参院本会議で21日、菅義偉総理の訪米報告について質疑がおこなわれ、立憲民主党の白眞勲議員が会派を代表して質問しました。冒頭、「コロナ禍によって世界情勢が激変のなか、日米両国首脳が直接会談を行う意義は大きく、特にわが国の外交、経済、安全保障政策にも大きな影響を及ぼす中国、北朝鮮への対応についても協議できたことは極めて重要」だと評価しました。ただし、総理不在中の日本では、「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大や、自民党幹事長のオリンピック中止の可能性発言の波紋、さらには福島第一原発の処理水の問題――等々、国内は重要な課題が山積した状況」にあったと指摘しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大に関して、政府の分科会の尾身茂会長が「いわゆる第4波と言って差し支えない」と4月14日に発言するなど、3月の緊急事態宣言の解除後も感染者が急増している実態を示し、菅総理に対して「緊急事態宣言を発出すべき」と強く提案しました。総理は「状況を精査し早急に検討したい」と答弁しました。
ワクチン接種に関して「65歳以上に限定しても今年いっぱいか、場合によっては来年までかかるのではないか」と自民党の下村政調会長が発言する一方、河野担当大臣が異なる見解を示していることを取り上げ、「いろいろな責任ある方々がバラバラな発言をすると国民は一体何を信じればいいのか混乱するだけ」と政府与党の情報発信に苦言を呈しました。その上で、ワクチンの供給量とスケジュール、接種の完了の時期について政府の公式見解を求めました。総理は、実務を担う自治体の規模がさまざまであるため、接種の完了は自治体の計画次第などと答弁しました。
米国政府による防衛装備品等の有償援助(FMS)についてもただしました。FMSの価格は米国側の見積もり、納期はあくまで予定、ところが支払いは前払いという原則のため、当初予算から5年後に5倍に膨れ上がったり、F-2戦闘機のコンピュータに至っては、9年が経過しても納入されていない実情があると指摘。「このような防衛調達の現状は、普通の国民から見れば不自然極まりない。FMSを含めたわが国の防衛調達のあり方を根本的に見直すべき」と迫りました。岸防衛大臣は、未納入問題等は改善してきているなどとと答弁しました。
辺野古の埋め立てに沖縄本島南部の土砂調達を防衛省が検討している問題について質問しました。沖縄県南部が沖縄戦で軍人に加え、女生徒、老人から赤ちゃんまで米軍の砲弾で数多くの命が失われた場所であり、今でもそこには多くの遺骨が残され、収集が続けられていると指摘。菅総理に政治家として「少なくとも南部地区からの土砂の調達をしない」と明言するよう求めました。総理は「ご遺骨の問題は大変重要と考えており、防衛省が適切に判断する」と自らの考えを示しませんでした。