自衛隊における自身の性被害体験を実名で公表し、第三者委員会による調査と謝罪を強く求めてきた元自衛官の五ノ井里奈さんに対し、防衛省は9月29日、性暴力の事実を認め五ノ井さん本人に公開の場で謝罪しました。謝罪会見には、この間五ノ井さんの勇気ある行動を支援してきた超党派の「支援する有志の会」メンバーが立ち会い、立憲民主党からは原口一博衆院議員、岡本あき子衆院議員が同席しました。
防衛省人事教育局の町田一仁局長は冒頭、「まず、何よりも長く苦痛を受けられた五ノ井様に対し、防衛省として深く謝罪いたします。大変申し訳ございませんでした」と述べ、同席した他の防衛省、陸自関係者と共に深々と頭を下げました。そして防衛省の調査で現時点で明らかになった事実として、五ノ井さんが所属していた中隊において公然たる性的発言・身体接触が日常的に行われていたこと、訓練時における性的な発言や身体接触、演習場宿泊施設で五ノ井さんを押し倒して身体接触を行い、口止めを行ったこと、五ノ井さんの被害の訴えに対し、大隊長への報告及び事実関係の調査を実施していなかったことを公表しました。さらに今後の対応として、懲戒処分の実施、捜査機関への通報、防衛大臣の指示に基づいて設置される有識者会議における検証と防衛省・自衛隊におけるハラスメント対策の抜本的な見直しを行うと述べました。
この謝罪と説明に対し五ノ井さんは、「謝罪をいただいたが本当に長い道のりだった。最初からこのような調査をしていただければ。本当に遅いです」と述べ、「今後このようなことが二度とないように根本的な改善をしてほしい」と訴えました。そして、「まだすべてが解決したわけではないので、加害者の方から直接謝罪いただくまで、絶対あきらめず前を向いて取り組んでいきたい」と語りました。
同席した原口議員は、「大きく分けて三段階で五ノ井さんを救える機会があったにも関わらず、逆に五ノ井さんを退職に追い込んで行った。そして退職した後も責任逃れと隠ぺいを続けた」と指摘し、「特別防衛監察は退職者からは聞き取りをしない。最低でも過去5年、退職した人からも聞き取りを行うべきだ」と防衛省に迫りました。
会見の司会進行を務めた岡本議員は、「今日がスタートライン。五ノ井さんが勇気をもって名乗りを上げてくれたから、まずはこのスタートラインに立った。改善への第一歩にしていきたい」と語りました。