参院予算委員会で26日に行われた2021年度政府予算3案の締めくくり質疑で、立憲民主党の3番手として森ゆうこ議員が質問に立ち、(1)拉致問題(2)刑法197条の1項(単純収賄罪)(3)総務省接待問題――について取り上げました。

 立憲民主党拉致問題対策本部の本部長でもある森議員はまず、北朝鮮拉致被害者らに向けて発信している、特定失踪者問題調査会が運営する短波放送しおかぜの意義を強調。政府に対し、しおかぜへのさらなる財政支援を求めました。

 菅総理は、しおかぜで政府メッセージを送信していることにも触れ、「朝鮮向けラジオ放送の充実、強化に向けて連携して取り組んでいきたい」と発言。財政支援については「そうしたラジオ放送が的確に行うことができるように、政府としてもそこは対応していきたい」と答えました。

20210326-100908.jpg

 森議員は、拉致問題をめぐっては、安倍・菅政権において何の成果もないと指摘。「国際社会全体が(対北朝鮮経済)制裁を履行する中で、拉致、核、ミサイルと包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す」とする茂木外務大臣が言う方針には「同感だ」と述べた上で、具体的な政府の取り組みについて尋ねました。茂木大臣は「さまざまなルートでの接触を試みている。拉致被害者救出にかかわっているので控える」などと答弁。森議員がバイデン米大統領との会談で議題にすべきではないかとの指摘した、北朝鮮とイランのミサイル開発協力への対応については、「菅総理は、最重要の課題。しっかりと対応していきたい」と応じました。森議員は、「一日も早い拉致被害者の帰国に向けて全力を尽くしていただきたい」と強く求めました。

20210326-103343.jpg

 刑法197条の1項(単純収賄罪)については、森議員は構成要件と主体を確認した上で、「『公務員』に国務大臣、政務三役を含むか」「『職務』とは判例上どのように理解されているか。具体的に担当している職務や当該職務についての具体的な決裁権限がなくても一般的職務権限があれば足りると解してよいか」と一つひとつ上川法務大臣に詰めていきました。

 上川法務大臣は、一般論と前置きした上で、構成要件は「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたこと」(刑法197条第1項前段)、主体は公務員であり、特別職の国家公務員である国務大臣、政務三役はこの「公務員」に当たること、刑法197条1項の「職務」とは、「公務員がその地位に伴い、公務として取り扱うべき一切の実務を言うとされている。判例によると、賄賂と対価関係にある行為が具体的に相当する職務でなくても一般的職務権限内にあれば足りると承知されている」と答弁。森議員は、「つまり、決裁権限がないからいいと言った高市早苗議員(元総務大臣)のブログは間違いだ」と断じました。

20210326-104339.jpg

 森議員はまた、「今回の一連の報道では通信事業者の過剰接待が問題とされているが過剰接待の事案について、一般論として収賄罪が成立するか。平成10(1998)年5月7日の参院予算委員会での刑事局長答弁に変更はないか」と確認。上川法務大臣は、刑事局長の答弁について「接待の場合については、接待が公務員の職務に関する行為の対価の趣旨で行われた場合には収賄罪が成立することがあり、それは具体的には個々の事案ごとに接待の金額のみならず、その内容、時期、経緯等の諸事情に基づいて判断されるべきものだと考えている」などと述べたものであり、今回と同じ、公務員が過剰接待を受けた事案での答弁であること、政府としてこの答弁に変更はないことを明言しました。

 これを受け、森議員は「今回の一連の接待問題について収賄罪が成立しないとまでは言えるか」と尋ねましたが、上川大臣は「個別に判断されるべき事柄」と答弁を避けました。

第1回情報通信行政検証委員会 議事要旨.jpg

 総務省の接待問題をめぐっては、行政への影響を検証する情報通信行政検証委員会が設置され、17日に第1回会合が開かれました。森議員は、その議事要旨に「行政のプロセスは透明性や公平性が確保されたものであるべきであり、その証明責任は総務省にある」とあると紹介。「本当に何も頼まれていないのか、本当に割り勘だったのか、接待を受けていないのか。証明する責任は総務大臣にある」と指摘しましたが、武田大臣は、「委員会の調査には積極的に協力はしている。証明するための検証と調査を第三者機関にやってもらっている。(座長の)吉野弦太(弁護士)さんはじめメンバーの指導を仰ぎながら適宜、適切に、国会に対しては誠意をもって対応していきたい」などと答弁をはぐらかし続けました。

NTT接待と総務省、政界の動き.jpg

 その上で、NTTと総務省、政界の動きを振り返り、武田総務大臣がNTTの澤田社長らと会食した2020年11月11日という時期は、NTTがNTTドコモを完全子会社化するためのTOB(株式公開買い付け)が行われていた時期であったと問題視。武田総務大臣は、「NTTの子会社化は法令上総務省の許認可が必要なものではなく、NTT側の経営判断で実施することが可能とされるもの」だと主張しましたが、森議員は、NTT法第4条で「政府は常時会社の発行済み株式の総数3分1以上にあたる株式を保有していなければならない」と規定しているのは、3分の1以上の株式を保有することで定款を変更させない権利を行使できるためである(会社法309条2項「特別議決」に議決権は、「出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要」とある)と指摘。そうしたことも理解しないまま会食をした武田総務大臣の対応を批判しました。

20210326-105606-1_2.jpg

 森議員は、菅総理が携帯電話料金の値下げを政権公約に掲げたことに、「独裁国家でもないのにどうやってできるんだろうと、ずっともやもやしていたが夕べ気が付いた」と述べ、「議決権を行使することによって、政府の了解を事前に得なければ実現できない。ドコモの完全子会社化は事前に政府が了解していましたね」と追及。これまで公正な市場競争を促すために分社化してきたものを、何の議論もなく方針を変更しての完全NTTドコモ子会社化はおかしいと断じました。

 菅総理は、「競争を促し料金を引き下げる寡占状況から脱却して、引き上げる、競争が働く環境をつくるのが私の公約」だと驚きの答弁。森議員は「とんでもない答弁。国会を愚弄するのもいい加減にしていただきたい。記録がない、記憶がない、確認できない、廃棄した。まともに答弁できない、行政の公正性が保てない、こんな内閣は退陣すべきだ」と述べ、質問を終えました。

記録がない・記憶がない・確認できない・廃棄した.jpg
20210326-110436.jpg