長妻昭厚生労働部会長らは4日、政府の新型コロナウイルス対策について2件の要望書を田村憲久厚生労働大臣に国会内で手交しました。申し入れには、中島克仁新型コロナウイルス感染症ワクチン接種に関する課題検討ワーキングチーム座長、山井和則、早稲田夕季各衆院議員が同行しました。

1.「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」(仮称)の大幅な対象拡大を求める緊急要望

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大・長期化は、国民生活に大きな影響を及ぼしており、とりわけ、低所得世帯は生活を維持することが困難な状況に陥り、追いつめられていることから、立憲民主党は3月生活に困窮者約2,700万人を対象に1人につき10万円の特別給付金を支給する「コロナ特別給付金法案」(通称)を提出しました。
 今般、政府は、ようやく一定の要件を満たす生活困窮世帯に対して「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」(仮称)を支給することを決定しましたが、緊急小口資金等の借入額が限度額に達している必要がある等、支給要件が厳しすぎ、対象世帯は約20万世帯に限られ、ほとんどの生活困窮世帯は対象となららいと失望する声が上がっています。
 そのため、立憲民主党は今後も「コロナ特別給付金法案」の実現を求めていきますが、政府が支給しようとしている「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」(仮称)について支給要件を大幅に拡大すること要請しました。
 具体的には次の支給要件の見直しを求めました。

1.「緊急小口資金等の特例貸付を利用できない世帯」という支給要件をなくし、特例貸付を利用していない場合も対象にすること。

 緊急小口資金等はあくまで貸付制度であり、これまで借入れをせずに何とか生活してきた多くの困窮世帯が支援からこぼれ落ち、自力で頑張ってきた努力が限界に達する可能性があり、そうした世帯も支給対象にすべきである。

2.「ハローワークでの相談や応募・面接等、又は生活保護の申請」という支給要件をなくし、現在就労中の場合も対象にすること。

 現在就労中であるが労働時間・シフト減等により収入が減少している方や休業中なのに休業手当・休業支援金等がもらえず苦しんでいる方も支給対象にすべきである。

3.「預貯金100万円以下」等の資産要件を見直すこと。

 そもそも正確な預貯金の把握は難しい上、世帯により事情が異なることに考慮すべきであり、要件を見直すべきである。

「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」(仮称)の大幅な対象拡大を求める緊急要望書.pdf

2.新型コロナウイルスワクチンの職域接種において非正規雇用やアルバイト労働者等を排除しないことを求める要望

 政府は6月21日から大学等を含む職域でのワクチン接種を開始すると決めましたが、加藤勝信官房長官がそれを表明した際、「非正規で働く人やアルバイトを接種対象とするかどうかはそれぞれの主体で判断してもらいたい」と言及したことにより、職域接種において「非正規雇用やアルバイトで働く労働者を排除できる」と受け取られるおそれがあります。
 そこで、職域接種において非正規雇用やアルバイト労働者等が排除されないよう、速やかに対応するよう要請しました。
 具体的には次の対応を求めました。

1.職域接種において、非正規雇用やアルバイト労働者等を排除しないよう、田村大臣の会見や厚生労働省からの広報を通じて周知すること。
2.職域接種において、非正規雇用やアルバイト労働者等を排除した場合には、労働法制に抵触する可能性について注意喚起を行うこと。
3.職域接種においては、大規模な事業者や法人での実施に偏らないよう、中小事業者や中小法人でも円滑に実施できるように人的、物的支援を充実させること。
4.職域接種では、ワクチン接種に対する同調圧力が強くなり、ワクチン接種を希望しない人への偏見や不利益取り扱いが生じる恐れがあるので、接種に当たっては「本人の希望が優先すること」を徹底し、不利益取り扱いについては断固対応すること。

新型コロナウイルスワクチンの職域接種において非正規雇用やアルバイト労働者等を排除しないことを求める要望書.pdf

 申し入れ後、長妻部会長は「政府の生活困窮者自立支援金は、緊急小口資金の借り入れ額が限度額に達している、これ以上借り入れられないという人のみに支給するということだが、このような限定はあまり例がない。そのため、その限定を取り外すこと等の要望を出した。取り外すと、今年わが党が提出した法案に近づいていく」と説明しました。
 山井議員は、「最大30万円の困窮者支援金ができたと喜んでいる人が多いのに、実際は総合資金貸付を200万円借りている人しかもらえないということは、今まで社協から貸付金を借りていない人は対象外になってしまう。また、失業してハローワークに求職中の人だけが対象なので、普通に仕事をしていて仕事や収入が減っている、あるいは休業中の人は対象外。この最大30万円の支援金は、ほとんどの生活困窮者は対象外だから、たった20万世帯しか対象にならない。私たちが3月に提出した法案の対象者は1,000万世帯なので、政府の支援策は50分の1で、困窮している人の2%しかカバーされていない。あまりにも対象が狭すぎる」と説明しました。

 ワクチンの職域接種について長妻議員は「ワクチン接種の対象者が雇用形態で差をつけられるおそれがある。たとえば、正社員と非正規雇用を区別して差をつけるのは現に慎んでほしいと(国が)通知を出すよう要望した。田村大臣から『さっき出した』という話があったが、漏れ聞くところによると、それも非常にあいまいな周知のようなので、徹底をしてほしい」「企業の物理的なキャパシティ、打ち手の確保で対象者の優先順位をつけなければいけないことがあるのは理解するが、その場合も単純に雇用形態で分けていくということは非常に問題があるので周知を徹底してほしいと強く要請した」と述べました。
 山井議員は「正社員だけ打って、非正規の人は打たないという差別的な取り扱いはだめですよということをはっきりと言ってくれということだ。そうしないと、同じフロアで仕事をしていてアルバイトと派遣の人は打ちませんとか、今回は取引先にも打っていいことになっているが、取引先も正社員はいいけれどアルバイトや非正規はだめだということになりかねないので、差別的取り扱いはだめだということを明確に言っていただかないといけない」と苦言を呈しました。

20210604_170811 .JPG
申し入れ後に説明する長妻議員(左)と山井議員(右)