核不拡散条約(NPT)第10回再検討会議開催および岸田首相の演説について(コメント)

立憲民主党  外交・安保・主権調査会長 末松義規


 核不拡散条約(NPT)第10回再検討会議が開幕し、岸田首相は、閣僚級の会議では異例の演説を行いました。
 NPT再検討会議は2010年以来、合意文書が採択できておらず、この間、核保有国同士の対立が厳しさを増し、米ロ間のINF(中距離核戦力全廃)条約は失効し、小型化など新型核兵器開発が加速しています。非核保有国は核保有国が軍縮義務にむけた責任を果たさないことへの不満を募らせ、核兵器禁止条約を批准し、分断は拡大し、NPT体制は1970年の発効以来、最大の危機を迎えています。
 さらに、NPT条約上の核保有国であるロシアが、核兵器の使用を示唆しつつウクライナに侵攻したことで、核保有国に対する不信は最大限に達し、核兵器使用の脅威が現実のものとなり、NPT体制の根幹が揺らいでいます。
 このような背景で開催されるNPT再検討会議に、唯一の戦争被爆国で、広島出身の岸田総理が自ら核兵器の惨禍を訴え、核兵器の使用禁止、NPT体制の維持を呼びかけたことには象徴的な意味があります。しかし、岸田総理の出発前に意気込みを語っておられたとおり、「核兵器のない世界」を目指し、参加者が合意にむけて歩みよる力強い機運を盛り上げていくことと期待していましたが、そこまでの熱気が感じられなかったのは残念です。さらに、発表した「ヒロシマ・アクション・プラン」は一般論で具体性に欠き、今回の会議の合意形成に直接貢献するようなインパクトはありませんでした。また、核保有国と非核保有国の「橋渡し」として信頼されるためにも、「核兵器禁止条約」発効への努力に敬意を表すべきでしたが一言も言及がありませんでした。
 立憲民主党としても、核軍縮と核不拡散に関する、包括的な条約はNPTしかなく、世界全体で核兵器に関する議論ができる唯一の場として、NPT体制の維持、そして今回の再検討会議でわずかでも核使用のリスクの低減、核軍縮にむけての合意が行われ、現在の危機的状況に歯止めをかけることの重要性を強く認識しています。
 NPT体制を維持するためには、核保有国が対立を乗り越え、核兵器のリスク低減に繋がる措置を具体的に示し、核保有国としての責任を果たす姿勢を示し、非核保有国を含む、参加者全体で目標を共有できるかが鍵となります。
 岸田総理は演説で米ロ、米中の対話や透明性の向上を呼びかけましたが、呼びかけでとどまることなく、具体的な行動で交渉実現にむけて貢献することを求めます。今後約4週間の間、NPT会議で日本政府として、危機感をもって、合意形成、合意文書の採択にむけて全力で努力することを強く求めます。 

(コメント)NPT再検討会議開催について.pdf