参院本会議で26日、地方税法等の一部を改正する法律案、及び地方交付税法等の一部を改正する法律案に対する審議がおこなわれ、「立憲民主・社民」を代表して岸真紀子議員が賛成の立場から討論しました。
■総務省接待問題、行政の歪み
岸議員は総務省の接待問題について武田良太総務大臣が数十回にわたり同じ答弁を繰り返すなど、真摯な姿勢がまったく感じ取れなかったとし、「コロナ禍で苦しむ人々がいらっしゃる中で、利権に執着するような姿勢でいいのか」と武田大臣に態度を改めるよう求めました。
菅総理の長男が関与する接待問題を発端とし、放送や通信事業の許認可権を持つ総務省との接待が次々と発覚したこと、参院予算委員会の質疑で東北新社が受けていた衛星放送事業の認定が実は「外資規制違反」であったことが指摘されたことを振り返りました。その接待がきっかけで「脱法スキーム」といえる通常では考えられない便宜を図ったのではないかという疑念は、まったく拭い去ることができていないと問題視しました。また、外資規制違反の報告を受けた、受けないで、東北新社と総務省の間で齟齬が生じていることや、総務省が「記憶がない」「文書がない」と答弁を繰り返しているのは、森友・加計問題と同じ構造であり、安倍・菅政権と続く政権への権力の集中と忖度が招いた結果でなないかと指摘しました。そのう上で「行政が歪められていると思わざるを得ない。NTTをはじめとする関連業者から接待を受けたのではないか、とただされながら、誠実な答弁をせず、総務省接待問題の政治責任にも他人事で、国民の疑念や政治不信を誘発するばかりの武田大臣の姿勢は断じて許されない」と厳しく批判しました。
■参院広島選挙区の買収事件
また、昨年の参院選挙の買収事件で有罪が確定した河井案里氏、22日に買収行為を認め昨日衆院に辞職願を提出した河井克行元法務大臣について、「2人の違法行為は、国民に多大な政治不信を招いたことに重ね、国会に説明を果たすという文書が提出されているにもかかわらず、説明責任を果たされないままの議員辞職に至った。コロナ禍で地域経済の悪化から失業や収入減を強いられている方々のことを思うと、これまでに支払われてきた歳費等の問題と合わせ、並々ならぬ怒りを感じる」と厳しく批判しました。また、陣営に1億5,000万円という多額の資金が自民党から提供され、党が陣営を後押ししたと言えるにもかかわらず、菅総理は具体的な説明をせず、二階幹事長が、「党もこうしたことを他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と、まるで他人事のような発言をしていることを取り上げ、「離党や議員辞職で済ませることなく、本人が説明するか総理が責任をもって参議院に説明すべき」と求めました。
■地方税関連2法案について
岸議員は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に1年以上にわたって対応してきた「保健所や病院など命を守る公衆衛生や医療・介護の職場、手洗いなどには欠かせない水道やごみ収集、地域の生活交通等のくらしを支える職場、DV(ドメスティック・バイオレンス)・児童虐待・労働・貧困等の相談支援といった福祉職場、学校や保育など子ども関連職場、10万円の特別定額給付金業務や経済支援、そしてワクチン接種業務を担っている職場などは、地域住民に近い存在として地方自治体に期待される役割はとても大きく、重要」との認識を示しました。
その上で、「 政府がコロナ対策として決定してきた制度や政策も、その多くは自治体の現場に担っていただいている。これまで国と地方の関係は『対等』であるにもかかわらず、自主財源が限られている地方自治体は、国に地方交付税の不足分への対応をいわば人質に取られたような形で、人員削減や行財政改革、さらには市町村合併までも助言という名の政策誘導に乗らざるを得なかった」と指摘しました。しかし、コロナ禍により「むしろ、国が地方に依存している」ことが明らかになり、「役割と財源はセットであり、本法案にあるように、地方交付税をはじめ地方の財源を確保することは当然の結果と言え、総務省があらゆる地財対策に努め、地方交付税等の一般財源総額を交付団体ベースで実質2020年度を0.2兆円上回る61兆9,932億円を確保したことは評価できる。自治体はコロナの影響で大幅な税収減が見込まれる中でも、新年度予算における財源に目途をつけることができた」と論じました。
一方で、財源確保の内容が国の一般会計からの加算よりも交付税総額からの控除要因を後年度に先送りした対策が目立ち、当面の財源不足をしのいだものになっていること、臨時財政対策債が概算要求時点より縮小しものの、臨財債残高が増加しており、将来世代への負担が重くなることを問題点として挙げました。地方の財源を安定的なものにするために、税源移譲と交付税法定率を見直し、国と地方の歳出比率、税収比率について、少なくとも5対5を実現するよう武田大臣に要望しました。また、臨時財政対策債及び「折半ルール」を見直し、国の責任で財源確保に努めるよう求めました。
感染症対策の最前線に立つ保健所では深刻な人手不足に直面し、職員は疲弊していることを取り上げ「このままでは感染を防ぐことに支障をきたすかもしれないという危機的状況にある。2021年度の地方財政対策では、保健師の数を2年間で現行の1.5倍、約900人、道府県の標準団体で12人を増員することとしているが、十分とは言い」と述べ、引き続き現場の状況を把握し、必要な人員配置を実施するよう求めました。さらに、地域のデジタル化に向けた整備のための財政措置は2年間の期間に限った一時的な政策経費ではなく、整備が完了するまで国が財源を保障するよう求めました。
岸議員は、さまざまな問題点がはあるものの、地方自治体が地域住民の暮らしを守るために、地方税・地方交付税をはじめ安定的な財源を確保することは重要であることを勘案し、2法案に賛成することを表明し、「引き続き地方財政の安定的な確立と地域主権をめざし、国民の代表たる立法府の立場から厳しく行政監視を行ってい」と述べて討論をしめくくりました。