参院予算委員会で5日、2021年度予算案に関する基本的質疑が総理入りで行われました。立憲民主党の1番手として質問に立った小西洋之議員は、(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策(2)東北新社等の接待問題(3)東北新社の放送法違反事案――について取り上げ、菅総理らの見解をただしました。

■COVID-19対策

 COVID-19対策をめぐっては、首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言について、政府は今月7日の期限を2週間延長し、21日までとする方針を示していることから、再度の延長をしなければならないことの責任について、そもそも1月7日の発出のタイミングが適切だったのかどうかを含めて菅総理に答弁を求めました。

 菅総理は、病床のひっ迫など厳しい状況であり、延長をしなければならないことには「率直に申し訳ない」と述べる一方、発令のタイミングについては専門家の意見を踏まえ適切に判断したものだと強弁。小西議員は、西村経済再生担当大臣が発令時の衆院議員運営委員会の質疑でも「(2020年)12月23日の専門家の分科会でも緊急事態宣言を出すような状況にはないとされた」と発言しているが、同日の分科会の議事録には、そうした発言はないと指摘し、発出が遅れた理由を分科会での議論とするのは詭弁だと断じました。

 その上で、新たな変異株の可能性も含め、宣言解除後に感染が拡大する脅威について質問。独立行政法人地域医療機能推進機構理事長(初代)で政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、「再拡大、リバウンドの可能性が特に高いのは首都圏。さまざまな特殊性があり、現在でも感染の実態すべてが分かっているわけでない。諮問委員会の総意として、この2週間をどう活用するか、延長の意味を確認すること。最も大事な目的は、感染の拡大があっても対処できるよう、検査も含め体制を強化することだ」と答え、同日正式に延長が決まった際には7つのポイントを示す予定だと述べました。

新型インフルエンザ等対策特措法改正案付帯決議.jpg

 小西議員は、COVID-19に係る医療体制や検査体制の構築に関し、政府は昨年3月の時点で地方自治体に通知を出し、患者推計や病床確保計画の策定等を含め、体制整備を進めるよう求めてきたにもかかわらず、想定されていた冬場の感染拡大に医療提供が追い付かず、医療崩壊を招いたのは政府の責任だと指摘。今回改正されたインフルエンザ等対策特別措置法の付帯決議に、自身が提起し、盛り込まれた「検査、保健所、医療提供体制を計画的に確保するため、国として基本的な方針を示す」「対策の実施状況について適時に公表する」ことなどが必要だと主張。国として基本方針を作る決意を尋ねましたが、菅総理からは前向きな答弁は聞かれませんでした。

■東北新社等の総務省接待問題

 菅総理長男が係わる東北新社等の総務省接待問題については、菅総理の長男は衛星放送課にはあいさつに訪れる程度であったにもかかわらず、総務省幹部との会食に20回も出席していることから、「最高幹部を招くための接待要員だったのではないか」と指摘。これに対し菅総理は「私からすればあり得ない」と根拠なく反論、「政治責任はないと考えるか」と迫る小西議員に対し、「家族が関係した事案で、結果的に公務員倫理法の違反する事態になったのは申し訳なくお詫び申し上げる」と述べるにとどまりました。小西議員は「私はかつて衛星放送課の課長補佐だったが、菅総理の長男あるいは長男が勤めている会社から違法な接待を申し込まれたとき、菅政権、安倍政権のもとでどうやって拒否することができるかを考えているが思い浮かばない。菅総理の長男から接待を申し込まれて断る選択肢はあったかと思うか」と述べ、菅総理に答弁を求めましたが、従来の答弁をなぞるだけでした。

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■放送法違反事案について

 その上で、小西議員は、東北新社の放送法違反事案に言及。放送法では、放送における内国性を保つため、地上波やBS放送などを行う事業者に対し、外資比率は20%未満という規制を設けています。しかしながら、東北新社は2017年1月に「BS4K」放送の認定を受けた後の同年3月時点で21.23%と、外資規制を超えていることから、違法ではないかと追及。総務省の担当者は「放送法103条第1項では『外資規制に反することがあったときには認定取り消さなければならない』と規定されている」と答えました。小西議員は「なぜ認定を取り消していないのか。菅総理の長男が働いている会社だから取り消さなかったのではないか」と問題視。東北新社が、1月に認定を受けた後1秒も放送しないまま、なぜか17年10月、子会社「東北新社メディアサービス」にその地位を承継、2017年9月末時点での東北新社の外資比率は22.12%と規制を超えていることにも触れ、「認可は無効ではないか」とただしました。総務省は「想定していなかったケースであり、法律関係について整備する必要があると考える」などと答弁。小西議員はまた、この子会社への地位の承継の決裁の最高責任者が当時の情報流通行政局長だった山田真貴子氏(前内閣広報官)だったことも確認し、「放送法がゆがめられているのではないか」と迫りました。

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