立憲民主党は、3月14日、水産政策WT(座長・徳永エリ参院議員)・農林水産部門会議(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を国会内で開催、漁業災害補償法改正案について水産庁より説明を聴取し、質疑応答を行いました。水産庁説明者の退席後、同法案について審査を行いました。
続いて、製パン業界における受発注リードタイムの適正化に向けて、フード連合と意見交換を行いました。(司会:神谷裕農林水産副部門長・WT事務局長・衆院議員)。
次に、金子部門長より、「農林水産委員会で大臣所信に対する質疑が終わった。大臣が何を考えているのか理解しているつもりである。向いている方向は同じであろうと信じたい。手段は異なっていても、我が国の第一次産業をしっかりと支えていく仕組みづくりをしたいと思っている。」とのあいさつがありました。
■漁業災害補償法改正案について
漁業災害補償法改正案の概要については、2月7日の森林・林業・山村振興WT・農林水産部門合同会議において、同法案の条文については、2月28日の農林水産部門会議において説明を聴取したところですが、今回は法案審査のため、さらに、説明を聴取しました。
質疑応答に入り、参加議員から「ウニ、サザエについて副業的に行っている漁業者、主業的に行っている漁業者の割合はどうなっているのか」(西川将人衆院議員)との質問がありました。
水産庁から「いろんな経営形態があろうかと思っている。割合までしっかり把握できているわけではないが、今回の改正による『共済対象外である漁業種類を主たる漁業種類にまとめて共済でカバーできる特約の追加』の導入により、ウニを取っている漁業者のほとんどの人が、何らかの形で共済に入っていただくことが可能になる。数年前、赤潮の折に、漁業共済に加入できなかったために問題になったが、こうした状態は、今回の改正により解消できると考えている。赤潮の特約については、西日本中心に限定されているが、赤潮発生により、漁獲金額が大きく落ちた場合、今回の改正でカバーできることになる」「赤潮特約が付いているのは魚類養殖の関係。北海道のように取るウニについては、赤潮関係なく、減収の場合、お支払いする」との回答がありました。
「改正案により創設される『複数の漁業種類をまとめて締結できる契約方式』と追加される『共済対象外である漁業種類を主たる漁業種類にまとめて共済でカバーできる特約』の両方に入ることは可能か。この改正で、どのくらいニーズが増えて、従前と比較して予算額はどうなるのか」(神谷裕衆院議員)との質問がありました。
水産庁から「複数の漁業種類をまとめて締結した上で、特約を付けることは可能である。加入者について現時点でお示しできる数字はないが、漁業共済においては、掛金について法定補助、積立ぷらすに入った場合は上乗せ補助がある。加入者に対しては、改正法の施行は公布日から1年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされているので、来年度以降になるが、予算措置を講じていく」との回答がありました。
「漁業共済でカバーできないものは何か。掛金が高く躊躇している人もいるが、温暖化の影響もあるので、保険に入った方がいいということがあれば教えていただきたい」(徳永エリ参院議員)との質問がありました。
水産庁から「採貝採藻、漁船漁業・定置、藻類貝類養殖等、魚類養殖等、漁業施設を対象としている。相互扶助の仕組みであるので、(1)漁業者のニーズがあること、(2)保険が成り立ち、保険設計ができるようなある程度の加入者が見込めること、(3)掛金の水準としてもそれなりのものが見込めること、(4)損害が起きたときに客観的に損害査定が整っていること、以上の4つがあることが、基本的な要件。現時点でカバーできていないものについて、現場の漁業者から声が上がってきて、かつ、保険設計ができるか、ということを確認しながら、条件が整えば、加えていくことが必要と考えている」との回答がありました。
「漁業者からは『あまりメリットが感じられない、掛金が上がるなら、入らない、よっぽどひどい状況になれば考えるが、掛け捨てなら入らない』と言われてしまう。共済としての共助の精神が理解されておらず、制度の周知が不十分なものとなっている。掛金は掛け捨てとなるので、貯まっていると思うが、そのお金はどうなっているのか」(川原田英世衆院議員)との質問がありました。
水産庁から「メリットがないとの声があるということについて、清算している金額ベースでは、75%程度加入している。平成の初めは25%程度しか加入していなかったが、積立ぷらすとリンクさせること等によって、金額ベースの加入率は上がってきている。漁業に主な収入を依存されている方は、危険に備えるということで広がっていると考えられる。一方、年金を受給しながら漁業を営んでいる人であれば、掛金を払ってまで入りたくない、掛け捨てでありメリットがないと思っている方はおられると思う。人ベースでみると、50%を切る加入率。それぞれの漁業者の経営の現状に応じて選んでいただくことになるが、必要な備えをしてくださいという丁寧な説明は引き続きやっていきたいと思っている。掛金と支払いについては、最近は、250億円から300億円の範囲内で毎年の支払い実績があった。コロナの影響で需要が大きく落ち、金額がガクッと下がったとき、単年度で見ると赤字になる共済の支払もある。支払われないからたくさん貯まっているという状況にはないと考えている」との回答がありました。
関連して、神谷WT事務局長より「積立ぷらすを含め、民主党政権のときに大きくさせていただき、かなり歓迎された。漁災、積立ぷらすは、民主党政権にかかわりが深いもので、力強く周知をお願いしたい」との発言がありました。
さらに、徳永WT座長より「原因がわからない様々な問題が起きてきて、漁業の現場から補償せよという話になるが、共済に入っていないのに、困ったときに補償しろ、というのは筋が通らない。いざというときの備えは大変重要。制度の説明を含め、それぞれの地域で頑張っていただきたい」との発言がありました。
「水産加工業者は、他の魚種や他の業態に広げたり、転換したりすることが困難。漁業共済を水産加工業に広げるわけにはいかないが、地域の漁業、水産加工業は一体。環境変化で魚種によっては不漁が続いている。漁業の関連産業である水産加工業に対する支援について、検討をお願いしたい」(小山展弘衆院議員)との要望がありました。
水産庁から「今の視点は全くそのとおりと思う。政策ツールが限られていることもご指摘のとおりであるが、最近の環境変化に応じた対応として、今まで取れていた魚が近辺で取れなくなり、目の前の港にあがった魚を使って缶詰などを加工していた工場が、原料不足になっているが、別の港で魚があがっているという場合、生産・加工・流通関係者が連携し、取れたところから魚を運んで加工するという取組にチャレンジしてもらえる予算を、限られた額ではあるが措置している。ご指摘の問題意識は我々も持っているので、頑張ってまいりたい」との回答がありました。
■漁業災害補償法改正案の法案審査
水産庁説明者の退席後、漁業災害補償法改正案の法案審査を行いました。
協議の結果、賛成の方向で、部門長、座長に一任することを了承しました。
■製パン業界における受発注リードタイムの適正化に向けて、フード連合と意見交換
続いて、製パン業界における受発注リードタイムの適正化に向けて、フード連合と意見交換を行いました。
まず、フード連合より、製パン業界におけるリードタイムの現状と課題、目指すべき姿、解決の方向性について説明を伺いました。その概要は次のとおりです。
農林水産省が策定した「食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン」では、取引商品の「小売業者の発注から納品までのリードタイム」は、「発注数量に合わせた生産が行われ、見込み生産やそれによる余剰生産物の廃棄を余儀なくされることがないよう、また、受注数量に対する充足率を満たせず、納入済みの分の単価を引き下げられることがないよう、製造業者と小売業者が合意の下、小売業者は十分なリードライムを確保した上で発注書面を交付することが望ましい」とされています。
製パン業界は、消費期限の短い日配品を取り扱うことから、商品在庫を持つことが難しく、「毎日生産・毎日納品」が基本となります。これを行うための適切な生産・物流時間の確保には、小売業者もしくは指定の物流センターへの納品日の2日前に受注する(前々日受注)することが必要となり、一般的にはそのリードタイム内で取引が行われています。
しかしながら、小売業者によっては「納品の1日前(前日受注)」の商慣習となっている例があり、その場合は見込みに基づく生産・物流体制となることから、製パン業界に様々な問題・負担が生じています。
1つ目に、食品ロスの問題があります。
パンは、生地を仕込んで、発酵させて、調製して、熱をとってから包装してお届けするので、製造に大変時間がかかります。
一部の小売業者による「前日受注の1便配送」では、受注のタイミングから生産をスタートするとお届けが間に合わなくなります。そのため、受注前から、見込みで生産を始めています。多めに作るので、受注量との差が食品ロスとなってしまいます。製パン業労組で試算したところ、見込みでの生産数と実際の受注数の乖離により、企業規模にもよりますが、年間で数10~数100tの廃棄が発生しています。
適正な受発注リードタイムが実現すれば、食品ロス削減に大きく寄与することが期待されます。
2つ目に、物流問題があります。
小売業者の発注から納品までの時間が短いと、製パン業者内の配送拠点への社内物流・仕分けや配送車両の効率的な確保が進まず、納品のための深夜での集中的な作業が生じやすくなります。万一、見込み生産後の注文確定時に商品数の不足が判明した場合は、追加で生産する必要があり、定刻での物流ができずにドライバーの待機時間増につながります。
余裕を持った適正な受発注ルードタイムの実現は、パンを運ぶ物流業の負荷低減にも寄与します。
3つ目に、コスト面や従業員心理においての負荷が挙げられます。
パンは商品によって形態が異なるため機械化が難しく、多くの工程を人の手で行っています。
注文数の増減に対応するための生産人員の確保を短時間で対応しなければならず、急な勤務調整や待機など工場勤務者に大きな負担がかかっています。例えば、夜の9時に電話があり、明日7時の出勤を要請されることもあります。
見込み生産した余剰製品の多くは家畜の飼料としてリサイクルしていますが、余剰品の包装を一つ一つ開封して中身を取り出す作業を人海戦術で行わざるを得ません。丹精込めて作った製品を自らの手で廃棄することに心理的負荷が大きくかかっています。こうした心身の負荷による従業員の離職や採用難が深刻な問題となっています。
この問題は、製パン業者のコスト上昇にもつながっています。
あるパン製造業者では、2019年の食品ロス中、リードタイムに起因するものが4億円発生しています。パン1つ廃棄するたびに人件費換算で0.5円かかっています。
製パン業の基準内賃金は食品製造業のなかでも比較的低位にあり、労働時間が長くなっています。適正な受発注リードタイムの実現は、製パン業の利益体質を改善させ、賃金上昇にもつながることが期待されます。また、同様にリードタイムが課題となっている日配品業界や関連するサプライチェーンにも効果が波及することが期待されます。
そのため、全ての小売業者において「1便配送の前々日発注」を実現することを目指すものです。
依然として、一部の小売業者で前日発注が残っている理由としては、小売業側のシステム変更や物流センターなどインフラ整備の問題が考えられます。
フード連合としては、省庁、業界団体等の関係団体に対して、パン製造業の課題認識を伝えることで、「日配品の商慣習に関する検討会」での検討や、その実行を後押ししたいと考えています。
以上の説明を伺った後、意見交換を行いました。
参加議員から「前日発注を製造業者側として断ることはできないという企業間の関係はどのようなものか。前日発注が残っている理由として、小売業側のシステム変更や物流センターなどのインフラ整備の問題が指摘されたが、もう少し詳しく教えてほしい」(小山展弘衆院議員)との質問がありました。
フード連合から「基本的な方向性として、スーパーマーケットでは、ほぼ前々日発注となっている。某コンビニエンス業者も前々日発注をやっていただいているが、コンビニエンス業界の中で根強く解消できていない部分がある。前日発注から前々日発注に改めるためには注文システムの改修が必要となり、経費がかかるため実現できていない。「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」でアプローチはしているが、解消に至っていない」との説明がありました。
「現実的ではないかもしれないが、いくら言っても改善しないのであれば、注文を受けないということは可能か」(田名部匡代参院議員)との質問がありました。
フード連合から「やろうと思えばできないことはないと思うが、今のシステム上、注文が入ると、そこで契約が発生してしまう。契約違反となるリスクを考えるとなかなか一筋縄ではいかないと感じている」との回答がありました。
「この問題は、経済産業委員会でも取り上げたい。下請けという関係ではないが、例えば、Gメンに通報し、優越的地位を利用して不公正な取引を行っているとして企業名を公表するようにすれば、企業イメージが悪くなるので改善していくことになるのではないか」(小山展宏衆院議員)との問題提起がありました。
フード連合から「取引先であるコンビニエンス業者は大手の取引先であるが、製造側も大きな会社であるので、下請法の対象にはなりえない。独占禁止法で考えると、優越的地位にあるかどうかの認定に要する情報量が多いと聞いている。我々も公正取引委員会に伝えてはいるが、優越的地位とは認めていただけていないと思っている。根強く現場の声を伝えていけば、いずれは認めていただけると思うが、急務であり、早く解決できるようにしたい」との回答がありました。
「政府側の対応についてどう考えているか」(横沢高徳議員)との質問がありました。
フード連合から「法的な拘束力をもっての対応が難しい。一方で、商慣習としては良くないという認識はもっていただいていて、農水省のワーキングチームの中の分科会として「日配品の商慣習に関する検討会」が平成30年ころから開催されている。令和5年ころに改善の方向性が示されているが、その後の状況について、我々としては、放置されているという印象を受けている」「スーパーマーケットでの改善は進んでいる。コンビニエンスストアについては、ワーキングチームに参加してはいるが、資料や情報の提供が十分でないという話も聞いている。その後の動きも全くないということで、我々としては、ワーキングチームの活動が停滞していると感じている」との回答がありました。
意見交換を受けて、田名部匡代議員より「現状をお聞かせいただき、課題を共有させていただいた。今後、様々な場面で取り上げさせていただきたい。改善に向けて一緒に取り組んでいきたい」との発言がありました。
最後に、司会の神谷裕農林水産副部門長より「大事な問題だと思う。我々も共有させていただき、しっかりと対応できるようにしたい」との発言がありました。
冒頭、徳永wt座長より、「漁業災害補償法改正案について、改めてご説明いただく。現場の声を相当反映していると思う。賛否をしっかり議論していきたい」とのあいさつがありました。