参院議院運営委員会で28日、菅義偉総理大臣出席の下、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言、まん延防止重点措置の解除について政府からの事前報告と質疑がおこなわれした。立憲民主党から議院運営委員会野党筆頭理事を務める吉川沙織議員が質疑に立ち、政府の新型コロナ対策の検証の必要性、国会報告の意義について質問しました。
菅総理は新型コロナ対策への国民の協力に謝意を表し、国内でワクチン接種が1億6000万回を超え、重症化、死亡者の減少に効果が出ていると強調しました。
西村康稔経済性担当大臣は、新規陽性者数が大幅に減少し、重症者数がピーク時の半数となり、重症病床使用率が5割を下回って医療ひっ迫が大きく改善したこと、自宅療養者が10万人あたり60人を下回り、救急搬送困難事案が減っていることなどから、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置を全面解除する方針が基本的対処方針分科会で了解されたと報告しました。
■新型コロナ対策の検証
吉川議員は、現在発出中の4度目の緊急事態宣言発出を決めた7月8日の会見で総理は、当初の期限の8月22日より前倒しの解除があり得るとまで発言していたが、「結果として当初より1カ月以上延長されたことになる」と指摘し、第5波にかかるさまざまな要因を検証分析し、今後の感染症対策に活かしていく必要があると主張しました。その上で、西村大臣に8月12日の政府分科会からの意見を受けて政府が目標としていた、東京都の人流を7月前半の5割削減を達成できたのかとただしました。
西村大臣は、全体の人流は7月上旬に比べて25%から30%減にとどまっているものの、ワクチン未接種の方が非常に警戒し、自粛されてご協力いただいた効果もあって推計値では5割近くまで減少したと答弁しました。
これに対し吉川議員は、「8月12日のコロナ分科会で示された目標は、東京都における人流5割減であって、それが達成できたかできなかったか、目標の設定の段階でも科学的な根拠がない、その後どうなったのか、ちゃんと検証する必要がる」と主張し、西村大臣が4月23日の議院運営委員会で検証が必要であると答弁したことにも触れ、ぜひ実施してほしいと念を押しました。
また、菅総理にコロナ対策の検証体制の認識をただすと、菅総理は検証すべき事項として(1)病床や医療関係者の確保に時間がかかったこと(2)治療薬やワクチンの治験に時間がかかり、海外に遅れたこと――を挙げ、次の内閣に引き継ぐ考えを示しました。
吉川議員は「内閣は変わろうとも行政は継続し、国民の命と暮らしを守る責任をもつわれわれ政治家もしっかりやっていかなければならない。与党も野党も関係ない。どのデータを使って、何を検証するか、どのようにやるかは大事なので立法府の立場で見ていきたい」と述べました。
■国会報告の意義
吉川議員は、「今年の通常国会が閉会したのは6月16日で本日時点で閉会期間は104日に及ぶ」と振り返り、野党4党は憲法第53条に基づき臨時国会の召集要求を7月16日に提出してから国会が3カ月以上も開かれなかったことについて、「こういう事態が2度と繰り返されてはならない」と主張しました。
議院運営委員会での政府分科会の議論の報告について、8月25日の分科会において、緊急事態宣言下での行動制限の法制化について国会での議論を求める意見が多数出たにもかかわらず、西村大臣が議院運営委員会で言及しなかったことを例として取り上げ、「政府が選任した分科会委員の意見を軽視し、立法府に対しても不誠実だと言わざるを得ない」と批判しました。
また、野党が出席を求めてもなかなか委員会に出席しなかった菅総理に、国会報告に意義について見解をただしました。
菅総理は、新たな緊急事態宣言の発出等の節目で国会に出る意向があったと話し、国民への説明は「ぶら下り会見を100数時間、毎回1時間程度の記者会見を23回くらいやっている。記者の前でやっているといこともご理解いただきたい」と釈明しました。
吉川議員は、「菅政権になって国会報告1月7日以降23回。この間、節目には出席してほしいと議運理事会で何度も何度も申し上げた。ぶら下り会見をされても、記者を前にした会見をされても、国民の代表が集う国会の場で、総理ご自身の口から、どんな説明内容であったとしても、説明をされることが危機感の共有につながり、国民の皆さんに対するメッセージになると思っていたから総理の出席をずっとお願いをしてきた」と述べ、ほかの大臣に任せるのではなく、新型コロナ対策本部長たる総理が自ら国会で説明する重要性を強調しました。