立憲民主党は15日、消費者の権利実現法案(消費者被害の発生及び拡大の防止並びに消費者の利益の一層の擁護及び増進を図るための消費者契約法等の一部を改正する法律案)を衆院に共産党と共同提出しました。
 この法案は、政府提出予定の「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」の対案として提出しました。
 立憲民主党から、吉田統彦消費者問題特別委員会筆頭理事、柚木道義前消費者問題特別委員会筆頭理事、大西健介・井坂信彦・山田勝彦各議員が衆院事務総長に法案を提出しました。湯原俊二、青山大人、大河原まさこ各衆院議員も提出者です。

 消費者の権利実現法案は、(1)長く消費者政策の中で課題となってきた消費者契約法における「包括的つけ込み型勧誘取消権」の創設(2)昨年の通常国会で政府より提案された特商法預託法等改正案に含まれていた契約書面の電子化の削除(3)成年年齢引き下げに対応した若年成人のクーリング・オフ期間の1週間延長――の3本柱から成り立っています。

法案.pdf
要綱.pdf

消費者被害の発生及び拡大の防止並びに消費者の利益の一層の擁護及び増進を図るための消費者契約法等の一部を改正する法律案

消費者の権利実現法案フライヤー.pdf

 法案提出後に取材に応じた吉田消費者部会長は、法案の内容について紹介したうえで、昨年、立憲民主党・国民民主党・共産党で共同提出したものを再度提出するものであり、成年年齢引き下げが目前に迫っているので、急ぎ立憲民主党と共産党の2党で共同提案を行ったなど、法案提出の経緯を説明しました。

 続いて、筆頭提出者の柚木議員は、先日桜を見る会で話題となった大規模な消費者問題であるジャパンライフ問題や成年年齢引き下げに伴う消費者被害拡大の懸念について、消費者の権利実現法案であれば契約の取消によって救済できる可能性を高めることができること、これまでの消費者契約法の改正のように個別に契約の取り消しができる類型を増やすだけでは間に合わない――など問題提起しました。

 大西議員からは、川内博史、尾辻かな子両前議員が大変な思い入れをもって提出した前回から関わっていることから、成立に向けた思いを発言しました。そのうえで、悪徳事業者が特に若年成人を虎視たんたんと狙っていることから、包括的つけ込み型勧誘取消権の創設とクーリング・オフの期間延長が必要であること、契約書面の電子化については、世の中のデジタル化について反対をしているのではなく、消費者被害の救済の現場では、家族やヘルパーの方が紙の契約書面を見つけて「これはなに?」と気づくことから始まっていることから、特に注意が必要な取引について規定されている特商法及び預託法の契約書面の電子化は削除すべき内容である――など説明をしました。

 井坂議員からは、ジャパンライフの問題では、消費者庁からジャパンライフへの天下りがあったために捜査が遅れ被害が拡大したことに触れ、今回の法案は消費者を保護するために欠かせない項目であり、政府与党が一つも飲めないのであれば、一体誰の側についているのか、悪徳業者の味方なのか――そうなりうることから、二度とわれわれ政治や行政の側がこうした悪徳業者に手心を加えることがないよう、この法案をしっかり国会で審議していきたいと発言しました。

 山田議員からは、今年4月から18歳まで成年年齢が引き下げられるが、引き下げられていない現在でも20歳から24歳が被害に多く遭っており、このままではおそらく18歳、19歳に被害が拡大してしまうことから、消費者教育に省庁横断で力を入れる必要があることに触れ、権利に対しての義務や責任を知ってもらうきっかけとして、この法案の成立に全力を尽くしていくとの発言がありました。

 各議員の発言後、記者団から質問があり、「包括的つけ込み型勧誘取消権」については、消費者庁の有識者会議で20回以上議論してきたがまとまらなかったとして、合理的な判断ができない事情をどのように判断するのかについて問われました。

 これに対し、柚木議員は、昨年の審議でも議論になったが、「合理的な判断ができない状況」に消費者があるかどうかの判断が困難だとしても、一定のものを示し、類型化をしないことで取り消せる範囲を幅広くし、消費者・被害者の側に立ったものが必要であると述べました。

 吉田議員からは、事業者側からすると営業上、合理的な判断ができない事情と期待をさせることをどのように判断していくか、確かに難しいことではあるが、衆参の附帯決議で検討し対応するようにと政府に約束をしていたものであり、消費者の観点からの法律にしていく必要があると説明しました。

 大西議員からは、取り消せる対象を類型化していくと対象から漏れてしまうものが出てくる。例えば、デート商法のように幻惑されて30代の女性で高額の浄水器などを売りつけられた例がある。デート商法による取消権は社会生活上の経験が乏しい消費者を想定しているが、類型化されると漏れるものがある。営業上の利益は重要だが、わたしたちは消費者の側であるべきであると発言しました。

 立憲民主党は、基本政策において「消費者行政の強化と消費者保護に取り組み、消費生活相談を充実させ消費者団体支援を強化するとともに、消費者被害の防止と被害回復にむけた新たな仕組みの検討を進めます」と謳っています。今回の議員立法における3本柱もまさにその一貫です。誰もが消費者であり、いつ重大な問題に直面するかもしれません。立憲民主党は、着実にこれからも消費者保護、被害防止・回復に全力で取り組み、国民の皆さまへ提案してまいります。