫻井周議員が討論に立ちました。櫻井議員は今回の改正は「理念と展望を欠いている」として、政府法案に対して反対する意見を表明しました。

■「信なくば立たず」 納税者が求める政府への信頼

 冒頭、今年に入ってから総務省と農林水産省の幹部が相次いで懲戒処分を受けていることについて触れた櫻井議員は、「国民の皆さまに税金を納めていただくためには信頼が必要不可欠。だが国民の信頼を裏切るような政府の問題が相次いでいる」と指摘。政府に襟を正すよう求めました。

 森友学園問題に関し、赤木俊夫さんが決裁改ざんの経緯を記録したとされる「赤木ファイル」の国会と裁判所への提出を強く求めるとともに、昨今の官僚の不祥事については、その再発防止と徹底的な事実解明を求めました。その上で「『国家公務員倫理カード』の最初には『国民全体奉仕者であることを自覚し』とある。官僚の皆さんには、ぜひ原点に返っていただきたい」と訴えかけました。

■わが国の課題を解決するための税制

 櫻井議員は、「税制」が人々の行動に影響を与え、社会を形づくっていくという意味の「税は国家なり」という格言を引用しながら、「わが国の社会、経済が抱える課題は何であるか、その課題を解決するために税制で何ができるのかを考え、社会を良い方向に変えていくことが、われわれ立法府に身を置く者としての責務だ」と訴えました。

 わが国がかかえる眼前の課題としては、新型コロナウイルス感染症への対応を挙げました。感染症の拡大を受けて昨年の法改正により導入された納税猶予特例制度や、厚生年金保険料等の納付猶予特例が相次いで打ち切られたことを取り上げ「感染症の収束が見通せない現下のこの状況で、なぜ特例制度を打ち切ったのか。猶予特例の延長だけでなく、減免措置を創設すべきだ」と政府の対応を批判しました。

 またコロナ禍以前から続いているわが国の課題として、少子化、高齢化、人口減少、経済格差拡大、実質賃金低迷、個人消費低迷、デフレーション、男女不平等などを挙げました。特にバブル経済崩壊以降、わが国の経済が30年に及んで停滞しつづけた結果「分厚い中間層がいつの間にか、すっかり細ってしまった」と指摘。「分厚い中間層を取り戻す。経済格差是正。これこそが、わが国が取り組むべき課題だ」と主張しました。さらにグローバリゼーションとイノベーションによって、経済格差が拡大しやすい状況に世界が置かれているとして「経済格差を積極的に縮小させる仕組み」を社会に組み込むべきであり、そのために「所得再分配機能を強化する税制として、累進制の強化、資産課税の強化、直間比率の是正などが必要だ」と訴えました。

 所得再分配機能の強化のため、政府が取り組んできたとする所得税の最高税率の45%への引き上げ、金融所得課税の20%への税率引き上げ等については「それでは不十分」として、金融所得課税の総合課税化を主張しました。政府が住宅ローン控除の特例を延長しようとしていることについても「空き家戸数の割合が1割を超えており、住宅市場は供給過多の状況。しかも住宅ローンを組めない低所得者層にはほとんどメリットがない」と反対を表明しました。今年3月末に適用期限を迎える「教育資金援助の贈与税非課税措置」を、政府が2年間延長しようとしていることについては「これは贈与に対する優遇措置。経済格差を固定化するものであり、とても容認できない」としました。

 また経済格差是正のための「直間比率の是正」には、政府がこれまでやってきたように間接税の比率を引き上げるのではなく「累進的である所得税や法人税などの直接税の比率を引き上げるべきだ」と主張しました。2023年10月に導入される予定の適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度についても「ただでさえ苦しい状況に追い込まれている事業者が多い中、更なる事務負担を強いることになる。免税事業者に対する取引排除による廃業の増加や、不当な値下げ圧力等が生じる懸念もある」と主張し、導入の延期を求めました。

 最後に「コロナ禍という未曽有の危機にあって、税制が果たすべき役割は小さくない。そうであればこそ、時宜を得た適切かつ十分な改正を行うことが政治に求められている」と訴え、反対討論を結びました。

20210302衆議院本会議「所得税法等の一部を改正する法律案」に対する反対討論(予定稿).pdf

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