東日本大震災から11年が経ちました。今なお山積する課題と対策について、福島県を地元とする玄葉光一郎東日本大震災復興対策本部長に話を聞きました。

――東日本大震災から11年経ったことの受け止め

 津波・地震被害への対応では仕上げの段階に入っていると思います。しかし、原発事故周辺地域の復興や廃炉への対応は11年経ってもまだまだスタートしたばかり。本格的にはこれからではないかと思います。おそらく7、8年後ぐらいがピークになるのではないかという思いを持っています。

――10年という期間が過ぎ危惧することは

 原発事故からの復興は、当然ながら東京電力福島第1原子力発電所(1 F)の安定した着実な廃炉が大前提になりますが、廃炉作業は長期間を要する工程であり、その「息切れ」を一番心配しています。 燃料デブリという、溶け落ちた核燃料をロボットを使って取り出す作業に向けての技術開発をはじめ、毎日約4000人の方が廃炉現場で働いています。まだ事故炉内の全容さえ把握できていない状況であり、大変な時間がかかると思われます。40年と言いますが、おそらく実際にはもっとかかる可能性が高いのでないでしょうか。そうすると、そのための資金は大丈夫なのかとか、あるいはイギリスのような国有の廃炉の専門組織を持った方がいいのではないかなど課題がたくさんあります。 そもそも、廃炉の完了状態とは一体何を指すのか。1 Fの敷地がまっさらになった姿を指すのか、それとも燃料デブリを取り出したら完了ということなのかとか。そういった大変な議論及びその対策というのがこれからも待ち受けており、私たちも立法措置も含め具体的な提案を続けていきます。

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 また、目の前の最大の課題はいわゆるALPS処理水(事故炉で発生した放射性物質を含む汚染水をALPS【多核種除去設備】で処理し、トリチウム以外の放射性物質を規制基準以下まで取り除いたもの)です。政府は、来春を目途にALPS処理水を海洋放出する方針を決定しましたが、国民の理解が醸成されていないなかでの海洋放出は新たな風評被害を招きかねません。風評は、科学的知見だけで捉えることができないものであり、政府の風評対策はとても万全とは言い難いものです。私たちは、例えばトリチウムの分離技術の開発にもっと取り組むとか、あるいは福島以外でいくらかでも処分をするなど、風評を起こさないためにあらゆる対策を追求すべきと提案してきました。特にトリチウムの分離については、この間かなり有力な技術があったという話もありますが、通常の原発においても「分離すべき」と言われることを恐れてか、あるいはコストを考えてなのか、政府内にて真剣に検討された形跡は見られません。もともと処理水は相当程度薄めて海洋放出するので、もし分離技術が確立できれば、風評被害がなくなるだけではなく、政府の40年かけて放出する計画はかなり短縮できます。風評被害が生じることを前提とした対策ではなく、風評を起こさないためにあらゆる策を尽くすべきです。私たちは、引き続きトリチウムの分離技術の積極的な活用をはじめ、万全の風評対策を求めていきます。

――福島における課題は

 原発事故からの復興は、大きな課題が山積しています。例えば、政府は、帰還困難区域に除染やインフラ整備をした復興拠点をつくり住民の帰還環境を整えていますが、復興拠点以外の地域については、戻りたい住民がいる自宅周辺のみを除染する方針で、極めて不十分と言わざるをえません。復興拠点以外の地域においても必要な除染と家屋の解体は、国が責任を持って行うべきであり、引き続き強く求めていきます。これまで「復興に与野党なし」の方針で取り組んできましたし、政府もわれわれの言うことに耳を傾けてきたことも事実だと思います。今後も野党第一党としてしっかりと発言していきます。

――宮城や岩手など福島以外の被災地も含めた対策は

 例えば防災集団移転後の元地の有効活用は大きな課題です。国の支援制度の拡充も含め、それぞれの地域に合った対応ができるようにバックアップしていきたいと思っています。岩手や宮城等でも心のケア等の被災者支援を切れ目なく継続することが重要です。地域課題に取り組む企業やNPO等に対する支援の拡充と事業運用の柔軟化も提案しています。被災地域では、高齢化や人口減少といった震災前から抱える課題がより深刻化しており、地方創生の観点も取り入れ、前例にとらわれない大胆な取り組みを展開し、創造的復興を果たさなければなりません。

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