枝野幸男代表記者会見

2021年11月12日(金)16時37分~17時28分
発行/立憲民主党役員室

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://youtu.be/wHmrLbD6XeE


■冒頭発言

■質疑


■冒頭発言

○代表辞任に当たって

【代表】
 先ほど皆さん両院議員総会をごらんいただいたと思いますが、正式に代表を退くことのご承認をいただきました。報道の皆さんには、旧立憲民主党から数えれば4年余り、大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
 両院議員総会でも申し上げましたとおり、この4年間、立憲民主党に集って今回の総選挙をともに戦っていただいた全ての皆さんが、さまざまな困難を乗り越えて昨年9月に新しい立憲民主党を立ち上げ、そして報道の中には「政権選択選挙」という言葉も使っていただけるような構えまではつくることはできた。4年前の10月頭の状況を考えれば、自分なりによくここまで持ってこられたなという一定の納得感がありますし、この4年間充実した日々を過ごすことができたことを感謝いたしております。
 ただ、残念ながらそれが議席という結果につなげられなかったことは大変残念であり、特にこの間、誰よりも汗をかいて、合流に向けて、そして合流後は選対委員長として頑張っていただいた平野さんを初めとして、多くの仲間が議席を失い、また、議席をとれると思っていた新人・元職なども議席をとれなかったということは、甚だ悔しく、また、力不足を申しわけなく思っております。
 両院議員総会でも申しましたとおり、綱領や基本政策で掲げた旗は決して間違っていなかったし、今回の選挙でそのことが否定をされたものだとは思っておりません。新しい体制のもとで、この間の検証をしっかりしていただいて、まずは来年の参議院選挙、再来年の統一自治体選挙、そして間違いなくいずれある総選挙に向けて、この政権の選択肢としての構えを持ちつつ、その中身を充実させて、綱領の実現に向けて進んでいってもらいたいと思っておりますし、私も一議員としてしっかりとその中で努力をしていきたいと思っております。
 この4年、本当にありがとうございました。


■質疑

○代表辞任に当たって

【フリーランス・宮崎記者】
 4年1カ月間、お疲れさまでした。野党共闘という言葉について伺いたい。マスコミも大学教授も野党共闘という言い方をしているが、2015年の平和安全法制、その後「市民連合」もできて、共産党からの呼びかけもあって2016年の参院選は32の1人区全てで野党は一本化したが、当時の枝野幹事長や岡田代表は野党共闘という言い方はしないようにしようと。そして政権をともにしないと。ここ5年ぐらいはその態勢がメインストリームだった。枝野代表はこの4年間、野党共闘という言い方はおそらく一度もされていないかと思う。執行部でそういう言葉は使わないようにしていたのに、マスコミで使われ、何といっても志位委員長が使っている。この4年間、志位さんに対して、野党共闘という言葉はやめてもらえないか、野党一本化とか統一候補と言ってもらえないかということはなかなか言えなかったのではないかとは思うが、この野党共闘という言葉に関して、今のマスコミの使い方に関しての思いと、今後この言葉はどういうふうに扱われるべきとお考えか伺いたい。

【代表】
 ご承知のとおり、私は一貫して野党連携という言葉を使ってまいりました。この言葉の使い方だけにとどまらず、他の野党との関係についてはかなり緻密に言葉を使い進めてきたにもかかわらず、それが有権者の皆さんにきちっと伝わらなかったという客観的な事実はあると思っております。それは我々、私自身の力不足だと思っておりまして、きちっと実態どおり報道していただき実態どおり有権者に伝わるような努力がさらに必要だと思っています。

【フリーランス・宮崎記者】
 ほとんどおっしゃっていただいたが、野党共闘という言葉は、志位委員長らに対して使わないでということはなかなか言う機会はなかったか。

【代表】
 要するに他党、政党が違う他の政党について、私が今ここで具体的に何を言ったのか何を言わなかったのか含めて、結論としてあくまでも私たちは候補者の一本化と、それから「限定的な閣外からの協力」ということが結論であるということであって、そこには野党共闘という言葉も野党連携という言葉もありません。

【フリーランス・宮崎記者】
 同じことをもう一回お聞きしたい。やはり数は力ではないが、最大野党のほうが議席が多いわけで、そちらのほうの言葉に報道などは合わせたほうがいいのではないかと思うが、その辺は何とか、サジェスチョンされていたと思うが、改めていかがか。

【代表】
 報道がどうお伝えになるかということについて、私の立場から申し上げるべきではない。報道が正確に伝えていただけるように努力するのが私たちの立場だと思っています。

【日本経済新聞・依田記者】
 先ほどあった共産党との「限定的な閣外からの協力」という言葉だが、9月初めに政策協定を「市民連合」を介して結んだ後に、9月末にこれは直接共産党と合意したわけだが、その「限定的な閣外からの協力」という言葉はかなり与党のほうからは言葉尻を捉えて批判の材料になったかと思う。この「限定的な閣外からの協力」という合意は今振り返っても野党の連携において必要不可欠なものであったとお考えか伺いたい。

【代表】
 申し上げているとおり、閣外協力とはまったく違うということを言葉の上でも明確にしたのですが、残念ながらそれを十分に伝え切れなかったということを残念に思っています。

【「ニコニコ動画」・七尾記者】
 いつかお聞きしたいと思っていたが、2020年9月の野党合流を経て今に至る立憲民主党は、2017年に枝野さんがみずから立憲民主党を立ち上げた当時に描いた党のイメージと今の党のイメージは合致しているか。

【代表】
 結党のときには、まさかその選挙で最大野党になるとは夢にも思っておりませんでした。したがって、第2、第3野党という立場というか、結党のときには自分も含めて生き残れるかどうかというような感じでしたので、そういった意味では違います。
 ただ、当然政党として選挙を戦った以上はできるだけ多くの議席をとることを目的に戦い、実際に最大野党の議席を与えていただいた以上は、その結党のときの思いと最大野党としての公器としての役割を両立しなければならないという新たな責任が加わった。この二つの責任、結党のときのご支持いただいた皆さんへの約束、初心ですね、それから最大野党としての公器としての責任を両立させるための努力を4年間してまいりました。それをどう受けとめられるか、特に最大野党になる前の段階から当時の立憲民主党をご支持いただいた方にご評価いただくしかないと。私としては、両立はさせる責任がある。それができたか。できるために最大限やってきたというのが思いです。

【ニコニコ動画・七尾記者】
 SNSについてお聞きしたい。3.11のときは「#枝野寝ろ」で当時官房長官を務められた枝野さんへの応援が非常に大きかった。2017年の希望の党の排除の反発からSNS上で「#枝野立て」、この支持でメッセージが広がった。今回は辞任表明で、さまざまな意見があったが、ツイッター上では「#枝野辞めるな」、これが国内のトレンドで1位になっている。こうしたSNS、ネットの声について伺いたい。

【代表】
 ネットの声も、真摯に声を上げていただく方と、そうでない方もいらっしゃいますので、しっかりと見極めなければいけないと思っています。そういった意味では今回「辞めるな」というハッシュタグのもとでのご意見も、本心から思っていただいてやっていらっしゃる方と、そうでない方といることを承知しております。
 ただ、こういう選挙の結果を受けて辞めるに当たって、そういう声を上げていただける方が有権者の中に一定いるということは、これは正直言って政治家冥利に尽きると、本当に感激をしてありがたく思っています。

【日本農業新聞・木寺記者】
 農業関係で、枝野代表は戸別所得補償制度の復活などを選挙でも掲げられていたが、生産現場では一定の支持を得られたとお考えか伺いたい。

【代表】
 もちろん政治的に答えるならば「当然そうです」と答えるべきなのかもしれませんが、それこそ科学的に分析すべきだと僕は思っていて、やはり有権者がどういう視点で投票されたのか、つまりこれを焦点として思って例えば立憲民主党に入れていただいた方がどれぐらいいらっしゃるのかとかは、やはりこれはきちんと科学的に分析しなければいけないと思っていますので、これは私としても残務処理執行部にもできるだけそういったことを、科学的な分析を客観的にできることはやった上で新執行部に引き継いでほしいとお願いをしてあります。また、実際に今のことについての結果が出せるような調査になるかどうかは分かりませんが、少なくともそういったデータを揃えた上でないと、印象だけで語ってはいけないことだと思っています。

【日本農業新聞・木寺記者】
 新代表が選出されるが、新代表に農政で望むことについて伺いたい。

【代表】
 我が党の戸別所得補償制度を初めとした農業政策というのは、いろいろなそれぞれの、我が党に所属している議員の長年の積み重ねの中で、大きな異論なく集約されて今回の選挙で掲げていると私は認識していますので、しっかりとその線をさらに発展させていっていただくことが、選挙に向けてということよりも、日本の農業というか日本の未来に向けて重要なことだと私は確信しています。

【朝日新聞・吉川記者】
 先ほどから出ている話とかぶるが、共産党などとの野党の連携について、「限定的な閣外からの協力」ということを打ち出したことや、候補者を一本化して戦ったこと、こういった戦略を全体として今どういうふうに評価されているかお聞きしたい。

【代表】
 最終的には科学的な分析を基にして新執行部でしていただきたいと思っておりますが、ここまで出ている具体的なデータからすれば、やはり実際に小選挙区の当選者の数などがふえているようですし、大変な接戦に持ち込み、なおかつその接戦も自民党が最後相当頑張って票を掘り起こした中で接戦になっているということは、少なくとも今回の選挙での小選挙区での戦いには一定のというかかなり大きな意義があったと思っておりますし、あえて申し上げれば、この大きな方向性について、今回の選挙で違う選択肢はなかった。違う選択肢をとりようがなかったと思っておりますので、私自身はこの戦略というか方向性を選択したことについて後悔はありません。

【朝日新聞・吉川記者】
 今後、次の代表にも同じような方向性を求めていくか。

【代表】
 ここはもう既に戦略論の問題なので。戦術論としては、それは先ほど申しましたとおり、実態以上に近い関係と受けとめられてしまったのは間違いないと思っています。それはいろいろな事情がありますが、最終的には我々の発信の問題であると思っておりますので、それは実態どおりに有権者に受けとめていただけるように、どう伝えられるように、他党や市民団体などとの関係もありますので、そことの調整をきちっとして、誤解なく伝えられるような努力は必要だと。それが十分でなかったというのは私の力不足だと思っています。

【朝日新聞・吉川記者】
 先ほどの両院議員総会で、選挙の結果について、選挙戦術ということに加えて、そこに至る党運営の力不足ということも挙げられたが、これはどういったことを念頭に置かれているのかお聞きしたい。

【代表】
 本当に自分なりにはベストを尽くせたとは思っておりますが、例えば地方組織の充実であるとか、それから自治体議員の仲間をもっとふやすということ。特に合流からは1年しかありませんでしたが、しかし、この4年間をトータルで考えれば、そういったところに、もっと私が力があって、例えば自治体議員の数が今よりも300人、400人多ければ、それは競ったところの結論がだいぶ違っていた可能性はあるのではないかと思っております。一例ですが、党運営全体についての力不足というのはそうした種類のことを申し上げています。

【毎日新聞・田所記者】
 今の質問とかぶるが、一本化自体についての意義を今お答えいただいたが、「限定的な閣外からの協力」について、先ほどの日経新聞の質問への答えでは共産党との合意自体は評価しているということだと思うが、その言葉自体を別の表現にする余地はなかったかお尋ねしたい。

【代表】
 それは他党との関係に絡むことですので、外に申し上げる話ではないと思っています。正確に伝わればきちっとご理解いただける言葉にはできたと思っていますが、正確に伝わりにくかったという客観的な事実は認識しています。

【毎日新聞・田所記者】
 一本化に関連して、4年前の旧立憲民主党をつくる以前から、2015年の安保法制のときから政党の外の例えばSEALDsや「市民連合」などから野党の選挙協力を求められてきたが、今回の一本化で、これまでの市民の要望にはある程度応えられたと評価しているか。

【代表】
 いわゆる「市民連合」に代表される皆さんの声というのは、この間の野党間の連携の一つの後押しだったとは思っていますが、私は、この間繰り返し申し上げてきたとおり、日本の選挙制度が、首班指名に優越権を持つ衆議院の選挙制度が小選挙区が軸の選挙制度である以上は、二つの政治勢力で競い合うということを想定している選挙制度であると。したがって、その政権をとろうとする勢力がしっかりと連携をするということが選挙制度から必然的に求められているというのは、私のこの問題に対する基本的な認識です。

【NHK・並木記者】
 先ほどから共産党との関係に関する質問が相次いでいると思うが、一方で連合との関係に関して、連合会長は選挙戦中にも共産党との関係について釘を刺すと言ったらあれだが、そういった発言もあったかと思う。これまでの連合との関係をどう評価するかと、今後どうあるべきかというのはどうお考えか。

【代表】
 今回の選挙までに至るさまざまな我が党の行動については、その時点時点で連合の執行部の皆さんにはきちっとご理解をいただいた中で選挙戦を戦うことができましたし、全国各地で連合の皆さんの一体となった応援をいただいて、そのことで当選をした仲間がたくさんいるということで、連合の皆さんには感謝をしています。

【NHK・並木記者】
 国民民主党との関係だが、当初の合流の経緯からして、一部が新しく国民民主党を立ち上げられたわけだが、そこの国民民主党との今後の関係、あるいは、例えば合流を目指すべきなのかとか、そういったところでお考えがあったらお伺いしたい。

【代表】
 今後の関係などについては、それは今、辞めた代表が、これから新しい代表を選ぶのに何か申し上げるべきではないと思っています。

【NHK・並木記者】
 当時、国民民主党が一部残ってしまったことについての評価というのはいかがか。

【代表】
 これもそれぞれの政治家の皆さんの判断ですから。先ほど申しましたとおり、今の選挙制度をとっている限りは、一定の幅の中で一つの政党であるべきだし、違いがあっても共有できる部分で共有してできるだけ1対1の構図をつくるということが、選挙制度から要請されていると私は思っていますが、それはそれぞれの政治家の判断ですので。

【NHK・並木記者】
 最後に一点。先ほどは農政に限定したお話だったが、今後、代表選での論戦で期待すること、あるいは新代表に期待すること、それとご自身の政治活動について今後どのようにしていくのか伺いたい。

【代表】
 次の執行部は、これは私が申し上げるまでもなく、この選挙の前以上に複雑な連立方程式を解いていかなければならない。その複雑さは増していると思っておりますが、ただ、いずれにしても常にこうした複雑な連立方程式の中で政治は動いていくので、そこをうまくさばいて国民の皆さんの期待を得られるような発信をして進んでいってもらいたいということに尽きます。
 私自身は、すみません、時々強調しておりましたとおり、この間の自民党の総裁候補の誰よりもまだ私は若うございますので、特にこの4年間、得難い貴重な経験もさせていただきましたので、もう既に両院議員総会でも申し上げましたが、私でお役に立つことがあれば全国各地に、少し身軽な気楽な立場になりましたので、コロナがこういう状況であれば、この2年分、いろいろと仲間の応援になるようなことがあればやっていきたいと思っております。あと、端的に申し上げて、やはり4年選挙区に帰らないとなかなか、特に都市近郊で地方の従来型・個人後援会型の選挙は通用しないところだと思っているので、そういった意味ではちょっと地元活動を、4年分を1年ぐらいで取り返したいなと思っています。

【東京新聞・大野記者】
 少し抽象的な質問を2点お願いしたい。結党当時から代表はボトムアップの政治を訴えてこられたと思う。この理想がどこまで達成できたかが一点。
 もう一点が、著書の『枝野ビジョン』ではご自身が総理大臣として具体的にどんな社会を実現したいかということや理念などを書かれたと思う。総理大臣を目指してこられた、その思いに何らかの変化や思うところがあればお聞きしたい。

【代表】
 1点目は、ボトムアップというのは完成形があるとは私は思っていません。あえて後悔があるとすれば、というか残念だったのは、私の言っているボトムアップは党内の国会議員の中のボトムとかそんな話では全くないので。有権者・国民の中で、政治に声が届けにくい、届けられない、あるいは政治に声を届けなければいけないんだという意識すら持っていない、そういう人たちの声に寄り添うのが我々の立場なんだという意味です。これは一貫してそういう趣旨だと申し上げてきています。
 やはりコロナがあって、もちろんコロナで、オンラインであったがゆえに、何度も演説その他で繰り返したとおり、「政治に私たちは見えていますか」という学生さんの声を聞くことができました。そういうオンラインだからできた部分もありますが、やはりトータルで見ると、そうした我々が聞かなければならない、聞きたいと思っていた声を受けとめにくいコロナの状況があったということは残念に思っていますが、これは不断にやっていく。何か完成形があって「こういうモデルをつくればボトムアップなんだ」ではなくて、常に、特に政治に直接参加する議員や候補者が、その届いていない声をどう受けとめていくのかということをやり続けることだと思っていますので、まさに道半ばだと思っています。
 二つ目のほうは、ちょっと誘導尋問的で難しい、どう答えたらいいのか分かりませんが、私がこの春に出した本で示したビジョンは、昨年9月にみんなで合意してつくられた綱領を解説したものだと思っていますので、どちらにしてもその綱領を掲げて政権を目指していくということの中で、総理大臣はなりたくてなれるものではないと思っていますので、少なくとも今はそれを支える立場で一日も早く政権を奪って、綱領で掲げ『枝野ビジョン』という本で解説をした社会に近づけるように最大限の努力をしたいと思っています。

【朝日新聞・南記者】
 4年前の10月に結党してから、先ほどの質問にもあったように、ボトムアップの民主主義、草の根からの民主主義ということを掲げてやってきたわけだが、この4年間、枝野さんとして党運営でこだわり続けたことはどんなことがあったのかという点と、一人で立ち上げられたわけだが、この立憲民主党という存在が日本の政治史においてどういう意味を持つか伺いたい。

【代表】
 図らずも早い段階で第1党になってしまったので、政権の選択肢になるという公器の役割をすぐに背負わなければならなくなったというのは、実は正直言って想定外だったのです。ただ、その公器としての役割と、結党のときからずっとこだわっている別の言い方をすると政治の内側を向くのではなくて外側を向く、そして有権者のあえて申し上げるならノイジーマイノリティーではなくてサイレントマジョリティー、声を出せない人たちの声にこちらから入っていく、そこのところは両立させるのは実は難しい問題でしたが、何とか片方に偏り過ぎずに4年間ハンドリングできたのではないかと思っています。そういった意味では、今後のことについても各地で仲間と協力させてもらって、それぞれの地域で政治に届きにくい皆さんの声や現場を見させていただくようなところに呼んでいただければありがたいなと思っています。
 それから、何だったっけ、もう一つ。

【朝日新聞・南記者】
 日本の政治史においての立憲民主党の意味。それをご自身としてどのように考えられているか。

【代表】
 まあ、まだ評価が早いのではないですか。これから10年、20年たって、それまでの、さらにここからの歩みの中で結果的に評価をどう受けることになるのかなということだと思っているので、少なくとも4年前の結党云々を、今、評価する段階は早過ぎると思っています。

【朝日新聞・南記者】
 関連して、野党一本化を2016年の参院選で民主党の幹事長のときから始められ、17年の衆院選はあまりうまくいかなかったが、19年の参院選、そして今回という形で進んできたわけだが、そのことが日本の政治史に与える意味とか、今後に向けてどう影響を与えていくかという点についてはいかがか。

【代表】
 この選挙制度をとっている限りは制度の要求だと僕は思っているので、いいとか悪いとか好きとか嫌いとかではない。でないと永久政権的な構造になってしまう選挙制度だということが、少なくともこの選挙制度をとって15年ぐらいではっきりしていると思うので、今のところ選挙制度そのものを見直すべきだというのが大きなうねりだとは僕は思っていませんので、したがって、そんないい悪いとかという話ではないと僕は思っています。

【朝日新聞・南記者】
 最後一点だが、枝野さんは4年前から経済政策についてのボトムアップということを言われてきたが、どうしても世間から見た場合に立憲民主党の経済政策が弱いということを言われ続けたところがあったと思う。今回の衆院選を通して、その辺の訴えというのはどこまで浸透したと思われるか。

【代表】
 なかなか伝わらないというじれったさを感じながらずっとやってきていますし、これはもう、そこは自信を持って私は思っているのですが、これは歴史の必然だと思っているので、従来型のいわゆる製造業を中心とした規格大量生産で経済が成長する、供給サイドを改革すれば経済が成長するというのは、どの国であっても先進国では行き詰まっていて、その行き詰まりを解決するには違うアプローチをせざるを得ない。これは歴史的な必然だと僕は思っているので、これは目の前の選挙一個一個でどれぐらい理解していただけるかということ以上に言い続けなければならないことであるし、それをいかに早くわかりやすく伝えることができるかというのは、逆に言えば、どれぐらい早く政権にたどり着くかということにつながるのではないかと。そこの一つの大きな要素であると思っています。

【朝日新聞・南記者】
 今回の選挙戦を通じて、どの辺が今後の伝えていく上での改善点というか、どの辺が壁になっていると感じたか。

【代表】
 あえて言うと、構造の話をしているんですよね。あえて言えば、我々が当然の前提にしていた、それは実際に高度経済成長まで実現をしてきた、100年レベルで進んできた構造の限界について私たちは問いただしているわけなので。一方で有権者の皆さんは当然のことながら、それからメディアの皆さんも、目の前の課題をどう解決するのかと。これは当然我々もやらなければならないことだと。
 ただ、今回で言えば、これはきのう自分のツイッターでも書いたのですが、コロナに対応して短期的にやらなければならない政策と、経済のあるべき論としての中長期的に目指す構造とが、実は食い違って見える。そういう側面がやはりどうしても出てしまう。ここをどう乗り越えていくのかということでないと、そこが課題かなというふうには思っています。

【フリーランス・横田記者】
 きょうの東京新聞にも出ていたが、共産党を含む野党連携を見直して改革中道勢力結集をという意見が出ている。これは維新・国民を想定しているのではないかと思うが、選挙が終わったら自民党以上に改憲に前のめりの両党を改革中道政党と呼ぶことについてどう思われるのかということと、何回も繰り返しておっしゃっている、この衆議院の選挙制度からすると共産党を含む野党連携は当たり前のことだと、政権交代にはほかの手段はないということからすると、明らかに非現実的なおかしな論だと思うが、枝野代表のお考えを伺いたい。

【代表】
 1点目については、報道でどなたがどういうふうに明確にどこかで機関決定されたという話ではないことについて、しかも他党に絡むことについて申し上げるような政治を変えないといけないと思っています。
 後者については、私、そんなことは申し上げていません。選挙制度の構造から1対1の構図を目指していかなければならないということを申し上げているので、どこか特定の党との特定の関係については何も申し上げていない。そういうところで、すみません、正確な報道をぜひしていただきたいとお願いします。

【フリーランス・横田記者】
 野党連携がちょっと不十分ではなかったかという思いはないか。例えば山本太郎代表が東京8区から出馬表明して撤回したことについて、かなり冷たい、突き放すような発言をされたこととか、志位委員長とツーショット写真を撮るのを避けたとか、野党連携をやるのだったらもっと本気を前面に出して、反共攻撃に対してもどんどん4人並んで街宣をするとか、反論の発信が不十分、やる気が不十分と見られたという思いはないか。

【代表】
 いろいろな見方、いろいろな評価はあるのだろうと思っていますが、私が一番強く感じているのは、決して閣外協力だなんてやっていないし、一つの政権をつくるわけではない、あくまでも限定的に閣外から協力をいただくということにすぎないのに、それ以上に強い近い関係だという印象を与えてしまった力不足。これが最大の反省点です。

【フリーランス・横田記者】
 その発信が不足していたという思いはあるか。志位委員長を含めて野党4党で。

【代表】
 いや、私は逆。今申し上げたこと。決して一つの政権をつくるわけでもないし、もちろん閣内でもないし、政権そのものに直接コミットするわけでもないにもかかわらず、あたかもそれらが前提であるかのように受けとめられてしまった力不足、これが最大の反省点です。

【フリーランス・横田記者】
 山本太郎代表の出馬表明と撤回に対する。

【代表】
 他党との関係の細かいことについては、いろいろな経緯の中で出てきていることでありますので、コメントすべきことではないと思っています。

【フリーランス・横田記者】
 立民の評判を落としたという反省はないのか。

【代表】
 個別のいろいろな経緯については、それぞれの党にそれぞれの事情がある中でベストを尽くしてまいりました。

【IWJ・渡会記者】
 今回の衆議院選挙の結果の責任をとる形で代表辞任とのことだが、立憲民主の得票数を見ると、2017年選挙では1108万4890票、今回の2021年選挙では1149万1997票と40万票ふえている。2014年の民主党時代は977万票で、200万票近く得票を伸ばしたことになる。得票率でも、2014年は18.33%、2017年の19.88%から若干ではあるが20.00%とふえている。減らした議席も14で、15議席の自民党より少ないのに、岸田総理は国民から信任を得たと胸を張り、立憲の枝野さんはマスメディアから総攻撃され責任を過剰に痛感している気がする。事前の予想で立憲議席増を勝手に予想しておいて、それが外れたからとバッシングするマスコミの身勝手さに過剰におつき合いして辞任する必要があるのか。
 また、今回の選挙では、意図的に隠されていたが、本質的な争点は、緊急事態条項を核とする自民党4項目の改憲か、その改憲案に反対かであったことは明らかだ。そこから考えると、来夏の参議院選挙はこの国の命運をかけた政治の一大決戦となることは明らかだ。立憲民主党は野党第1党として、緊急事態条項を核とする自民党改憲案4項目に反対する改憲反対派として、この国の市民・国民に対して重大な責任を負っているのではないか。改憲が行われ、制限も解除規定もない内閣の独裁を半永久化する緊急事態条項により民主制自体が否定されることは明白だ。このような状況下では、野党第1党の代表に誰が就くかは一党内の人事の問題では済まない、国民的な重大事なのではないか。既に後継の代表選に名乗りを上げた人物の中には、自民党よりも改憲に貪欲な姿勢を見せる維新と寄り添うような発言をしている小川淳也議員のような方もいる。この代表人事を誤ればこの国の未来を危うくする、そのような視点で考えなければ立憲民主党は分裂しかねず、結果として改憲派を利することになりかねないと思う。代表選にご自身も出馬されるか、自民党総裁選で安倍元総理が高市早苗氏を支持したようにご自身が後継の候補としてふさわしいと思う人物を指名・支持するか、また、そうした際に緊急事態条項は絶対に許さないと、今度こそこの問題を争点に据えて野党共闘で戦うことを後継者の条件として提示するとか、枝野さんのお考えを伺いたい。

【代表】
 申しわけありませんが、後段はあなたさまのご意見だと思います。記者会見というのは、あなたさまのご意見を聞かせていただいて、それに対して、むしろそれをそうすべきだということに対してお答えをする場ではない。ここの記者会見のあり方は、4年やらせていただいて、ちょっと次の執行部には引き継ぎたいと思います。少し考え直さないといけないと。
 あくまでも中立的立場の報道機関の皆さんに対して説明をする場だと私は思っております。それを通じて、あなたさまも含めて、国民・有権者の皆さんがいろいろなことを判断されるとか、そういったことはあってもいいと思いますが、中立、実態としては中立でないだろうとかいろいろな話はこちらの思いもありますが、一応中立的な立場を前提にしている報道機関の皆さんに対する会見と、それでないご意見に対してコメントをしろという話とを一緒にするのはちょっと避けなければいけないなと思っておりますので、申しわけありませんがちょっと本質的な問題として次の執行部にそこの見直しを引き継ぎたいと思っておりますので、お答え申し上げません。

【IWJ・渡会記者】
 誤解があるようだが、私は私の意見を申し上げているわけではない。私どものメディアは常に市民からいろいろな要請やご意見を頂戴している。その事実に基づいて私どもは総合的に私どもの中で判断して、これはやはり野党第1党の方にお伺いするのが筋ではないかと考えた上でこのようにしている。

【代表】
 そういう意見の方がいらっしゃるのはわかるし、あなたさまの報道機関としての社論として、それは例えば新聞社の社説では私たちの考え方と180度違う社説を載せていらっしゃる方もいらっしゃいますが、そういう社の方もこういった場では中立性という立場に立った前提での質問を皆さんしていただいています。記者会見というのはそういう場だと私は思っております。そこを整理しないと記者会見が混乱をすると思っておりますので、そういったことの本質は次の執行部で検討してもらいたいと思っておりますし、私は、今の前提そのものが、そもそも選挙の争点はあなたさまが決めることでもなくトータルとしての総有権者が決めることであって、今回の争点ではなかったというのは間違いありません。次の選挙の争点が何になるかも、その時点での総有権者が判断することだと思っています。

【IWJ・渡会記者】
 承知しました。中立ということについては、改めてご見解をお伺いしたいと思います。次の機会に。ぜひ私どもも参加させていただきたいと思います。

【代表】
 次の機会、私はありませんので。それは次の執行部が考えると思います。

【司会(事務局)】
 報道担当として今の議論を受けとめて考えたいと思います。

【フリーランス・宮崎記者】
 ちょっと客観的に伺いたいが、野党一本化路線に関して、これは不思議なことだと思うが、2016年以降、最大野党の党内民主主義の手続の中で全議員が話し合って過半数をとるということは、これは不思議なことになかったと思う。参院選や衆院選もあり、2017年の代表選はそういう話ではなかったような気もするし、不思議だなと思うが、国政選挙があったからそれでいいのか、あるいは枝野前代表としても確かにそうでしたねと共有していただけるのか。どうでしょうか。

【代表】
 どういうことですか。

【フリーランス・宮崎記者】
 つまり、2017年に代表選挙があって、前原さんと枝野さんの間でそういった話があったにしても、争点があったにしても。

【代表】
 代表選挙などの争点になっていないということですか。

【フリーランス・宮崎記者】
 はい。去年の9月の泉さんと枝野さんのときには、なったという認識はどうでしょうか。

【代表】
 なっていません。なぜならば、論点ではないですから。つまり、私と同じ理由・認識かどうかは別としても、できるだけ小選挙区制度では一騎打ちの構図をつくるのが望ましいと。ただし、政党ごとに違いがありますから、違いを前提とした中でどこまでできるのかということについて、相手もあることの中で、今回は実態としてはきちっと共産党さんと我々との違いをしっかりと前提にして、例えば立憲民主党や、その潜在的支持者の皆さんの中で、共産党に対して否定的な考え方の方であっても理解いただける実態は整えたと思っていますが、その実態を実態どおり伝えられなかったということについては力不足を感じています。ただ、これは相手のあることですので、どこでどういった折り合いがつけられるのか。それが我々として許容できるぎりぎり限界はどこなのかということは、右か左かみたいな路線と違う、まさに政治の技術の問題だと思っていますので、争点にならないのが当然だと思っています。

【フリーランス・宮崎記者】
 今回、今月、初めて争点、話し合いになるねみたいな、そういった感じか。

【代表】
 いや、たぶんならないのではないですか。私が承知している限りでは、党内、私の認識とほぼ一致していると思います。だから、その相手のあることの中で、ここまでやらなければいけないのだったらそれは無理だねとか、ここまでだったらできるねとか、それはもうその都度の政治状況と相手のあることの中でぎりぎりの限界を模索していくと。そのことをどう正確に伝えていくのかが大事だよねと。こういう認識、そんなにずれはないと思います、党内で。

【フリーランス・宮崎記者】
 一点だけ。京都府連の方が、この4年間、執行部にあったが、若干、京都府連の方だけ少し表現が、ニュアンスが違うことがあったように思いますが、最後それだけ伺いたい。

【代表】
 それはやはり地域によって、今回の他の政党との連携についても、例えば国民民主党さんとも100%、120%がちっとやれたところと、そうでなかったところがあるように、それはやはり地域ごと、選挙区ごとにいろいろな事情があるのは当然のことで、京都で共産党と連携なんていうのは全くできないというのはお互いに納得ずくだと思っています。

【朝日新聞・南記者】
 先ほどの記者会見のあり方の点で一つだけ確認をしたいが、中立性という言葉はかなり恣意的なことを含めて解釈の幅があり得るものだと思う。もちろん記者会見のあり方自体は、メディアも含めたいろいろな、常にこっちも努力しなければいけないところはあるが、先ほどの引き継ぎという中に、何かネットメディアやフリーランスの人を含めて排除するということがないのかどうか。そこを明確にしていただきたい。

【代表】
 別に排除するとかということではなくて、記者会見というのはどういう場なのかと。もちろん、いろいろな意見の方、こういう意見の人もあるけどどうですかみたいな話は当然あり得るとは思うのですが、それを延々とお話をいただく場では全くないのは間違いないと思っています。それは他の記者さんが迷惑しているという声をたくさん聞いてもおりますし、私もそれはミニ集会か何かで意見をお聞きするのは当然聞いていかなければならないのですが、それは記者会見の場ではないなと思うので、そういう整理はきちっとしないと、現場の記者さんがみんな困っているのをこの4年間聞いてきましたので、そこは何とか整理できればなということを引き継ぎたいと思います。

【フリーランス・横田記者】
 今の南さんの質問と同じだが、これはっきり言って記者差別、排除につながる問題発言だと思うが、時間が長ければ何分以内にするとか注意すればいい程度の話を、代表を辞めるときの引き継ぎ事項として投げかけるのはいかがなものか。排除発言から生まれた立憲民主党の代表とは思えない暴言だと思うが、撤回なさるお考えはないか。

【代表】
 ですから引き継ぎ事項なのです。決定権を持ってない私が問題意識を次の執行部にお伝えするので、どういう判断をされるかは次の執行部だと思っています。

【フリーランス・横田記者】
 文書で示していただきたい。具体的にどういう問題があって、どういう弊害があったから、そういう申し伝えをするんだと。具体的に根拠もないままに、今のIWJの質問だけで。

【代表】
 先ほどのご発言は完全にご自身やご自身に託されたご意見の開陳の部分が圧倒的に長くて、同じことをお聞きになって私の見解を聞きたいのであれば全く1分で済む話だったと私は思っています。

【フリーランス・横田記者】
 だったら事前に注意して、今後は控えるようにと、それで済む話だ。

【代表】
 毎回それに対するいら立ちはお示ししてきましたが、代表を離れるので、ちょっとはっきりと申し上げただけです。

【司会(事務局)】
 報道担当として重く受けとめたいと思います。私の仕切りも含めて、総括をしてまいりたいと思います。

【フリーランス・堀田記者】
 どうもご苦労さまでした。辞める前は会見を毎日のように、政権とったらどうするということがあったが、2017年の立憲民主党ができてから枝野代表の会見というのは月に1回だった。そのほかに地方に行くといったときにぶら下がりがあるからと枝野さんは言っていたが。枝野さんの考えとしては、いろいろなことが伝わらない、正確に伝わらないということが今あったが、会見等が少ないということがその原因になっているとは思われないか。

【代表】
 一つの見方としてそれはあり得ると思っているので、私はこうしたけれども、それに縛られないでいいですよと。あえてそこまで引き継ぐ必要があるか、言う必要があるかどうかは別としても、私はこういうやり方で4年間やってみたと。選挙とか必要に応じて頻度を上げていけばいいというやり方で考えましたし、できるだけ我が党、多士済々、執行部の中だけでも従来からもいましたので、いろいろなメンバーが発信をさせていただくということが大事だと私は判断してやってきましたが、これが絶対だと思っているわけではないので、次の執行部がどういう判断をするか。そこはフリーに考えてくださいということを実質的には、直接言うかどうかは別として、坂上さん(事務局)から伝えてもらえると思います。

【フリーランス・堀田記者】
 要するに月に1回で、枝野さんがいろいろなところに行った後にぶら下がりをやるというのは私どもも知っているが、はっきり言って大手マスコミのように金がないので全部ついていけない。それは我々の努力がいけないんですよね、金がないということは正直言って我々がいけないのだが、そういうのを補うために次の代表には毎週会見をやってくださるようにということを言っていただくわけにはいきませんか。

【代表】
 そういう声もあるし、私もこれが絶対だと思ってやってきたわけでは必ずしもありません。頻度が多い場合と少ない場合と、プラスマイナス両面ある中での一つの判断でした。それが正しかったかどうか、絶対正しかったとは必ずしも思っていません。ですので、フリーに考えてほしいと、実際にそういう声もいただいたということは事務的にはちゃんと次の執行部に伝えてもらえると思います。

【司会(事務局)】
 ありがとうございました。それではこれで会見を閉じたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【代表】
 4年間お世話になりました。ありがとうございました。