衆院本会議で3月31日、岸田総理による「G7首脳会合に関する報告」とそれに対する質疑が行われました。立憲民主党・無所属を代表して西村智奈美幹事長が、(1)停戦交渉(2)国際社会への働きかけ(3)核共有(4)原発攻撃(5)ロシアへの経済協力等(6)ウクライナ避難民の受け入れ――等について、総理の見解をただしました。

 西村幹事長は冒頭、ロシアによるウクライナ侵略に怒りと最大限の非難を表明。「このような人道に反する行為は断じて許されるものではなく、ロシアに対し、ウクライナ全土での即時停戦、撤退を強く要求する」と述べました。

(1)ロシアの核兵器による威嚇および核共有論について

 西村幹事長は、今回の事態を契機に立憲民主党も、自衛力の着実な整備、日米安全保障体制の堅持による抑止力の確保という現実的な安全保障政策を深めていきたいと表明。一方で、悲惨な戦争のさなかに、現実的とは思えない防衛論議が一部で見られるのは、極めて残念だと述べ、核拡散防止条約、非核三原則、米国・周辺国の反応、軍事的合理性の観点それぞれから「核共有論」についての日本政府の見解をただしました。

 これに対し岸田総理は、わが国においては非核三原則の堅持や、原子力基本法をはじめとする法体系との関係から認められず、議論を行うことは考えていないと答えました。

(2)原発攻撃

 西村幹事長は、ロシア侵攻では、チェルノブイリ原発やザポリージャ原発が攻撃対象となったことから、原発は外国からの武力攻撃に対応できるのかと質問。ロシアの原発への攻撃を踏まえて、日本の安全保障を考えれば、日本の取るべき道は脱原発の加速だと述べました。岸田総理は、「武力攻撃が発生した場合には、日米で共同して対処することとなる。日米同盟の抑止力、対処力を強化し、わが国に対する武力攻撃が発生しないように取り組んでいくことが重要」だと述べ、安全保障体制と事業者規制の両面から原発の安全を確保していく考えを示しました。

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(3)ロシアへの経済協力等

 西村幹事長は、来年度予算に含まれているロシアへの経済支援について、人道支援と言いながら、例えば「モスクワで200名の肥満予防プログラム」は今本当に必要な予算なのかとあらためて問題視。「予算は国家の意志であり、政権の意志。そこに『ロシアへの経済支援』が入ることは、国際社会の大きな誤解を招かない」と断じました。

 さらに安倍政権の対ロ外交について、「北方領土問題の解決のためとはいえ、『固有の領土』との表現を取りやめるなど原理原則まで曲げ、また経済協力を推進した挙句、成果を出せなかった安倍政権には、結果責任がある。ロシアの不当なクリミア侵攻の後も友好姿勢を維持し、経済協力を進めたことは、結果としてプーチン大統領に誤ったメッセージを送った可能性はないか」と指摘し、岸田総理の考えを尋ねました。岸田総理は、当該予算事業については、「今後の事態の動向や国際的議論の展望を現時点で予断を持って判断するのは困難。予算の執行については、今後の状況を踏まえて判断していく」と答弁。安倍政権の対ロ外交については、「領土問題を解決し平和条約を締結するとの方針のもと交渉を進めてきたもの。プーチン大統領に誤ったメッセージを送った可能性があるとの指摘には当たらない」と、述べました。

(4)ウクライナ避難民の受け入れ

 西村幹事長は避難民の受け入れに関し、立憲民主党は25日に渡航費用・入国後の暮らしの確保・長期化する場合に備えた支援などについて政府に提言し、29日には、「戦争等避難者」という特別の在留資格を定めた議員立法を提出したことに言及。「ウクライナ避難民を受け入れるにあたって、こうしたベース部分の整備も早急に行う必要がある」と述べ、総理の見解をただしましたが、岸田総理は「法案が国会に提出されたことは承知しているが、取り扱いは国会で議論いただけるものと考えている」と述べるにとどまりました。

 結びにあたって西村幹事長は、「一刻も早い戦争の終結に向け、日本政府が最大限の力を尽くすことを強く総理に求める」と述べ、質問を終えました。

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