衆院本会議で3月29日、「宅地造成等規制法の一部を改正する法律案」(通称・盛り土法案)が審議入りし、立憲民主党から神津健議員が質問に立ちました。

 本法案は、静岡県熱海市で昨年7月に起きた土石流被害を受け、盛り土の安全対策を強化するものです。盛り土を知事の許可制とし、罰則を強化。個人には最大で3年以下の懲役、または1千万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金を科すとしています。

 神津議員は、(1)これまでの盛り土対策の認識(2)地方公共団体への支援(3)許可条件に違反する盛土を行うものへの対応(4)脱法的な残土処分と盛り土行為への対応(5)住民の健康被害を及ぼしかねない要対策土への対策――等について取り上げ、政府の見解をただしました。

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(1)これまでの盛り土対策の認識

 神津議員は、現在は、宅地造成等規制法、森林法、農地法等、個別の法律によって規制対象区域が定められているが、実効性の伴う規制ができていないため、盛土による被害が各地で繰り返されていたと指摘。必要な法制整備を行わず、違法な盛土を野放図にしてきた国の不作為を問題視し、政府に認識を問いました。斉藤国土交通大臣は、各法令等の目的による規制であることから規制が十分でないエリアが存在していること、自治体によっては「条例による罰則では抑止力として十分機能していない」との指摘があることを認めました。

(2)地方公共団体への支援

 神津議員は、本法案では自治体が担う役割として基礎調査、規制区域指定、工事許可審査、改善命令、行政代執行等が挙げられ、自治体の負担が大きいものになっているとして、法律を円滑に施行するのは難しいのではないかと指摘。斉藤国交大臣は、実施にあたってはガイドラインを示し、必要に応じて助言を行うこと、経費の補助や地方整備局等からの職員の派遣など、地方公共団体が円滑に事務を行えるようきめ細かく支援を行っていくと述べました。

(3)許可条件に違反する盛土を行うものへの対応

 神津議員は、改善命令に応じない場合等の行政代執行について、これまでは公費支出につながるため措置命令の発出に消極的で行政指導を繰り返す傾向があったとして、行政代執行を支援する地方自治体への予算措置について確認。斉藤国交大臣は、「来年度予算で、総点検の対象となった盛り土について、撤去等を行う行政代執行に要した費用について、地方公共団体への財政支援を行うこととしている」と答えました。

(4)脱法的な残土処分と盛り土行為への対応

 神津議員は、農地改良の名目で残土を搬入して、表面は耕作土で覆うことで農地の体裁を整えて実際は農地として利用しない、こうした巧妙な手口によって農地転用許可を免れている事例があることから、農地改良にかかる脱法的な残土処分と盛土行為にも対応できる制度設計になっているのかと質問。金子農林水産大臣は、「転用許可を得ずに使用した場合原状回復命令等の対象となる。農地転用許可制に加え、新たな盛り土に対する規制を含め適正な運用に努める」と答弁しました。

(5)住民の健康被害を及ぼしかねない要対策土への対策

 神津議員は、トンネル堀屑によって出る残土には、土壌汚染対策法で定める溶出量基準を超える自然由来の重金属を含む土もあることに、本来産業廃棄物として整理されるべきところ、土壌汚染対策法の対象外されていると指摘。地元の長野県ではリニア中央新幹線工事から出る残土の行き先が決まっているのは3割であり、こうした「要対策土」が上流で盛土として使われてしまい浸水が続けば、下流で井戸水を生活水として使用している方々の健康に影響を及ぼすと述べ、「要対策土」対策について尋ねましたが、山口環境大臣は、適切に対応していると強弁しました。


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