「2019年のデータで、ミャンマー人に対する世界の難民認定数が1万3396人、認定率は92%だった。これと比較し、日本では788人の申請に対し難民認定はゼロ。わが国の難民認定に対する姿勢そのものについて、まずは見直すべき」(屋良朝博衆院議員)。

 衆院本会議で16日、「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」(以下「出入国管理法改正案」)の趣旨説明と質疑があり、屋良朝博議員が登壇しました。

 冒頭、屋良議員は、沖縄の基地問題、および東京オリンピック・パラリンピックの開催問題についても質問をしました。

■出入国管理法改正案について

 まず人権に係る問題として屋良議員は、名古屋出入国在留管理局の収容施設におけるスリランカ女性死亡事件の調査結果の公表がいつになるのか、上川法務大臣をただしました。さらに今回の改正案について(1)国連難民高等弁務官事務所が「重大な懸念」を表明したこと(2)国連人権理事会が国際人権法違反とする見解を記した共同書簡を日本政府に送ったこと(3)国連やNGO、市民グループが入管施設に無期限収容される外国人の問題に懸念を表明していること――などを取り上げ、これら国際社会の指摘をどのように受け止めるのか、上川法務大臣をただしました。

 また屋良議員は、わが国の難民認定のあり方そのものについても、政府の姿勢を問題視。国連人種差別撤廃委員会や米国務省から、難民認定率の低さを問題視されていることや、直近の令和2年における難民認定率も1.3%と極めて低かったことなどを指摘しました。後者の具体例としては、2019年のデータで、ミャンマー人に対する世界の難民認定数が1万3396人、認定率が92%だったのに対し、日本では788人の申請に難民認定はゼロだったことを取り上げました。その上で屋良議員は「『人権後進国』と言われても仕方のないレベルだ。まずはわが国の難民認定に対する姿勢そのものについて見直すべきではないか」と訴えました。

 さらに在留資格が無い状態の入国者を一律に収容施設に収容する日本の「全件収容主義」についても、「国連などから『自由権規約に違反している』と指摘されていることに言及。これらの指摘に応え、難民認定制度の運用のあり方についても「直すつもりはないか」と上川法務大臣をただしました。

 出入国管理法改正案の具体的な論点として、屋良議員は以下の点を問いただしました。

  1. 難民認定申請期間中の送還停止(送還停止効)

     これまでの制度では、難民認定の申請がなされると、その手続が終了するまでの間は、申請の理由や回数を問わず一律に、送還が停止されることとなっていました。しかし今回の改正案では、難民認定や補完的保護対象者認定の申請を複数回行っている者については、認定をすべき「相当の理由」がある資料を提出しない限り、3回目以降の申請において「送還停止効」の対象外とすることとしています。

     このことについて、「過去には入管当局に難民として認められなかった外国人が、裁判を起こし、控訴審で逆転勝訴するケースもあった。難民申請してからおよそ10年後にようやく難民としての地位を獲得した方もいる」「申請回数によって一律に送還停止効の例外を設けること自体、国際法上の原則に違反すると、国連人権理事会は指摘している」などと指摘。また「裁判手続により難民認定をされる可能性があるにもかかわらず、その芽を摘んでしまうことになる。本来は送還すべきでない者を誤って送還し、その者の生命や身体に危険を生じさせることになりかねない」と訴え、上川法務大臣にその見解をただしました。

  2. 収容期間の上限

     これまで退去強制令書に基づく収容には上限機関の定めがなく、長期収容につながりやすくなっていると指摘。長期収容を防止するためには、「収容期間に上限を設定したり、収容を継続する際の司法審査を行うことが効果的ではないか」と述べ、今回の改正案においては、そのどちらも規定されなかった理由について、上川法務大臣をただしました。

  3. 監理措置制度

     改正案により導入される「収容に代わる新たな監理措置制度」について「『監理人のなり手』として期待される外国人支援に取り組む個人や団体から『収容から解かれた外国人の監視が民間に押し付けられる』『監理人の担い手が見つからず、長期収容の解決にはなりえない』といった声が上がっている」と指摘しました。またそうした個人や団体の約9割が、監理措置制度に対して懸念を示しているとして、上川法務大臣の見解をただしました。

     また新しい監理措置制度が、管理人となってくれる家族や支援者が存在すること、および上限300万円の保証金を支払うことを前提としており、「管理者の有無と資金力の有無に基づく差別的な制度だ」と国連人権委員会が指摘していることについて、上川法務大臣の見解をただしました。

  4. 逃亡した外国人に対する刑事罰

     改正案では、(1)監理者のもとから外国人が逃亡した場合(2)強制退去命令を受けた外国人が出国手続きを進めないケース――を念頭に、新たな刑事罰を導入する内容となっています。このことについて「根本的な制度の見直しを優先するべきところ、刑事罰を含む強引な手法で問題解決を図るのであっては、抜本的な改善は望めない。支援者の活動を萎縮させるのではないか」と疑問を投げかけました。

2021.04.16 入管法衆院本会議登壇質問-屋良朝博議員.pdf