参院本会議で23日、「少年法等の一部を改正する法案」について趣旨説明と質疑が行われ、「立憲民主・社民」会派を代表して真山勇一議員が登壇しました。

 冒頭、真山議員は菅総理に日米首脳会談の成果について台湾や沖縄県・尖閣周辺の安全保障や今後の外交戦略について質問し、日米同盟を強化しつつも、日中関係の改善に取り組むよう進言しました。新型コロナウイルス感染症対策について、 ワクチンの接種が進まなかった場合、菅総理は内閣総辞職の覚悟があるかただしました。また、東京オリンピック・パラリンピックについて、 万一、感染が収まらず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されているような状況だったとして、本当にオリンピックを開催するのか菅総理に確認しました。菅総理はこれまでの答弁を繰り返し、全力で感染防止に取り組んでいく考えを示しました。

 真山議員は十数年間、保護司を務めてきた経験を基に「本改正案の柱は18歳、19歳を『特定少年』として区別することです。若者の更生という観点からは大きな後退です。刑事罰の若年化が狙いなら、その理由が説明されておらず、必要性も認められません」と断じました。

 改正の理由として「成年年齢の引き下げ等の社会情勢の変化」と「少年による犯罪の実情」が挙げられていますが、「最新の知見によると、人間は25歳頃まで発育途上にあり、教育及び更生の効果が高いと言われています。 法律上の成年年齢が18歳に引き下げられても、健全な発育を考えて、お酒やタバコは20歳まで禁じられています。若さゆえに罪を犯したとはいえ、更生できる若者は更生すべきです」と現行の更生保護行政や再犯防止制度を転換しようとする政府の姿勢を批判しました。

 また、政府は改正理由に「少年による犯罪の実情」を挙げていますが、若年人口の減少によって少年犯罪の全体数は減り続けており、凶悪犯罪の数は人口が減少する以上の速度で減っているのが実情だと説明しました。

  特定少年の検察への逆送致について、 現行の「故意による被害者死亡」の場合から大幅に拡大されるもので、極めて広い範囲の犯罪が含まれると懸念を示し、 再犯防止の点からも逆効果となるのではと指摘しました。

 特定少年に対する保護処分について、 現行の少年法は少年の健全な育成を重視して、「犯情の軽重」を問わずに保護を要するとしているが、これが大転換されると説明。「改正案では、育成や更生の効果が十分に出る前に保護処分が終了することは起きないのか」苦言を呈しました。

 推知報道禁止の解除規定について、本改正案では、特定少年が公判を請求された時点で実名での報道が認められると指摘し、上川法務大臣に「実名報道により、少年犯罪への抑止効果があると考えているのか」とただしました。「本来なら、加害者側の実名報道を推進するのではなく、被害者側の名前の報道についても、本人とご遺族の心情や生活の立て直しに配慮し、抑制をするべきではないでしょうか」と進言しました。

  特定少年からぐ犯(愚犯)を除外する理由について、少年は全て要保護性に基づく処分が必要だというのがこれまでの少年法の趣旨で、司法の現場に携わる人々からは、ぐ犯とする家庭裁判所の司法手続きは選択肢として極めて有効であり、セーフティネットの役割を果たしていると指摘し、少年が更生し自立できるためのセーフティネットの必要性を訴えました。

参議院本会議_少年法改正案への質疑(予定稿).pdf

具体的な質問は以下のとおりです。

■本改正案の提出理由について
・今回の改正の柱は、18歳、19歳を「特定少年」として区別することです。若者の更生という観点からは大きな後退です。刑事罰の若年化が狙いなら、その理由も説明がなく、必要性も認められません。なぜこの法案を提出したのでしょうか
・改正の理由として「成年年齢の引き下げ等の社会情勢の変化」と「少年による犯罪の実情」ということが挙げられています。具体的にこれが何を意味するのかご説明下さい
・「成年年齢の引き下げ」と少年法の改正とに、いったいどんな関係があるのでしょうか。最新の知見によると、人間は25歳頃まで発育途上にあり、教育及び更生の効果が高いといわれています。法律上の成年年齢が18歳に引き下げられても、健全な発育を考えて、お酒やタバコは20歳まで禁じられています。若さゆえに罪を犯したとはいえ、更生できる若者は更生すべきです。政府は今回の改正案で更生保護行政や再犯防止制度を大転換するわけですが、現行の制度に致命的な失敗や欠点があり、早急に改めるべき点が何かあるのでしょうか。
・「少年による犯罪の実情」と言いますが、若年人口の減少によって少年犯罪の全体数は減り続けています。そして、凶悪犯罪の数は人口が減少する以上の速度で減っているのが実情です。凶悪な犯罪がひとつ起きるとメディアで大きく報道されるため、確かに目立ちますが、実態は減少傾向にあるのです。むしろ従来からの更生保護行政の成果もあって、状況は大いに改善してきているというのが実情ではないでしょうか。少年犯罪の数、ことに凶悪犯罪の件数は増えているのか、減っているのか、上川法務大臣、具体的な数値でお示しください
・私は十数年間、保護司をしてきましたが、今回の少年法改正には、強い違和感を持っています。上川大臣は先日の京都コングレスにおいて、日本の保護司制度をローマ字の「HOGOSHI」として世界に広め、「世界保護司デイ」を設けると宣言されました。それなのに、今、このような少年法の改正を必要とするほど、保護司による更生保護の取り組みは効果がなかったのでしょうか

■ 特定少年の検察への逆送致について
・18歳、19歳を「特定少年」とし、原則として「短期1年以上」の刑にあたる事件は一律に検察への逆送の対象になります。これは現行の「故意による被害者死亡」の場合から大幅に拡大されるもので、極めて広い範囲の犯罪が含まれることになります。現行の少年法は対象者の立ち直りを考慮し、家庭裁判所がきめ細かい処分を行うことを考えていますが、その趣旨に反して、再犯防止の点からも逆効果となるのではという指摘があります。なぜ、一律の逆送致が必要なのか、理由をお示し下さい
・この基準が適用された場合、逆送致される特定少年の数はどの程度、増えるのか
・家庭裁判所の調査数、少年鑑別所の全体の鑑別数はどの程度、増加するのか。それに対応する十分な人員が確保されているのか
・また、改正後の第62条第2項ただし書には、「短期1年以上」の罪であっても逆送致にしない例外事案もあり得るとの規定もあります。どんな例外があり得るのか、恣意的判断や社会的圧力によって判断が歪められることのないよう、はっきりとした基準をお示し下さい

■特定少年に対する保護処分について
・本改正案では、特定少年に対する保護処分は「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内」とされました。現行の少年法は個々の少年の健全な育成を重視して、「犯情の軽重」を問わずに保護を要するとしていますが、これが大転換されます。改正案では、育成や更生の効果が十分に出る前に保護処分が終了することは起きないのでしょうか
・施設収容をしない6カ月の保護観察処分が新設されます。このような短期間の処分でも十分な場合とはどのような事案か、その理由とともに具体的にお示し下さい
・施設収容可能な2年の保護観察処分が新設されます。これはどのような場合でしょうか
・2年という期間にする理由は何でしょうか

■推知報道禁止の解除規定について
・本改正案では、特定少年が公判を請求された時点で実名での報道が認められます。これは一体、何を目的とした改正でしょうか。法務大臣は実名報道により、少年犯罪への抑止効果があると考えているのでしょうか
・その一方、刑事裁判所の事実審理の結果、家庭裁判所への移送もあり得るとされます。この時点で、すでに広く推知報道がなされているのですから、少年法の理念とは矛盾していませんか。審理の結果、無罪になる可能性は否定できません。社会復帰を支援する家族の生活にも著しい困難をもたらし、帰住先を失うことで対象者の更生を妨げる恐れも指摘されています。こうした推知報道による回復不能の事態に対する救済措置、回復措置等を考えておられるのでしょうか
・事件報道の中で被害者の名前が報道されるのだから、加害者も特定少年であってもその名を報道されるべきという意見があると聞きました。しかし、本来なら、加害者側の実名報道を推進するのではなく、被害者側の名前の報道についても、本人とご遺族の心情や生活の立て直しに配慮し, 抑制をするべきではないでしょうか。そうした検討をなさるおつもりはありませんか

■特定少年からぐ犯を除外する理由について
・18歳、19歳という区別などなく、少年は全て要保護性に基づく処分が必要だというのがこれまでの少年法の趣旨でした。司法の現場に携わる人々からは、ぐ犯とする家庭裁判所の司法手続きは選択肢として極めて有効であり、セーフティネットの役割を果たしているという指摘もあります。今回の改正は、特定少年の要保護性、ぐ犯によるセーフティネットは不必要ということなのでしょうか
・特に女子少年にはより切実な問題があります。ぐ犯の女子少年には、虐待の被害者やそれに関連した種々の深刻な外傷性の精神疾患を有する者が少なからずいます。特定少年からぐ犯を除外することは、精神医学的な視点からも非常に重大な問題があるとの指摘があります。それでも除外する理由は何でしょうか
・特定少年には不定期刑も適用されなくなります。少年は成長発達の途上にあり、教育による更生や改善が期待されるからこそ、幅のある刑期で柔軟な対応を可能にしているのが現在の少年法です。特定少年も本人の個別事情に応じた処遇により、教育、更生の可能性が高まるはずですが、これを否定する確固とした知見などはあるのでしょうか
・不定期刑の適用が除外された場合、有期刑の上限は30年になります。18歳、19歳の特定少年が長期間の刑に服した場合、社会復帰を著しく困難にしかねませんが、法務大臣はそうした事態を容認するのでしょうか
・特定少年については、社会復帰をした後、仕事を探す際、資格制限排除の特例が適用されなくなります。これによって、罪を犯した特定少年の将来の選択肢は狭められてしまいます。資格制限に関する少年法の規定は、資格制限からできるだけ早く少年を解放して、本人の更生を助けるという趣旨でした。法務大臣、もはやそうした配慮は不要とお考えなのでしょうか

■日米首脳会談の成果について
・日本は台湾の安全にどうコミットメントをし、どのような手段でこれを達成しようとしているのですか。ウイグル自治区には具体的にどのような人権問題が存在すると考え、どのような手段でその解決を求めますか
・尖閣周辺の海域で中国公船の活動が活発化しています。この地域で有事が発生した際、アメリカは必ず日米安全保障条約を適用しますか
・また、アメリカに助けてもらうために、菅総理はアメリカに対して何らかの約束をしましたか
・日本は今後、どのようなチャンネルで、どのようなことを目指し、中国との関係悪化を防ぐつもりですか

■新型コロナウイルス感染症対策について
・日本国民全体に行き渡るだけのワクチンはいつ届きますか。医療従事者への接種、高齢者・高リスク者への接種が完了するのはいつですか。そして、一般国民への接種が開始されるのはいつからで、集団免疫を獲得するのはいつになるのですか
・ただでさえ、先進国のなかでは最もワクチンの接種が遅れているのがわが国です。お示しいただいた通りの日程でワクチンの接種が進まなかった場合、菅総理は政治的にどのような責任をとりますか。失敗した場合、内閣総辞職の覚悟があるかどうか
・3月21日に全国的に緊急事態宣言を解除した後、「第4波」が急拡大しており、ついに3度目の緊急事態宣言の発動に追い込まれそうです。これについても、菅総理はどう責任をとるおつもりか

■東京オリンピック・パラリンピックについて
・今回の首脳会談で、アメリカは選手団を必ず派遣すると約束はありましたか
・バイデン大統領を開会式などに招待しなかったのでしょうか
・日本の感染状況が問題ないのであれば、各国の選手団とともに、諸外国の要人も自信を持って招待してはどうかと思いますが、そういうおつもりはないのか
・万一、感染が収まらず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されているような状況だったとして、本当にオリンピックを開催するのですか
・外国選手団などを経由して新たな感染が国内に蔓延した場合、また逆に外国のお客様に国内のウイルスをまん延させた場合、オリンピック・パラリンピックは成功といえますか
・そうなった時、菅総理の責任は総辞職に値するのではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか