参院決算委員会で5日、2019年度決算等について質疑がおこなわれました、「立憲民主・社民」会派から田名部匡代議員が質問に立ちました。(1)不妊治療(2)新型コロナウイルス変異株とワクチン接種(3)児童養護施設退所者への進学支援(4)国家戦略特区諮問会議における農業政策――等を取り上げました。

■不妊治療への支援、セーフアボーション

 田名部議員は、日本で夫婦全体の約5.5組に1組が不妊の検査や治療を受けた経験を持ち、2017年には約16.7人に1人が生殖医療により誕生していることを紹介した上で、仕事と治療を両立させることも心身ともに負担の多いことから、社会、企業の理解を進め、国としても支援を拡充すべきだと田村憲久厚生労働大臣に求めました。また、妊娠後に残念ながら流産しまった場合の措置として、OECD諸国をはじめ世界で一般的に使われている経口中絶薬(ミフェプリストン、ミソプロストール)が日本では未承認であることを取り上げ、申請があった場合はすみやかに審査し、承認された場合は保険適用するよう求めました。菅総理、田村大臣はともに「申請があり、承認された場合は、治療上必要な場合には保険適用になる」ことを想定していると答弁しました。

■新型コロナウイルス変異株への対応、ワクチン接種

 田名部議員は、国民の間で変異株についての不安が高まっているとし、今後の対応として何が重要かをただしました。政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は(1)変異株のモニタリングをまずは40%に増やす(2)見つかった時は迅速に対応して封じ込め、クラスターに対応する(3)政府は感染状況について正確な情報を発信する(4)医療提供体制のキャパシティを強化する――ことを挙げました。
 また、厚労省職員が深夜まで宴会をしていた問題について、国民に営業の時短をはじめ、いろいろな要請をしている中での不祥事であり、「感染症対策に従事している人材なのに、クラスターが発生していたら大変なことになっていた」と改めて苦言を呈しました。これに対し菅総理は、各省庁での再発防止を徹底するよう各大臣に指示したと述べました。
 また、変異株が子どもに感染しやすいと一部で報道されていることについてただすと、萩生田光一文部科学大臣は「子どもに広がりやすいと一部で言われているが、国内外でそのような知見はない。子どもだからと言ってかかりやすいということではない」と否定し、正確な情報を伝えて行きたいと答弁しました。

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 PCR・スクーリーニング検査を増やすために民間機関に協力を要請しているのかを尋ねると、田村大臣は「民間会社に試薬等を提供し、技術移転をしてお願いしている」と答弁しました。田名部議員は、感染を早く発見し、封じ込めるために検査体制のいっそうの拡充を求めました。
 ワクチン接種について、ワクチンの供給時期を各自治体が計画しやすいようにできるだけ早く伝えること、また、重症化しやすい高齢者から接種を開始する順番を基本としつつ、必要性の高い人の順番を繰り上げられるよう自治体の判断できるよう要望しました。田村厚労大臣は、たとえば高齢者施設で高齢者に接種する際に、ワクチンの量に余裕があれば、施設職員等も同時に接種するようなことは自治体で判断できるようにしたいと答えました。
 田名部議員は、「新型コロナウイルス対策は与野党で知恵を出して、少しでも早く抑え込むべきだと思い、いろいろ提案をしてきた。しかし、失礼ながら政府はワンテンポ遅い。PCR検査の拡充にしても、低所得の子ども世帯への再給付。そして、持続化給付金の再給付は、特にやっていただきたい。年末年始に加え、春の書き入れ時も減収で、どこも大変だ。さらなる融資は受けられないという声が多い」と再給付の実施を訴えました。しかし、菅総理は「今回は、飲食業の時短を要請しているので再給付は考えていない」と答弁したため、田名部議員は「飲食業への時短要請といっても、生産者から関連業者まで、地域も東京や大阪でなく、私の地元でも大変な影響を受けている」と反論し、再考を強く促しました。

■児童養護施設退所者への進学支援
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 次に、児童養護施設を高校卒業と同時に退所する子どもたちの大学等への進学について、進学を希望するのにできていないのではないかと問い、まずは直近の実態調査をおこなうよう田村厚労大臣に求めました。田村大臣は、学習塾通学の支援、大学進学の相談をおこなう支援員の配置などの施策について説明しましたが、田名部議員は「そうした支援があっても本人に届いていないのが問題。支援が受けられると分からずにあきらめている」と訴え、改善を求めました。

■食料安全保障、国家戦略特区諮問会議における農業政策の議論

 田名部議員は、食料安全保障について、新型コロナウイルスの感染により1億3000万人が飢餓の危機にさらされるという試算があること、世界で大規模な自然災害が発生していることなど、国際的な視点を持った上で、国内自給率を高め、食料生産に係る肥料、飼料、種子、労働力、流通に至るまで総合的に検討して行くべきだとし、政府が掲げる45%という目標は低すぎ、少なくとも50%を掲げ、その上で何をすべきかを考えるべきだと論じました。その上で国家戦略特区でおこなわれている「企業農地取得」は、「養父特区(兵庫県養父市)」で5年実施した結果、1.6haしか売買の実績がないのに、政府が特区を2年間延長しようとしていることに強く異議を唱えました。
 また、淡路島で農業事業を展開しようとするパソナグループの代表取締役会長をつとめる竹中平蔵氏が国家戦略特区諮問会議の民間議員を務めるのは利益相反にあたるのではないかとただしました。菅総理は、大胆な経済社会の改革を実施するために、わが国全体を俯瞰的にとらえて議論していただいているし、問題ではないと答弁しました。
 田名部議員は、企業の農業参入には農地のリースの仕組みを活用すればよいとし、農地を取得した事業者が違法転用する懸念があり、食料安全保障の観点からも問題があると指摘しました。「地域、集落の人たちとよい関係をつくって行かなければいけない。守るものは守り、地域全体の繁栄がなければいけない」と訴え、質疑を終えました。

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