衆院本会議で6日、デジタル関連5法案(デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、公金給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案)について討論と採決が行われ、「立憲民主・無所属」会派を代表して、森山浩行議員が討論を行ないました。
冒頭、森山議員は日本の新型コロナウイルスの感染状況がアジアの中で最も深刻な状況であることに触れ、政府は台湾やニュージーランドなどをモデルに、危機管理の権限を集中し、検査数を増やし、感染者数のクラスターを把握できる数まで減らして対策する「zeroコロナ」戦略への転換を訴えました。また、デジタル庁以前に危機管理庁または防災庁を創設すべきではないかと進言しました。
続いて、政府のデジタル化の中心的な役割を担う総務省で発覚した、東北新社による接待問題や外資規制違反の問題を隠ぺいするため、武田総務大臣をはじめ幹部官僚らが国会で虚偽答弁を繰り返し、NTTの接待問題にも発展した相次ぐ不祥事を振り返り、まずは政権の隠ぺい体質を改善し、チェック体制の強化こそが急務だと主張しました。
■立憲民主党の基本姿勢
森山議員は立憲民主党が基本政策に「個人情報を保護しつつ行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進します」としており、行政のデジタル化には賛成の立場であると説明。行政及び社会のデジタル化を推進するにあたって、(1)あらゆる住民の利便性を高めるとともに、苦手な人も含め誰も取り残さないこと(2)個人情報保護の対策を徹底すること(3)セキュリティーを確保すること(4)政府による国民の監視に使用しないこと――などを基本姿勢として進める必要があると主張しました。
■日本のデジタル化における課題
社会や行政のデジタル化において、まずは「行政の情報は国民のものである」一方、「個人情報は個人のものである」という基本中の基本を忘れないため、行政情報の徹底的な公開と自己情報コントロール権を制度化することが重要だと強調しました。
続いて、3月に発覚した通信アプリのLINEの個人情報などの管理が韓国から中国へ再委託されていた問題は国民に大きな衝撃を与えていると説明し、「今回官民両方に対して調査権限を持つことになる個人情報保護委員会の立ち入り調査までに2週間もかかったことも問題だ。そもそも個人情報の扱いへの国の介入権限の強い国に委託や再委託で作業を出してしまうことの危機感を、民間の皆さんにも、もってもらわなければならない」と警鐘を鳴らしました。
また、2月に新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」のアンドロイド(Android)版に不具合が判明した問題について、平井デジタル改革担当大臣が「発注者の問題だ」と発言した件について、「役所の仕事は『仕様書どおりに作る』だけでいいが、民間の契約では多くの人に使われて初めて料金が発生する。日進月歩のデジタルの世界で中途半端な知識での発注、デジタル利権とも言われる「高すぎる価格設定」の問題点など、長年失敗してきた政府のデジタル政策について、総括が必要だ」と断じ、速やかな改善を求めました。
最後に、「誰もが使いやすいユーザーインターフェースや、台湾のマスク在庫アプリの成功例のような、市民参加型のアプリ開発、海外企業への委託・再委託を含めたセキュリティの問題、地方自治体の自主性をそこなわない制度設計」を課題として挙げました。
■法案賛否について
今回、内閣委員会の議論を通じて幾つかの修正があり、27項目の附帯決議が議決された結果なども踏まえ、以下のとおり2法案に賛成、3法案に反対すると説明しました。
(1)デジタル基本法案【反対】
障がい者への配慮に関し「身体的なもの」から「障害の有無等の心身の状態」へと広げる修正提案が受け入れられた点は評価するが、地方公共団体の情報システムの共同化等を努力義務とすべきといった修正提案が受け入れられなかったことから反対。
(2)デジタル庁設置法案【賛成】
幹部ポスト数が過剰(次官級1名、局長級4名)となっているなどの懸念点はあるものの、デジタル利権の温床とならぬよう、運用に十分注意することや十年の見直しまでにこれまでの遅れを取り戻すことを求めた上で、設置そのものには賛成。
(3)整備法案【反対】
「自己情報コントロール権」の個人情報保護法の目的規定への明記、国や地方の行政機関が集めた個人情報の目的外利用を認める要件の限定化、などの修正提案が受け入れられなかったことから反対。
(4)公的給付の支給迅速化のための預貯金口座登録法案【賛成】
昨年の一人10万円給付の遅れの経験や、将来の給付付き税額控除制度の実現に向けた観点からも賛成。
(5)預貯金口座にマイナンバーを紐づける法案【反対】
預貯金者がどの金融機関に口座を持つかとの情報を預金保険機構が一元的に管理し、知り得ることなど、政府による国民監視の懸念を払拭できないことから反対。
森山議員は社会や行政のデジタル化の推進にあたって、「個人情報が十分に保護され、すべての国民にとって真に利便性が向上するものとなるよう、今後も努力を続けていく」と決意を訴え、3法案に反対、2法案に賛成の討論を終えました。