「政府の後手後手の対応が、コロナ変異株のスクリーニング対策にも表れている。次なる危機に対する準備が遅すぎる」――泉健太政調会長。国会内で25日、泉政調会長が定例会見を開きました。

■北朝鮮による「弾道ミサイル」と見られる飛翔体の発射について

 冒頭、泉政調会長は、北朝鮮による「弾道ミサイル」と見られる飛翔体の発射について触れ「これは国連安保理の決議にも違反するものであり、地域の平和安定を損ねる。極めて容認できない挑発行為だ。厳重に抗議をし、強く非難をしたい」と述べました。また「最近はあまりなかったわけだが、どのような意図によるものなのか、やはりアメリカを始め関係国等と分析をしっかり行い、対応する必要がある」「残念なのはこれまで繰り返し――安倍政権、あるいは菅政権が――『条件をつけずにテーブルにつくことを目指す』と言ってきたにもかかわらず、具体的な進展が何もない状況が続いていること。そういった点も含めて政府には対応の強化を促したい」と述べました。

■新型コロナ対策
  1. 感染者数のリバウンドと変異株の危機

     「(緊急事態宣言の解除がなされてから)街中にも人通りが増え、夜の時間になってもかなりの人の波がある。やはりリバウンドの懸念が一段と強まっているという状況だと思う」と、人出の増加による感染のリバウンド・リスクについて指摘しました。

     また国内における変異株の患者の増加についても触れ「国内の変異株の感染者数が、一週間に1.5倍のペースで拡大をしていると、これまでも専門家から指摘をされていた。この変異株が徐々に勢力を増してきていることは明らかだ。しかるに、変異株のスクリーニング検査の割合は、今が5-10%ということで非常に低い。政府の対応が後手後手だというところが、このようなところにも表れている。『次なる危機に対しての準備が遅すぎる』ということに尽きる」と政府の対応が遅れていることを厳しく批判しました。

     「今、いよいよこの変異株スクリーニング検査の割合を40%程度に引き上げるというふうに政府は言っているが、その道筋、あるいはどの機関がどの程度の数、その検査をするのかということはまだ不明確だ。やはり早期に100%実施をするという体制を作っていくべきだ。これをより強く訴えていきたい」と、変異株検査体制の大幅な強化を求めていく考えを明らかにしました。

  2. 変異株の増加による病床のひっ迫リスク

     また変異株の増加により病床がひっ迫するリスクについても触れて「変異株の場合は基本的に全員入院をするということになっているので、やはり病床に与える影響が大きい。いわゆる宿泊療養や自宅療養というものがない状況。そういったことも踏まえた病床の確保を改めて徹底をしていくということが大事だ」と、注意を促しました。

  3. いわゆる「サーキットブレーカー」の導入について

     いわゆるサーキットブレーカー(※)の導入に関し、専門家からもさまざまな議論が出てきていることの背景について、泉会長は「やはり、これまでの政府の緊急事態宣言の発出基準や解除基準が曖昧であるとか、新規感染者数等々、さまざまな数字が上がってはきながらも、結局、政権の判断次第、ということだ。国民・専門家・医療機関から見て、予見可能性に乏しいという状況が背景にあるのではないか」と分析。

     その上で今後、必要な政府の対応について「国民からすれば『いつまで我慢をすればよいのかわからない』し、医療機関の方も『どのように頑張ればよいのかが、今一つ目標が見えない』と仰っている。やはりzeroコロナ戦略でもわれわれは訴えているが、できる限り具体的に数値を国民にお示し、対応していくということが必要だ」と述べました。

    ※サーキットブレーカー:新型コロナウイルス対応で、一定の条件を満たせば自動的に対策を強める仕組みを指す。
  4. 自殺防止対策

     昨年来、コロナ禍により生活環境を就労環境が大きく変わる中で、自殺に至ってしまう方々が増えている状況については「深刻に受け止めなければいけない。特に女性、そして若い方々の自殺者が増加している。こういうところについていかにアプローチをしていくのか。政府は早急に検討を進め、対応していく必要がある」と述べました。またこうした新たに増加した層に対するアプローチを強める支援策として、相談件数の増加に対応できていない電話相談窓口やオンライン相談への支援強化を挙げました。

  5. いわゆる「生理の貧困」について

     コロナ禍において経済的な理由で生理用品を買うことができない、いわゆる「生理の貧困」については、問題への対策を速やかに講じるよう各市区町村に対して要請する「要請文書」のひな形を、全国の党所属自治体議員に対し、24日付で発送したことを明らかにしました。また豊島区において防災備蓄用の生理用品を配布することを決定したことにも触れ「そういった取り組みをできるところでは、全国各地で行っていただきたい」とも述べました。

■デジタル関連法案への対応

 デジタル庁創設などを目指した、いわゆる「デジタル関連法案」(※)への対応について、泉会長は「修正項目をいくつか決めていくことになると思う」との見通しを示しました。その上で、焦点となる項目については「われわれとしてはやはり、まず国民の『個人情報の保護』、これが徹底できるのかどうかという点に注目している。まだまだ日本政府、または各自治体の個人情報保護が不十分なのではないかという懸念があるということだ。またこのデジタル法案は、国がかなり指導して、各自治体にもさまざまな取り組みをさせることになる。自治体の負担、またそれに見合う財政的支援、こういったものが十分かということも重要だ」と述べました。また今後の与野党協議の見通しについては「修正協議はそう簡単ではない、と聞いている。それも踏まえて対応することになると思う」と述べました。

※デジタル関連法案:「デジタル社会形成基本法案」「デジタル庁設置法案」「デジタル社会の形成を図るための関連法律の整備に関する法律案」「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案」「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案」「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案」の6法案からなる、いわゆる「束ね法案」。デジタル庁の創設や個人データの活用推進などを目指す内容。

■法案や関連資料のミス

 今国会の政府提出法案のうち、12府省庁の計20法案・条約の条文や関連資料にミスが判明した件について、泉会長は「これまで国会ではそんなに取り上げられなかったことだが、各所であまりに数が多く相次いでいるということで、今回、問題点が指摘されている」と指摘。その上で「例えばデジタル法案も急遽、政府が関連法案を含めて大量に法案作成をさせることによって長時間労働など、デジタル法案関係部局の働き方にも相当ひずみが出ているのではないか」とこれまでの政府主導の法案作成体制に無理がなかったのか、疑問を提起しました。

 また法文ミスが頻発している背景について「『良い労働環境』というものに特別配慮することなく、兎に角『いついつまでに良い法案を作成せよ』あるいは『資料を全て作れ』ということをやっていた時代には、法文ミスを何度もチェックすることができたかもしれない。しかし今は、やはり『働き方』に配慮する時代だ。こういったミスはやはり生じやすい環境でもある」「さまざまな役所から聞いた説明では、役所の中に相当多くの(法文ミスを防ぐための)ルールがあるということだ。しかし中途で退職をされる方も多くなっており、これまで役所が築き上げてきた、そういう文化みたいなものも、徹底しきれていないのかもしれない」と時代背景も一因となっている可能性について指摘。その上で「引き続き、チェック体制を再構築することを求めていきたいが、文言について、ある程度はAIを活用してチェックするような、新しい仕組みも必要かもしれない」と提案しました。

 政府に求める今後の対応については「これだけのミスがあれば、法案そのものの審査にも影響が生じるということはあり得ることだ。やはり一度、政府の方で総点検をするという中で、さらにミスがあれば、いくつかの法案については『出し直しをする』という判断があるというのは仕方のないことなのではないか」と、一部法案の出し直しの可能性についても言及しました。

■小西洋之参院議員が提起をした裁判について

 憲法53条に基き野党が臨時国会の召集を求めたことに対し、2017年当時の安倍内閣が3カ月間にわたり応じなかったことが、『憲法違反に当たる』と提起した訴訟の東京地裁判決について、泉会長は「『裁判で救済される個人の権利ではない』などとして訴えを棄却したということだ。法理論に従うとそういう判決になるのかもしれないが、やはりこのような訴訟を提起せざるを得ないような状況に当時の安倍政権が持ち込んだということ。要は、ルールに従わずに臨時国会を開催しなかったということが問題。やはり憲法の想定する、この臨時国会召集の運用というものを、われわれとしては、政治的にではあるが、求めていきたい」と述べました。

■重要土地等調査法案について

 国境離島など安全保障上の重要な土地の利用を規制する「重要土地等調査法案」(重要施設周辺および国境離島等における土地等の利用状況の調査および利用の規制等に関する法律)について、泉会長は「閣議決定をされれば、わが党として審査をしていく。現時点で賛成、反対を決めたものではない、ということを改めてお伝えをさせていただく」と述べました。