「多くの基礎研究を粘り強く行ってきた結果、この(対コロナ)ワクチンができた。日本にはまだまだこのようなベンチャー事業を支えるための環境が整っていない」(宮川伸議員)。27日、衆院本会議で「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」の趣旨説明と質疑があり、宮川伸議員が登壇しました。

■政府のCOVID-19(新型コロナウイルス)対策について

 冒頭、宮川議員は政府のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策についてただしました。

 前回の緊急事態宣言が解除されてから約1カ月しか経っていないのに再宣言となった点を指摘。「私たちは、今のままで緊急事態宣言を解除したら、変異株が一気にまん延する可能性があり、解除は時期尚早であると申し上げてきた。まさにその通りになってしまったのではないか」と政府の失策をただしました。その上で、第1回目の緊急事態宣言が約1カ月半、2回目は2カ月半続いたのに対し、今回は解除の目安の日まで17日間と非常に短い点について「なぜこれほど短い期間で大丈夫だと判断したのか」「解除の要件は前回よりも厳しくするのか」と西村康稔経済再生担当大臣をただしました。

 また23日の記者会見で菅義偉総理大臣が「希望する高齢者には、7月末を念頭に各自治体が2回の接種を終える事ができるよう、政府を挙げて取り組む」と約束したことについて「7月末を念頭に置いた根拠は何か」と問いただしました。野党が実施したヒアリングでは、甲府市の担当者が高齢者の2回接種には約3.7カ月かかると想定し、医療従事者が打ち終える予定の6月下旬から打ち始めた場合、終了は10月上旬となることを見込んでいた点などを指摘。「根拠もない期限であれば、それは単なる願望ではないか」と河野太郎ワクチン担当大臣をただしました。

 さらにインドで新型コロナウイルス感染急増の要因となっている、「二重変異ウイルス」が日本国内で複数確認され、その内の1件は空港検疫ではなく、国内で発見されたことについて、「これはまたもや空港での水際対策に失敗したということなのか」と尋ねた上で、現在、感染封じ込めのために具体的にどのような対策を取っているのか、田村憲久厚労大臣をただしました。

■「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」について
  1. ゲノムシーケンスとバイオ産業の支援

     前述のインド発の「二重変異ウイルス」について、生物学の専門家であり、バイオベンチャーの経営経験もある宮川議員は、「しっかりと科学をベースにして封じ込める必要がある。そのためには、濃厚接触者よりも広い範囲で、徹底的にゲノムシーケンスと追跡を行う必要がある」と訴えました。現在、国立感染症研究所が中心になって行なっているゲノムシーケンスについては「公的機関だけでなく、検査会社やベンチャー企業の力も総動員すべきだ。こういったことが新たな技術を産み、産業競争力強化にもつながる」と指摘。現在のゲノムシーケンスは、新型コロナウイルス陽性者の何%に対して行っているのか問いただすとともに、標記法律案には、バイオの分野の遅れを取り戻すための施策は盛り込まれているのか、梶山弘志経済産業大臣をただしました。

  2. 事業支援策とM&A促進

     昨年すでに約5万社以上が休廃業や倒産に追い込まれている点について、宮川議員は「持続化給付金や家賃支援給付金などの政府支援策が終われば、今後の経営環境は厳しさを増す可能性がある」と指摘。その上で、「私たちは1カ月以上前に、事業規模に応じた持続化給付金の再給付に関する議員立法を提出している。厳しい事業者を支えるために一刻も早く法案審議をすべきではないか」と訴えました。

     また本法律案には、M&Aを行ないやすくするための施策がいくつも盛り込まれており、この点について宮川議員は「政府はコロナで苦しい企業を支えるのではなくて、M&Aを推し進めようとしているのか」と釘を刺すとともに、今回の緊急事態宣言の発出に対する事業者支援の具体的な内容の説明を政府に求めました。

  3. 国産ワクチン開発とバイオベンチャー支援

     日本が国産コロナワクチンの開発ができなかった点についてただしました。ファイザー社製のワクチンが、ドイツのバイオベンチャーの開発した技術を使用している点に関し、「多くの基礎研究を粘り強く行ってきた結果、このワクチンができた。日本にはまだまだこのようなベンチャー事業を支えるための環境が整っていない」と指摘しました。また日本には、ベンチャー企業をバックアップするために産業革新投資機構があるにもかかわらず、経産省とのトラブルから長期間休止状態だったことについて、「法律案は産業革新投資機構の強化について盛り込まれているのか」と問いただしました。

  4. 脱炭素社会への取り組み

     標記法律案が脱炭素化を進める設備への投資に対する税額控除や必要な借入に対する利子補給などを含んでいることの関連し、政府のカーボンニュートラル政策についてただしました。

     宮川議員は、立憲民主党が以前から原発ゼロと共に、再生可能エネルギーの大幅な普及と省エネについて具体的な提案をしてきたこと、すでに再エネ4法案を提出しているにもかかわらず、もう何年も審議されずに棚ざらしにされたままである点などに言及しました。

     菅総理が昨年10月に「2050カーボンニュートラル」を宣言し、つい先日も2030年の二酸化炭素排出量を2013年比で46%削減すると宣言したことについては「一定の評価をする」と述べつつも「中身が不明瞭だ」として、2030年のエネルギーミックスである再生可能エネルギー、石炭火力発電、原子力発電のそれぞれの割合や、省エネルギーの削減割合について「いくつを想定しているのか」とただしました。

  5. 新技術の市場化

     蓄電池の分野では、次世代電池として全固体電池の研究開発が進んでおり、日本が世界をリードしている点について、「この技術がしっかりと市場化できるように、本法案ではどのような施策がとられているのか」とただしました。かつての半導体や太陽電池のように、技術開発には成功したものの、市場化に失敗した技術の二の舞にならないよう、政府に釘を刺しました。

  6. 条文ミス多発への対応

     今国会では、政府提出法案に多くの条文ミスが見つかっており、「内閣提出法案全体で条文に12カ所、参考資料に122カ所もの誤りがあった。その中に本法律案も含まれており、条文に4カ所、参考資料に20カ所もの誤りがあった」と述べた上で、「条文の誤りを正誤表でごまかすのではなく、しっかりと閣議決定し直すべきではないか」と訴えました。その上で、条文ミスが起こる原因の一つとして、「関係の薄い法律をたくさん盛り込んで出す、あるいは多くの国民が求める法律と筋の悪い法律を一緒に束ねて通そうとする、そういったことで法律が膨大になり、限られた期間できちんと確認ができなくなっているのではないか」と指摘。多くの誤りが起こっている原因と対策について政府をただしました。

210426 衆院本会議原稿案-宮川伸議員-最終版.pdf

20210427-132434.jpg