立憲民主党は25日、環境省及び経済産業省に風力発電所の建設に向けた環境アセスメントに関わる拙速な規模要件の緩和に対する緊急申し入れをおこないました。
生方幸夫環境・原子力部会長、山岡達丸経済産業部会長、山崎誠環境エネルギー調査会事務局長、近藤昭一、亀井亜紀子両衆院議員は環境省に笹川博義環境副大臣、経済産業省に長坂康正経済産業副大臣を訪ね、申し入れ書を手交しました。
2020年の臨時国会で、菅総理から2050年カーボンニュートラルを目指すとの発言がありました。深刻化する気候変動の影響を考えれば遅い表明ではありますが、大いに歓迎すべき政策です。しかし、その表明を受け、昨年11月に河野行政改革担当大臣の指示で内閣府に設けられた「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」において、再生可能エネルギーに関する開発事業に対する環境アセスメントの規模要件などの緩和の検討が求められ、多方面への影響が予想されるにもかかわらず、十分な議論の時間を持たないまま拙速な判断が求められています。
喫緊の気候変動対策として、いまのエネルギー資源の使い方を見直し、最大限の省エネに取り組むと同時に、必要な電力を調達するために再生可能エネルギーを導入・拡大の必要があることは大前提です。その上で、これまでの地域の自然環境や文化・景観など環境・社会的負荷をかける発電は確実に回避し、環境や地域資産を破壊せず、地域の住民から十分な理解を得られる再生可能エネルギーの導入を促進していくことが必要です。
以上の状況から、次の3項目について緊急の申し入れを行いました。
- 再生可能エネルギーの導入拡大に際しては、地域の生態系・生物多様性を劣化・損失を生じさせること、地域の文化資産や景観を破壊すること、そして、自治体への負担を著しく増加させることが無いよう、拙速な規模要件の緩和を進めないこと。
- 再生可能エネルギーの導入拡大と環境の両立を確実に実現できるよう、風力発電の環境アセスメントについては、規模要件だけではなく、地域の合意形成に影響が大きいと指摘されている立地条件などの要件を設定できるよう検討すること。
- 地域を主体とし、自然保護を重視したエリア等を設定するゾーニング制度の導入や、自治体の負担を削減するため、国と自治体の役割分担を見直す観点から欧州におけるセントラル方式の導入の検討など、早急に検討すること。
申し入れでは、生方環境・原子力部会長からは、昨年12月から検討を開始し、たった3、4カ月で結論を出すというのは拙速すぎる、風力発電には規模要件でなく、立地要件にも大きく左右されるものであり、一律に規模要件だけの議論について問題提起をしました。
山岡経済産業部会長からは、再生可能エネルギーを応援する立場であることを明らかにした上で、地元の風力発電に関わる地域住民とのトラブルなど具体例を含めながら、数字だけでなく、景観など、必要な確認すべき要件について見直すべき、自治体の主体性を生かせるような仕組みを作っていく必要がある、再生可能エネルギーの普及をしっかり進めていくためにも拙速な判断をするべきでないと訴えました。
山崎環境エネルギー調査会事務局長は、風力の導入を進めなくてはいけないことは気候変動対策として大切である前提で、特に3項目目のゾーニングの導入について検討を進めてほしい、環境省として、保護をしなくてはいけないエリアを示し、開発可能なエリアを選んでいくことができるような対策の必要性を訴えました。
近藤議員からは、再生可能エネルギーは気候変動対策として積極的に推進していくべきものだが、その過程で環境が守られないことは大きな問題、総合的には環境アセスメントをどのように見直していくかということは課題ではあるが、今回の件はいささか拙速と考えると懸念を伝えました。
亀井議員からは、大規模な風力発電施設を作ろうとすると、過疎地が対象となることが多く、ある日突然民有地で計画するようになり、地域の合意形成がまったく追いついていないといった状況を地元で見聞きしている、できる限り環境破壊にならないように推進していく必要があると話しました。
長尾議員からは、将来的な規模要件の緩和を反対しているわけではなく、これまでの環境アセスメントを取り巻く議論の経過を踏まえて、エビデンスをもって判断をしていくべきである、立地条件や地域の理解も得られる必要があると訴えました。
笹川環境副大臣からは、再生可能エネルギー導入のため、地方自治体への配慮や地域の合意の必要性について同感である、ご指摘を真摯に受け止めたいとの発言がありました。
長坂経済産業副大臣からは、再生可能エネルギーは2050年カーボンニュートラルを実現するカギであるため最大限の導入を目指したい、自然環境や地域との共生を図りながら事業を進めていくことは重要、日本版セントラル方式も導入していきたいとの発言がありました。
立憲民主党は、気候変動対策としての再生可能エネルギー導入が最大限促進されるよう、自然環境の破壊や地域の合意形成に必要なプロセスを軽視することなく、環境アセスメントの見直しを含めて政府の対応を求めてまいります。